年間85万人の外国人がアメリカ人に。帰化宣誓式に潜入し、米国籍を選んだ理由を聞いた アメリカ独立記念日

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

(c) Kasumi Abe

アメリカは今月4日、246回目の独立記念日を迎える。この日は親族や友人らが集まり、バーベキューや花火大会をして盛大に国の誕生日を祝う。

独立記念日を記念しこの時期は、全米各地で帰化式典が執り行われている。ニューヨーク市でも1日、米国市民権移民局(U.S. Citizenship and Immigration Services=USCIS)が主催し、22ヵ国出身の40人(15人の米軍兵士を含む)の移民を招待して帰化式典を行った。

会場となったニューヨーク公共図書館の会議室には、一番多いドミニカ共和国を始め、日本、韓国、中国、コロンビア、フランス、ジョージア、ガーナ、ハイチ、アイルランド、ジャマイカ、ケニア、メキシコ、ナイジェリア、フィリピン、スリランカ、スウェーデン、ウクライナ、イギリス、マリ、カメルーン、ブルキナファソというさまざまな国の出身者が参列。星条旗に敬意を払って合衆国への忠誠を誓い、帰化証明書をもらってめでたくこの日、米国市民となった。

政治や思想などで「分断」が叫ばれるアメリカも、いざという時になると「忠誠の誓い」の下で並々ならぬ団結力を発揮する。それはつまり愛国心でもある。式典の様子を傍らで覗いながら、改めてこの国の底力のようなものを目の当たりに感じた。

式典には日本人(匿名)が1人参列しており、話を聞くことができた。 この女性は抽選プログラムでグリーンカード(永住権)が当選したため、25年前の7月1日(ちょうどこの日)に、幼い息子を連れて渡米した。 今は当地でパラリーガルとして働いている。

米国籍を取得しようと思った理由について、「こちらで子どもも育ったことだしもともと骨を埋めるつもりだったけど、日本の親も他界した今、申請料も高くなるということで、値上がり前にアプライしてみようかと思った」という。2年前の8月に市民権を申請したがその後コロナ禍となり、プロセスが中断。

そして今年になって再びプロセスが動き出した。市民権の対面面接でのテストでは、アメリカの歴史や政治についての基本的な知識(初代大統領の名前など)を問われた。10問中6問正解したら、合格となるらしい。また、戦争になったらどの国につくか、なども聞かれた。

晴れて米国市民となった今の心境を聞くと「気持ち的にはそんなに変わらない」と言う。「日本人って他の国の人と違って生活に切羽詰まってアメリカに来ている訳ではないので。ただ今後は、選挙で投票できるのがいいですね」。

面接の時に「名前を変えるか?」と聞かれたそうだが、親からもらった日本名で今後もいくそうだ。

迷彩柄の軍服に身を包んだ、西アフリカはブルキナファソ出身のカボア・ローマン(Kabore Romain)さんは、誇りに満ちた面持ちで、式典に出席していた。帰化証明書を握りしめ「とても幸せです」と笑顔を見せる。

7年前に英語の勉強をするために来米した。昨年には米軍に入隊し、年末に市民権を申請した。その理由について「米国市民になると仕事の幅が広がるし、さらに米軍に入ると健康保険や将来の選択肢など、自国にいるより機会やチャンス、ベネフィットがたくさんある。自分は軍隊所属は初めてだが、男として生まれたからには、ただボ〜とするだけの堕落した人生は嫌だと思った。この国のために戦いたい」と今後の抱負を語った。

USCISの担当者によると、ある一定期間、紛争地に派遣された米軍部隊のメンバーは、特典として、グリーンカード保持者でなくとも市民権を授与されることがある。また(年齢や滞在期間など)市民権を得るために必要なさまざまな要件が免除されることがある。

昨年、新たにアメリカ国籍を取得した外国出身者は85万5000人にも上るという。今年は先月15日時点で既に66万1500人が帰化しアメリカ市民となっている。この数字は日本の例と比べるとかなり多い。法務省の資料によると、日本での昨年の帰化許可者数は8167人で、韓国・朝鮮人、中国人が多いようだ。(内訳は韓国・朝鮮3564人、中国2526人、そのほか2077人)

また、アメリカに帰化すると聞くと南米や東欧出身者のイメージがあるが、合衆国国土安全保障省の資料によると、2020年にアメリカに帰化した日本人の数は全米で1584人(カリフォルニア州515人、ニューヨーク135人など)ということだ。隣国メキシコ出身者の8万4081人、カナダ出身者8423人に比べると少ないが、それでもそれほど少なくない人数の日本国籍保持者がアメリカ国籍を取得している。帰化をするきっかけの1つとして、結婚して配偶者に滞在ステータス(グリーンカード)を与えるためという例もたまに聞く。また日本のパスポートを保持する外国出身者が日本人としてアメリカに帰化する例もあるようだ。

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