「南島原みかん」全国区への道 市や生産者一丸でPR 農業研修 第一期生を募集

南島原市の公式ユーチューブで公開中の「みかん農業研修生募集」の一場面(市提供)

 モモやナシ、ブドウ、ビワ、ミカン-。四季折々の果物に恵まれた長崎県南島原市は3月、産地拡大やPRを図ろうと、県や生産者、県立島原農高など六つの団体と「南島原果樹フロンティア協議会」を設立した。第1弾として今夏、「市みかん農業研修」の第1期生を募集。市の魅力である果物に焦点を当てた「地域づくり」と「生業おこし」へ期待が膨らむ。

 60歳以上が7割

 「南島原でみかん農家になろう」。6月20日、市の公式サイトにアップされた動画。温暖な気候と肥よくな土壌に恵まれた市内の様子を美しい映像と音楽で紹介。市職員が農家を突撃訪問し、約60年のベテランや中堅若手に就業、苦労話、働く喜び、余暇の過ごし方などを聞き出し、ミカン農家の魅力や就農のイメージを伝えている。
 県内では、大村湾の南奥部沿岸の「伊木力みかん」や西彼杵半島の「西海みかん」などが圧倒的な知名度を誇る。南島原市のミカンの年間産出額は県内6位(2020年度)だが、生産者の年齢構成は60歳以上が約7割近く占め、栽培面積も年々減少している。
 加津佐町の栗田龍さん(35)は「傾斜地が多く、土壌の排水性に加え日照時間も長い。栽培条件が整っているため、高品質・高糖度のみかんが栽培可能。関西圏のスーパーからも指名買いされ頑張った分だけ返ってくる」と胸を張る。
 第1弾を企画した市農林課農業戦略班の吉岡宏真さん(40)は「まずは価格が安定していて比較的就農しやすいミカンで勝負。栽培経験のない人でも携わっていけるようトレーニングファームを設けている。新規就農者を増やすとともに『南島原みかん』を全国区にしたい」と意気込む。
 第1期生の申込期限は7月29日。定員は3人。10月から約2年間の研修がスタート。市内のミカン園などで経験者から栽培管理技術や農業経営、販売を学ぶ。U・Iターンや家族での農業経営を支援するため、「空き家バンク」も活用していく。

 スキルある若者

 だが、新規就農者を増やすだけでは“メジャー化”は難しい。市まち・ひと・しごと創生検討会議のメンバー、鎮西学院大現代社会学部経済政策学科の加藤久雄教授は「農産品販売・流通についても大都市や輸出に強い高度なスキルを持った若者の定着が望まれる」と指摘する。
 産直ECサイト「食べチョク」で自治体連携を担当する佐々木淳志さんは「温暖な気候で、海・山に恵まれた土地。雲仙・普賢岳災害に負けず、変化した土質などを活用し、農業を伸ばしてきた点が素晴らしい」と評価。一方で「商品を購入した顧客は注文内容と相違がなければ満足、ではない。注文時の期待値を超えることが顧客満足度の向上やリピーターの獲得につながる」と提言する。
 リピーター獲得に向けた具体例として▽産地紹介やお礼の手紙を同封▽栽培方法やお薦めの食べ方・保存方法の紹介▽顧客の感想を味や品質の改善につなげる-などを挙げた。
 吉岡さんは「研修制度以外にも農業体験教室やミカン商品アイデアコンテストなどプロモーションを行い、知名度・認知度の向上も図る。先代たちが築き上げた果樹産地とその生産技術を後世に引き継いでいきたい」と目を輝かせる。

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