社説:生活困窮支援 揺らぐ安全網を手厚く

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 長引く新型コロナウイルス禍と食品、燃料などの価格急騰が暮らしを直撃している。

 政府は物価高対策の中で、低所得の子育て世帯向けに子ども1人当たり5万円の給付を始めた。

 一昨年の一律10万円給付以降、生活支援を掲げた給付が繰り返された。今回の参院選公約でも各党が給付金を掲げ、支給範囲や金額の大きさを競い合うかのようだ。

 一時的な支えだけでなく、生活苦の悲鳴が広がる背景にある暮らしの基盤やセーフティーネット(安全網)の脆弱(ぜいじゃく)さを再点検し、手厚くしていかねばならない。

 昨年の生活保護申請は23万5千件(速報値)と前年に比べ1万1千件、5.1%の大幅増だった。コロナ禍による雇用悪化が要因とされ、非正社員の多いひとり親世帯などの苦境が指摘されている。

 最後の安全網とされる生活保護制度だが、国の相次ぐ保護費減額で暮らしが追い詰められていると全国の受給者が声を上げている。

 生活保護費は2013年から3年間に基準額が平均6.5%下げられ、計約670億円が削減された。これは生存権を保障する憲法に違反するとして29都道府県で受給者たちが提訴し、判決のあった11地裁のうち、3地裁が減額は違法として取り消しを命じた。

 これらの判決は、厚生労働省が専門会議の十分な審議を経ず、受給者にとって生活実態と異なる不利な指標を基に減額したと批判した。重く受け止めるべきだ。

 一連の裁判では、直前の12年衆院選公約で自民党が「生活保護給付水準の10%引き下げ」を掲げ、政権復帰した影響も指摘された。

 背景にあるのが、一部の不正受給をやり玉にあげた受給者へのバッシングだ。国、自治体の抑制策と併せ、周囲の目を気にして申請をためらう人が多く、日本の受給率自体が極めて低いとされる。

 憲法が約束する「健康で文化的な最低限度の生活」の保障が十分に機能しないなら、暮らしの安心はおぼつかない。

 市民団体の調査では、生活保護世帯の高校生の大学などへの進学率が都道府県別で最大3倍近い差がある。遠方への進学費負担が要因とみられ、貧困の世代間連鎖とならないよう支援制度や奨学金の拡充が課題だ。

 今後、コロナ禍で減収した人への国の特例貸付金約320万件の返済が本格化する。返すめどが立たずに自己破産する人も急増しており、債務の減免や生活再建への継続的支援が求められる。