【参院選2022×「Z世代」】「意識高い」悩みつつ…社会問題解決に取り組む若者たちと選挙

気候変動問題に取り組む山崎鮎美さん

 1990年代中盤以降に生まれたZ世代は、地球温暖化が急速に進む中で育ち、未来への危機感から環境問題に高い関心を寄せている。ただ社会を変えようと行動すると、「意識高い系」などと同世代からも疎まれることもある。悩みながら活動している若者がいる。

◆権力者が利益を優先

 気候変動問題に取り組む市民団体「350 New ENEration」代表の山崎鮎美さん(27)=茅ケ崎市=が活動を始めたきっかけは、2019年に豪州で発生した森林火災だった。街が燃え、人々が逃げ惑う映像をSNS(交流サイト)で見た。「ガスマスクをつけた子どもの姿が、ぜんそくの発作で吸引器をつけていた自分と重なった」

 幼いころ重いぜんそくを患い、年間の3分の1を病院で過ごした。自分が悪いと責めていた山崎さんは、小学校の授業で公害について学び、「企業や権力者が利益を優先し、多くの市民が犠牲になってきたことに気付いた」という。

◆声の上げづらさ実感

 気候変動について調べ始め、当時の環境大臣の地元である横須賀市で石炭火力発電所の新設計画があると知った。大量の二酸化炭素を排出する石炭火力発電は世界的にも批判の的だ。大きな矛盾に衝撃を受け、反対の署名集めから始めた。一歩を踏み出すには大きな勇気が必要だった。

 「マイボトルを実践する分には友達も『いいことだよね』という反応だけど、署名をお願いしたら『そこまでやるの?』と敬遠され、温度差があった」

 それでも山崎さんを突き動かしたのは気候危機のタイムリミットだ。

 気候変動が食糧難や物価高を引き起こせば、大きなしわ寄せを受けるのは生活困窮者や女性、高齢者…。環境を壊す側と、被害を受ける側が決して重ならない構図を見過ごせず、NPO団体で働きながら昨年、自ら市民団体を設立した。

 活動を始めて実感したのは「声の上げづらさ」だ。他のメンバーを含め、女性や若者だからという理由だけでバッシングや冷笑を受けた。選挙のたびに取り沙汰される「若者の政治離れ」にも違和感を覚える。

 若者が政治に無関心なのではなく、本質的な議論をしない政治家が社会問題を気付かせず、社会が目立ったことをさせない空気をつくっているのではないか。「無力だと思わされるときもあるけど、声をなかったことにされたくない」。だから声を上げる。

◆一票を託したいのは

 平塚市などでビーチクリーン活動に参加している都内在住の専門学生マオさん(18)は、今回の参院選で初めて選挙権を得た。普段から政治について家族と話すことはあるが、同級生とは話題を「共有しづらい」と感じることもある。

 小学生のころに抱いた疑問をきっかけに、社会問題への関心を高めた。

 「夏祭りで女子小学生だけが踊りを練習し、披露する伝統があった。男子は何もしないのに理由を尋ねても女子だからの一点張り」。納得がいかず抗議した。

 高校の授業で国内の男女格差の現状を知った。「女性だったらこうすべきと失言する政治家の姿を見て育ってきた。どうして許されてしまうんだろう」

 ジェンダー平等に加えて気候変動への問題意識も芽生えて社会を変えたいと願うが、「身近な友人らとは関心度合いの差もあり、自分が先頭に立って問題提起するには勇気がいる」と思い悩む。

 今春、SNSで見た活動に共感し、一人で平塚の海岸に出向いてビーチクリーンに参加した。「同世代の仲間と知り合えて、行動したいと思っているのは自分だけじゃないんだと心強かった」。SNSでの発信に身近な友人から反応がないのは残念だったが、一歩を踏み出し、この輪をもっと広げたいと思った。

 初めての投票で一票を託したいのは「10、20年後の未来に同じように危機感をもって取り組む仲間のような政治家」だ。

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