株式投資の神様ウォーレン・バフェットの目的は「お金が増えていく様を見る」こと?

人生100年時代を迎え、「老後資金はいくら必要なのか」「いつまで働かなくてはいけないのか」といった不安を抱く方も増えています。

そこで、シリーズ10万部突破の『株式投資「必勝ゼミ」』の著者・榊原 正幸 氏の新刊『60歳までに「お金の自由」を手に入れる!』(PHP研究所)より、一部を抜粋・編集してお金と価値観について解説します。


「イヤじゃない仕事」を考えるための5つの価値観

「イヤじゃない仕事」に就くことさえできれば、人生の半分以上を「成功した」といえます。

その話をする前に、「大前提となる価値観」を共有しておきたいと思います。

「イヤじゃない仕事」に就くことについて考える時に、大前提となる価値観は、おおむね次の5つです。

(1)世の中はお金ではない

(2)さりとて、老後の安心のためにはお金は必要

(3)お金だけを貯めて、「早く」辞めても、ろくなことはない

(4)「早く」辞めると、貧乏生活が一生続く。イヤじゃない仕事に就けば働くのもイヤじゃないし、「早く」辞めなくてもすむから、豊かな老後を迎えることができる

(5)適切なリスクを取らなければ、リターンもない

これらのことについてまず理解しておかなければ、「イヤじゃない仕事」に就くことは難しくなりますし、人生をうまく歩いていくことも難しくなります。そこで、これらのことについて述べてから、「イヤじゃない仕事」に就くことについて考えを進めることにします。

世の中はお金ではない。しかし……

きれいごとを言うつもりはありませんが、「世の中はお金」ではありません。お金で買えないもののほうが、圧倒的に大事です。「健康」「愛情」「友情」「信用」などは、その典型例です。

ただ、「世の中はお金」ではありませんが、「世の中はお金になってしまう」ことがあることも、私は認めています。それは、「お金に困っている時」です。

すなわち、「お金が足りなくて困っている人生」をやっている時は、「世の中はお金」になってしまうのです。ですから、そういう時は、割り切ってお金のために頑張るしかありません。そして、経済的な困難を乗り越えたら、もう「世の中はお金」という考え方から解き放たれるべきです。

つまり、「貧困な状態」の時は、「世の中はお金」になってしまいますが、「通常の状態」であれば、「世の中はお金ではない」のです。

しかしながら、「世の中はお金」になってしまうもう一つの状況があります。それは、「収入がか細い年金だけになってしまった老後」です。この「老後」のことについては、節を改めて詳しく述べます。

バフェットの目的は「お金が増えていくのを見ること」?

物質的なものは、確かにお金がないと手に入りませんから、お金は不要だなどとは決して思いません。生きていくためには、お金は必要ですし、ないよりはあったほうがいいのは明らかです。しかし、よく言われるように、「お金は手段であって、目的ではない」のです。

私も若い頃(20歳くらいの頃)、フェラーリが欲しくて仕方がありませんでした。当時、フェラーリの308GTBという車種があって、それは中古でも、程度の良いものは1000万円くらいしていました。ですから、「1000万円」というお金が、今では考えられないくらい、喉から手が5本くらい出てきそうなくらい欲しかったです。

でも、それは1000万円というお金が欲しかったのではなく、フェラーリ308GTBを買って、それを「所有する歓び」と、それを「乗り回す愉しさ」が欲しかったのです。つまり、「1000万円というお金」は、「(フェラーリ308GTBを買うための)手段であって、目的ではない」のです。

よく「お金持ちになりたい」という言葉を耳にしますが、それは「手段」です。そして、「お金持ち」になって、「どうなりたいのか」が本題です。

もし「お金持ちになることそのもの」が「目的」だとしたら、それこそ「守銭奴のイヤな奴」でしかありません。「オレは『お金持ち』なんだ! どうだ、すごいだろ!」とでも言いたいのでしょうか。それでは、最悪ですよね。

ちなみに、「お金持ち」といえば、その代表格の1人が、かのウォーレン・バフェット氏です。株式投資の神様と称される大富豪です。バフェット氏にとっても、やはり「お金は手段」に過ぎないと思うのです。

バフェット氏は「お金が増えていく様を見るのが好きだ」といって、世界屈指の大富豪になるまでお金を増やしました。そんなバフェット氏でも、お金が増えていく様を見るのが「目的」であって、お金そのものは、「(増えていく様を見るための)手段(というか、まさにツール)」でしかなかったのだと思います。

