川崎「ゆめパ」の日常が映画に 子どもの居場所と「じかん」描く

「ゆめパのじかん」の一場面(C)ガーラフィルム/ノンデライコ

 「川崎市子ども夢パーク」(ゆめパ、同市高津区)をテーマにしたドキュメンタリー映画「ゆめパのじかん」が9日から公開される。重江良樹監督(37)は「居場所の中で信頼できる大人に囲まれると、子どもは自分で育つ。ゆめパで過ごす『じかん』に触れ、子どもの力を感じてほしい」と話している。

 前作「さとにきたらええやん」(2015年)を撮った後、子どもに関する虐待、自死のニュースが続き、「同じ目線で意見を聴いてくれる大人や居場所があれば子どもたちは死なずに済んだのかもしれない」と考えた。「子どもの居場所」の映画を撮りたいと思い、過去に当時の所長で現総合アドバイザー西野博之さん(62)の講演を聞いた経験もあり、映画化を決めた。

 「ゆめパ」は2001年4月施行の「川崎市子どもの権利に関する条例」を基に、2003年7月に開所した約1万平方メートルに広がる「公設民営」の居場所で、遊び場だ。小中高生を中心に1日約200~300人が利用する。敷地には不登校の子を受け入れる「フリースペースえん」もある。

 カメラは子どもと同じ目線で、3年にわたり日常を捉える。目を引くのは土の上を走る子どもの姿だ。けがをしても再び走り、葛藤し、好きなことに熱中して進路を決める。木工作業や自分で店を出すイベントを通して看板作りや販売を経験する。

 周りには木工技術を教えても、手出しはしないボランティアやスタッフなど大人の姿がある。重江監督は「ゆめパ」の子どもたちについて「いろんなことを考え、失敗や悩みがあっても模索する。すごい力を持つ子たちだった」と話す。

 タイトルを「ゆめパのじかん」にしたのは「大人になって社会に流れている『時間』ではなく、自分を大切にし、好きなことをやり、興味のあることに使う『じかん』。それを忙しい『時間』を過ごす大人たちにも意識してもらいたい」という思いからだ。

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