VR空間でロボットアームを自身の新たな身体部位のように知覚できることを確認

生まれ持った身体とは別に、人工的に設計された余剰肢を付加することで身体機能の拡張を目指す「余剰肢ロボティクス」では、余剰肢ロボットシステムを自分の身体の一部のように捉えて抵抗なく扱えること、すなわち「身体化」できることが重要である。

東京大学、慶應義塾大学、豊橋技術科学大学らの研究グループは共同で、バーチャルリアリティ(VR)空間において足先の動きと連動して動作する余剰肢ロボットアームシステムを開発した。装用者の主観的な感覚の変化を調べたところ、装用者は余剰肢であるロボットアームをあたかも新たな自分の身体の一部として知覚したと報告している。

本研究で使用された余剰肢ロボットシステムは、装用者の身体に取り付けたセンサーで装用者の動きを捉え、VR空間のアバターとロボットアームの動きに反映する。装用者はヘッドマウントディスプレイにより第一人称視点でVR空間のロボットアームを視認しながら、ロボットアームでボールを触った際には触覚提示デバイスにより足先に反応を感じるしくみとなっている。

VR空間において余剰肢ロボットアームでボールを触るという課題に取り組んだ16名の実験参加者(健常者)は、ロボットアームを自身の身体の一部であるかのように感じる感覚(身体所有感)、ロボットアームの動きが自身の企図に応じたものであると感じる感覚(行為主体感)、およびロボットアームの位置に自身の位置が重なって存在するように感じる感覚(自己位置感覚)を覚えたことが、アンケートから示されたとする。このことは、装用者に自分の腕が増えたという感覚(余剰肢感覚)が芽生え、身体化に成功した可能性を示唆する。

また、視覚・触覚フィードバックに対する応答時間が余剰肢ロボットアームの装用前後で大きな変化を認めたことから、余剰肢ロボットアームの周囲に対する知覚の変化(近位空間の変化)が生じた可能性も示されたという。

本研究成果は、人と協調して動く余剰肢ロボットシステムを設計する上での重要な知見となると考えられる。

論文情報:

【Scientific Reports】Embodiment of supernumerary robotic limbs in virtual reality

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