浅田次郎原作 音楽座ミュージカル「ラブ・レター」新脚本・新演出にて開幕 そこにいること、生きること。

2022年6月から音楽座ミュージカル「ラブ・レター」(原作/浅田次郎「ラブ・レター」(集英社文庫『鉄道員』所収)、 脚本・演出・振付/ワームホールプロジェクト)を東京・神戸・名古屋・広島で上演。7月1日より草月ホールにて東京公演中。

2022年、創立35周年を迎える音楽座ミュージカル。1987年の旗揚げから「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」「とってもゴースト」「マドモアゼル・モーツァルト」「リトルプリンス」など一貫したテーマでオリジナルミュージカルを創作・上演し続け、 文化庁芸術祭賞や読売演劇大賞、 紀伊國屋演劇賞など数多くの演劇賞を受賞。
創立35周年の本年は、 記念公演として6~9月に直木賞作家・浅田次郎氏の小説を原作に2013年に初演した「ラブ・レター」、音楽座ミュージカルを創立した相川レイ子の最後の作品として東日本大震災をきっかけに生み出された“死者が生者を励ます物語“ を新脚本・新演出で。

舞台上にさまざまな美術品が並び、警備員らしき人物が懐中電灯で照らす。そして暗転、美術品が置いてあったところに俳優陣が。思い思いのことを話しだす、口々に。そして歌う、この作品のテーマとも思える歌、人はいろんな生き様を示し、いろんな死に方をする。「ただそれだけのこと…命は強く輝く♪…生まれて消える♫」、パワーあふれる歌、音楽座の特徴とも言える力強い歌で始まる。
物語のメインキャラクターの1人、サトシ。「2022年7月1日(ここはその当日の日にちと時間になる)、俺はサトシ」、無気力な感じで歩く。彼は新宿の歌舞伎町で汚れ仕事を請け負っている。もちろん、好きでやってるわけじゃない、日々、生きていくために、だ。サトシはナオミと出会う、久しぶりの再会だった。そして吾郎を思い出す。吾郎の元に死亡通知書が届く。「白蘭」、吾郎の妻だが、彼には身に覚えがない。しばらくして思い出す、小金のために偽装結婚した相手だった。ヤクザの佐竹の元に相談しにいくも遺体を引き取るように言われ、サトシと共に取りに向かう、と言うのが大体の流れだ。合間にパッセンジャーたちの歌を挟みこんで進行する。パッセンジャーは皆、個性的な出立ちで一度見たら忘れられない風貌。また、脇を彩るキャラクターも個性が強い。佐竹はかなりの強面だし、子分たちも目つきが鋭い、キップの良いおばちゃん、妖艶なママやホステス、中心人物はサトシ、吾郎、ナオミ、白蘭だったりするのだが、群像劇のようにキャラクターの性格などが透けて見える。吾郎もまた、無気力な人生を送っていた。疲れた風貌、夢とか希望もない彼の生活、そんな時に白蘭の死に遭遇する。

映画にもなっており、小説もヒット、「ラブ・レター」のタイトル、白蘭は白い衣装で登場する。悲惨な境遇にもかかわらず、懸命に生きた彼女、そもそも彼女は中国の家族を養うために、日本で働いて送金するために日本の国籍が必要だった、そのための偽装結婚だった。吾郎に1通の手紙を残していた。それは吾郎への愛を綴った内容だった。実は2人は会っていない。そもそも吾郎は結婚してたことすら忘れていたくらいだった。遺体のある千葉へサトシと共に向い、その遺骨と手紙を受け取ったのだった。「あなたのお墓に入れてください」と書かれてあり、吾郎は涙する…。そして彼の中で何かが変化する。

吾郎もサトシも白蘭もナオミも皆、ただそこにいて、日々を送っていた。ただ、それだけなのだ。挟み込まれる歌が印象的で何か心を鷲掴みにされる。そこにいて誰かと関わる、ただ、生きている。それでも愛おしい。ラスト近く、ナオミの秘密が明かされる。あの、3・11に…。その秘密を知り、愕然とするサトシ。何度か上演しているが、今回は全く趣きを異にする。生まれて、生きて死んでいく、という自然の摂理。シンプルだが、人はその中で懸命に生きる。無気力そうに見える吾郎やサトシも、だ。冒頭でパッセンジャーらが口にするいろんな”話”、そこには”今”がある。
また、ラスト、テーマ曲がリフレイン、”それだけのこと”。生きていること、そこにいること、吾郎は白蘭の手紙でほんの少しの光を見つける。そしてサトシもまた…。この”それだけのこと”には多くのことが詰まっている。

Story
2022年の新宿。 サトシは、 昔馴染みのナオミとの再会をきっかけに「高野吾郎」のことを思い出す。
吾郎はサトシと同じように歌舞伎町で汚れ仕事を請け負って、 なんとなく日々をすごしている男だった。 その吾郎のもとにある日、 一通の「死亡通知書」が届く。 そこに書かれていたのは「高野白蘭」という名前で、 どうやら吾郎の“妻”らしい。 身に覚えのない妻の死亡通知に戸惑う吾郎だったが、 やがてそれが、 小金欲しさに偽装結婚をした中国人のものだと思い出す。 一年ほど前にヤクザの佐竹から斡旋されて戸籍を売ったのだ。 困った吾郎は佐竹の事務所に相談に駆け込むが、 逆に遺体を引き取りに行くよう命じられてサトシとともに千倉に向かう。
忘れていた昔の出来事が、 今、 サトシに伝えるものとは……。

概要
日程・会場:
神戸 2022年6月22日(水)神戸文化ホール 中ホール
東京 2022年7月1日(金)〜3日(日) 草月ホール
名古屋 2022年8月24日(水)名古屋市公会堂 大ホール
広島 2022年9月3日(土) JMSアステールプラザ 大ホール
原作:浅田次郎「ラブ・レター」(集英社文庫『鉄道員』所収)
脚本・演出・振付:ワームホールプロジェクト
音楽:高田浩・井上ヨシマサ・金子浩介
美術:久保田悠人
衣裳:原まさみ
ヘアメイク:川村和枝
照明:望月太介・塚本悟
音楽監督:高田浩
音響:小幡亨
メインビジュアル:ニコラ・ド・クレシー
宣伝ビジュアル:高橋信雅・大越あすか
製作著作・主催:ヒューマンデザイン

公式WEB: http://www.ongakuza-musical

(C)浅田次郎/集英社

The post 浅田次郎原作 音楽座ミュージカル「ラブ・レター」新脚本・新演出にて開幕 そこにいること、生きること。 first appeared on シアターテイメントNEWS.

© 株式会社テイメント