倉敷のデニム 屏風絵にあしらう 好奇心が生んだ秀作、7日公開

デニムを埋め込み制作中の作品を前に「屏風作りを通して、表現者として成長できた」と話す潮さん

 伝統の美に新たな風を―。倉敷芸術科学大(倉敷市連島町西之浦)の研究生が、同市を代表する繊維産品のデニムをあしらった、屏風(びょうぶ)絵の制作を進めている。

 日本画に若い作家の感性を反映させた斬新な作品は、絵画の支持体・屏風の仕組みにまで学びを広げた好奇心が生み出した。

 屏風、掛け軸といった表装は古来、絵画や書などの美術を支え、引き立ててきた。そこに新しい可能性を提示する存在として注目を集めそうな秀作は、7日から旧野崎家住宅(同市児島味野)で公開される。

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 鈍い光を放つ銀色の金属箔(はく)に濃紺が映える。屏風絵(縦150センチ、幅160センチ)の中、無造作に横たわる2本のデニムパンツは、描いたものではなく実物だ。

 手掛けたのは、倉敷芸術科学大で日本画を学ぶ研究生の潮嘉子さん(24)。「デニムの産地という地域性を出すために、どうしても本物を使いたかった」と説明する。屏風の骨組みを工夫し、絵を構成する重要なパーツとして、背景の中に埋め込んだ。展示する旧野崎家住宅は、デニム製品を扱う店が軒を連ねる「児島ジーンズストリート」にほど近い。

 同大芸術学部の学生の頃から、日本画家の森山知己教授の指導で屏風の制作に取り組み、描くだけでなく木製の骨組みに和紙を重ねる表装技術にも関心を持った。共に学ぶ仲間と一緒に建具や和紙などの材料業者を訪ね、本職の表具師の手ほどきも受けた。「仕組みから学ぶことで使える技法が増え、表現の幅も広がった」。現在は、技術を保護・継承するためのマニュアル作りにも参加する。

 作品のモチーフは自分好みのファッションだ。描かれた衣装から鑑賞者が持ち主の人柄を想像したという、近世初期に流行した「誰(た)が袖図」屏風に着想を得た。「自分らしさ、倉敷らしさにこだわった。表装と日本画の持つ普遍的な魅力を、作品を通して伝えることができたら」

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