お金が増えるほど、嬉しさの効率が悪くなる

ちなみに、「お金持ちは素敵だ」といっても、ある一定の線を越えると、「お金は5倍になっても、嬉しさは1.2倍くらいにしかならない」ので、あまり多くのお金を求めようとするのは、とても非効率です(なお、こういった議論をする場合の「お金」とは「ストックとフロー」の二つの面で捉えなければなりません。「ストック」とは、「保有する純資産額」のことで、「フロー」とは、「手取りの年収」のことです)。

たとえば手取りの年収が「200万円」の場合と「1000万円」の場合は、額面通り嬉しさ(=人生の愉しさ)も5倍になるかもしれませんが、手取りの年収が「4000万円」の場合と「2億円」の場合を比べると、嬉しさ(=人生の愉しさ)は額面通り5倍にはならず、「1.2倍くらいしか嬉しくない」のです。

手取りの年収が4000万円もあれば、もう充分に人生を愉しめるので、2億円もの手取り年収はいらないのです。そんなにあっても、人生の愉しさは5倍にも大きくはならないのです。

年収を4000万円から2億円にしようと思うと、嬉しさ(=人生の愉しさ)は額面通り5倍にはならず、「1.2倍くらいしか嬉しくない」くせに、数倍から数十倍の苦労や努力が必要になりますから、とても非効率ですね。

ここで、「手取りの年収が4000万円もあれば、そりゃいいに決まっているさ!」という声が聞こえてきそうですが、これはわかりやすい例です。4000万円とまでいかなくても、ある一定の満足な水準まで達したら、そこから先の満足度の増加分は、驚くほど少ないです。

大金持ちは「ポケットティッシュのコレクター」!?

なお、お金は「あればあっただけ、いくらでもあるに越したことはない」と思うかもしれませんが、それは錯覚です。お金は、いくらあっても、つかわないのなら、なくても同じですし、紙切れと同じです

ウォーレン・バフェット氏は数兆円の資産を保有しているそうですが、そんなにあっても、つかわない分は、紙切れと同じです。このことをお伝えする際に、私はいつも「ポケットティッシュのコレクター」のお話をしています。

熱烈な「ポケットティッシュのコレクター」がいるとします。そして、驚異的な数のポケットティッシュを収集したとします。満タンの引っ越し用の段ボール箱で、数千個もの量を貯め込んだとします。これって、つかいますか? つかい切れますか?

ポケットティッシュって、普通は一つをつかい切るのには数日~数週間かかりますよね。花粉症の人は1日で何個もつかうかもしれませんが。そして、このポケットティッシュ一つが、「100万円の札束」だと思ってください。「100万円の札束」をつかうとすれば、少なくとも数日~数週間はかかりますよね。浪費癖のある人だと、1日に何個もつかうかもしれませんが。

しかし、満タンの引っ越し用の段ボール箱で、数千個もの量は、さすがにつかい切れませんね。莫大な量のポケットティッシュは、その所有者が死んだ時に、発展途上国か施設に寄付してオシマイですよね。

それがバフェット氏のお金です。お金も、つかわない分は、紙切れと同じです。

ちなみにバフェット氏は、自身が亡くなったあとは、子供や孫が生きていくのに困らない金額(いくらかはわかりかねますが、たぶん数十億円)を子供や孫に遺して、あとの数兆円はビル&メリンダ・ゲイツ財団に寄付するそうです。「趣味で集めまくったけどつかい切れないポケットティッシュ(=紙切れ)」を、発展途上国か施設に寄付するような感じですね。

お金が足りないうちは「世の中はお金」になってしまいますが、普通に暮らすことができれば、お金のことはあまり考えずに、好きなことかイヤじゃないことを仕事にして生きていったほうが楽しいですし、結果的にお金もたくさん貯まります。

「こういう仕事がしたい」とか「こんな生活がしたい」といった「夢」を描いて、それを追いかける人生は楽しいのです。

著者 榊原 正幸

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定年延長に年金の不安もあり、多くの人が60歳を過ぎても働かざるを得なくなっている昨今。しかし、本来なら限りある定年後の時間は「自分が本当に生きたいように生きる」ための時間として使いたいもの。
そのためには60歳までに、もう働く必要がないほどの「お金の自由」を手に入れる必要がある。本書はまさに、その具体的な方法を説いていく1冊。

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