パイクスピーク第100回大会はホンダ製2.1リッター直4ターボ搭載車が連覇。注目のケン・ブロックは参戦中止に

 今回で記念すべき100回大会を迎えたPPIHCパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムが、6月26日にアメリカ・コロラド州で開催され、ホンダ製の2.1リッター直列4気筒直噴ターボを搭載した『2018 ウルフTSC-FS』をドライブするイギリス出身のロビン・シュートがアンリミテッドクラスを制し、大会連覇を達成した。

 また、1400PSを誇る4WDポルシェ『Hoonipigasus(フーニピガサス)』を投入することで注目を集めたケン・ブロックは、公式練習での度重なるエンジントラブルにより無念の参戦中止に追い込まれたほか、北米現地で6月にデビューした新型『アキュラ・インテグラ』は、初の競技実戦となったエキシビジョンクラスで9位完走。最終型『アキュラ・NSXタイプS』も同クラス3位に入っている。

 今季も全長12.42マイル(約20km)、スタートラインの9300フィート(海抜約2830m)からフィニッシュ地点の14100フィート(同4300m)まで駆け上がり、156のコーナー制覇に挑む伝統の“Race to the Clouds(雲の上のレース)”に、世界各国から全72台のエントリーが集った。

 昨季の99回大会は山頂が雪と氷に閉ざされた影響でコース短縮の競技続行となっていたが、この100回大会ではフルコースを使用することが可能に。しかし決勝日は低気温と濃霧のウエットコンディションとなり、ドライバーには厳しい条件になるとともに、オーバーオールでのレコード更新への期待は101回大会に持ち越される状況となった。

 そんななか総合優勝を飾ったシュートは、過去4年間で3回目の大会制覇となり、今回は10分09秒525と2019年の9分12秒476の自己ベストに及ばないながらも、アンリミテッドクラスで昨季に次ぐ大会連覇を飾った。

「ご存知のとおり、コース上は濃い霧とウエットパッチが点在する厳しいコンディションだった」と、予選最速を記録して今大会でも総合優勝のお膳立てを整えていたシュート。

「そのせいで最後のセクターは少し惨めなドライビングになった。ほとんど3速ホールドで“流す”だけになり、側面にいくつかある白い線に目を光らせて、なんとかコースを視認しようとしていたんだ。走らせながら、この状況でもトップに到達できることを祈ったよ」と明かしたシュート。

Mountune USAが手掛けたホンダK20改を搭載した『2018 Wolf TSC-FS』が連覇。コース終盤はほぼ“視界ゼロ”の状況に
1400PSを誇る4WDポルシェ『Hoonipigasus(フーニピガサス)』と大会初制覇を狙ったケン・ブロック
最初の試走からエンジンに不具合し、最終的にバルブクラッシュからブローを招く結果に

■ケン・ブロック「家に帰ったら、すぐに101回大会に向けたリベンジの計画を進めるつもり」

 その総合優勝車が装着していたのは日本から供給されたヨコハマタイヤで、実態は現在のスーパーフォーミュラに採用されるコントロールタイヤ『ADVAN A005(ドライ用)』と『ADVAN A006(ウエット用)』だった。

 そのうち、シュートは濃霧によるウエット路面に向けA006を装着して挑み、前出のとおり慎重なドライビングに徹してオーバーオールでの勝利を達成。ヨコハマタイヤに2020年以来、2年ぶりのPPIHC総合優勝をもたらした。

 また、自身初の総合優勝候補として挑んだブロックは、大会制覇の実績を持つBBiオートスポーツと、自身が率いるフーニガン・レーシング・ディビジョンの共同開発による“モンスター・ポルシェ”で挑んだものの、プラクティスからエンジンの不調に見舞われると、バルブ破損からのエンジンブローを引き起こし、敢えなく出走見合わせの憂き目となった。

「今回はフーニピガサスとのPPIHC制覇のプロジェクトに挑んだが、練習走行からほんの数ターンでエンジンの不調に見舞われ、山の中腹までしか走ることができず、最初から2日間を棒に振るスタートになった」と振り返ったブロック。

「チームはエンジンを修理するため一生懸命に働いて、深刻なバルブクラッシュからの復活を目指してカリフォルニアのポルシェセンターから部品を空輸したりもした。それでも残念ながらBBI x HRDジョイントチームのリソースは尽きてしまった」

「その結果、エンジンブロックの破損により予選出走が叶わず、100回大会のパイクスピークを戦うことは不可能になった。控えめに言って全員がガッカリしているが、彼らがこの壮大なレースカーで象徴的なPPIHCに立ち向かうために重ねてきた準備に対し、感謝してもし切れないぐらいだ。家に帰ったらすぐに、2023年の101回大会に向けたリベンジの計画を進めるつもりさ」と決意を新たにしたブロック。

 一方、ホンダの北米法人とアキュラ、そして現地のモータースポーツ活動を担うホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)主導というおなじみの体制で挑んだホンダ陣営は、前輪駆動車(FWD部門)のレコードホルダーでもあるニック・ロビンソンが、今回はNSXタイプSをドライブして競争の激しいエキシビジョンクラスで3位、総合でも14位の結果を手にし、アキュラは10年連続でPPIHCの表彰台を確保することに。

 また、大会ルーキー登録のポール・フーバーズがドライブした新型インテグラはクラス9位、総合50位で“America’s Mountain”を走破してみせた。

 そのほか、北米フォーミュラ・ドリフトでも活躍する吉原大二郎は、こちらもヨコハマタイヤ装着の2018年式『テスラ・モデル3』で挑み、エキシビジョンクラス2位、総合9位と健闘。2度目の参戦となった大井貴之は、最高峰アンリミテッドクラスに『ニッサン・リーフe+改』で挑み、クラス9位、総合56位で大会を終えている。

例年どおりHPD主導で挑んだアキュラは、1台が電気系トラブルに見舞われたものの、残る4台がクラストップ10圏内で完走した
北米現地で6月にデビューした新型『アキュラ・インテグラ』は、初の競技実戦となったExhibitionクラスで9位完走。最終型『NSX type-S』も同クラス3位に入っている
北米フォーミュラ・ドリフトでも活躍する吉原大二郎は、こちらもヨコハマタイヤ装着の2018年式『テスラ・モデル3』で挑み、Exhibitionクラス2位、総合9位と健闘

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