【参院選2022×「Z世代」】若者世代は政治に無関心? SNSで「遠い声」つなぎたい

若者の政治参加を促す団体で代表を務める能條さん(NO YOUTH NO JAPAN提供)

 円安やウクライナ情勢を背景に、参院選でも主要な焦点となっている物価高。若者世代の関心も低くはない。

 「物価上昇に給料が追い付いていない。十分に満たされた生活を送るには、もうちょっとほしいかな」。県内の百貨店従業員のミツキ(25)は本音を漏らす。

 物価高に限らず、仕事に影響する新型コロナウイルス禍の行動制限やワクチンにも関心がある。情報は、友人との会話やSNS(交流サイト)から得ている。ツイッターやインスタグラム、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」…。「政治の話という切り口ではなく、普通の会話の中でコメントしている人がいて、見てしまいますね」

 スマートフォンが生活の中心になっているZ世代にとって、街中でビラを配り、舌戦を繰り広げている候補者たちの声は遠い。

◆ポップで分かりやすく

 日常と切り離せないSNSを使い、若者と政治をつなぐ動きも活発化する。インスタグラムで選挙や社会問題について発信している団体「NO YOUTH NO JAPAN」もその一つだ。

 スタートは2019年の参院選。ポップなデザインで分かりやすく政治を伝える投稿が反響を呼び、2週間で1.5万人のフォロワーを集めた。その後も継続的に発信し、「どうして政治が必要か」「民主主義って何?」といった素朴な疑問も取り上げる。

 今回も、参院の役割や投票の仕組み、各政党の主張などを短い言葉とイラストでまとめた。選挙に関心が薄い層にとっての「入り口」となり、周りにも広めてもらう狙いだ。

 代表理事で慶大大学院生の能條桃子さん(24)=平塚市出身=が、同世代の選挙への関心の低さに問題意識を持って、仲間と立ち上げた。

 当時、投票率が高いデンマークに留学中で違いを肌で感じた。「みんなが意識高いということではなく、当たり前の感覚で政治を話していた。エリートが決めておけばいいみたいな日本の空気とは全然違った」

 現在のフォロワーは9.2万人。政治に関心のある人が、そうではない友人らにも投稿をシェアすることで、さらに多くの人に届けばと期待する。昨秋の衆院選では閲覧者数が50万人に上るなど、「3年前にスタートした時の状況とは全然違う」と前向きな変化を感じているが、活動が広がる中で「同世代にもいろんな立場の人がいて分断されている」と次の課題も見えてきた。

 地元の公立中学には生活保護世帯などさまざまな家庭環境の人がいたが、進学した都内の私立高校では経済的にゆとりのある家庭が多かった。「ずっとそうした環境で育ってきた子たちは、同世代でも違う状況の人がいることにあまり気付いていない」と感じる。

 多くの人とつながれるSNSでも、そうした“分断”をつなぐのは簡単ではない。

◆若手政治家も模索続く

 SNSを発信ツールとして重視する若手政治家もいる。東京・目黒区議の改田和弘さん(28)は、ツイッターで積極的にまちの課題や自身の取り組みを投稿している。

 公開しているラインには若い世代からの意見も届くが、「もともと支持してくれている人からの励ましの声が多いですね」。政治に関心の薄い層にまでつながれているかというと、正直分からないという。

 「若者の政治参画」に力を注ぐからこそ、もっと多くの若者と情報交換したいが、25歳で当選した若手議員でも「文字情報があふれ、みんな読むのに疲れている。動画も少しずつ挑戦しているんですが」と難しさを感じている。

 たとえば政治以外のプライベートな話題を投稿して入り口を広げれば、もっと目にとめてもらえるかもしれない。そう思う一方で、政治家のアカウントでどこまでやるべきか、批判はこないかと悩む。若者の日常に政治を溶け込ませる模索が日々続く。

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