真鶴の磯焼き店、火災で休業も 町民の温かさを力に再出発

漁港が見渡せるAMAYA店内=同店提供

 真鶴港が見渡せる磯焼き店が1日、リニューアルオープンした。開店から1年足らずの今年2月に店内の水槽システムから発火。店内の大半が焼失し休業に追い込まれ、閉店も考えていた店主衛藤昌弘さん(50)を支え、再建に貢献したのは町民たちだ。都内と真鶴で2拠点生活をする衛藤さんは「同業者や近隣住民が黙々と片付けを手伝ってくれた姿に励まされた。次は町のためにできることをしたい」と感謝の再出発となった。

◆真鶴の自然に引かれ

 地元取れたての魚介類などを楽しめる「AMAYA(あまや)」(同町真鶴)。昨年5月にオープンし、釣り人や、家族連れを中心に、休日は満席が続くほどだった。

 都内の企画会社社長を務める衛藤さんは、数年前に初めて訪れた真鶴の自然や町民の温かさに引かれ、地域を活性化したいと出店を決意。「観光客や町民、漁師らをつなげる拠点にしたい」と意気込み、店に寝泊まりしながら海産物を使ったメニュー開発や、町民の雇用などに力を注いだ。

 そんな矢先だった。休業日の2月21日早朝、仕入れた魚介類を新鮮に保つための水槽のヒーターから発火し、瞬く間に黒煙が充満した。

◆立ちすくむことしか

 近くを通った漁師が気づき、店内で就寝しているかもしれない衛藤さんを救出しようとしたという。「たまたま都内の自宅に戻っていたので助かったが、急きょ向かった店はすすだらけ。やりたいことがたくさんあったのに、立ちすくむことしかできなかった」。けが人がなかったことだけが不幸中の幸いだった。

 そんな衛藤さんを支えようと、スタッフや近隣に住む町民ら約20人が駆け付け、3日間かけて撤収作業に取り組んだ。「周囲の人たちにどれだけ助けられたか。町外在住の自分が始めた店だが、この店がないと張り合いがないよ、と声をかけてくれる同業者もいてうれしかった」。衛藤さんは1カ月後に再建を決意。経営する企画会社の資金を使い、真鶴へ恩返しの意味も込めて工事などはほとんど町内の業者に依頼した。

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