2022参院選長崎 安保・防衛 基地機能強化に「不安感」 政治への視線・4

オスプレイの訓練が予定されている海自大村航空基地(手前)。奥には長崎空港が見える=2015年1月7日、大村市

 6月10日。九州防衛局の関係者らが、長崎県佐世保市の相浦地区の住民を訪問していた。陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県)に暫定配備している陸自のオスプレイを使った、陸自相浦駐屯地(佐世保市)や海上自衛隊大村航空基地(大村市)での飛行訓練について説明するためだ。
 九州防衛局は6月初旬、離着陸や人員、物資を輸送し展開するなどの訓練を年数回程度行うと発表。県内では初の訓練で、実施は「早ければ6月下旬以降」としていた。
 住民や佐世保市によると、説明の場で焦点となったのは飛行ルートや騒音対策など。同駐屯地で以前から実施しているヘリコプターを使った訓練と同様に、オスプレイも「海の方から駐屯地へ入り、海の方へ出ていく」という。騒音も「ヘリと同程度」との説明だった。
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 中国や北朝鮮の動向に加え、ロシアによるウクライナ侵攻によって国防への関心が高まっている。そんな中で迎える参院選。自民党は防衛費について、GDP比2%以上も念頭に防衛力強化を掲げる。
 県内では佐世保市を中心に以前から防衛関連施設の計画、整備が進む。陸自水陸機動団の訓練用スロープ、海自の大型艦船の係留施設や補給倉庫。2023年度には機動団の新たな連隊が陸自竹松駐屯地(大村市)に配備される。
 「基地の街」と呼ばれ、「理解がある」とされる佐世保。オスプレイの訓練を巡っても同様の雰囲気が漂う。しかし6月上旬、米本土でオスプレイの墜落死亡事故が発生。説明の場で事故の話は出なかったが、ある住民は「もし墜落すれば大惨事。自衛隊は最大限、住民への配慮をしてほしい」と話す。別の住民も「(住宅街に)落ちないか不安は残る」と明かす。
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 もう一つの訓練予定地の大村市。ヘリ部隊の基地である大村航空基地の騒音問題などを巡り、地域住民や海自、九州防衛局などで協議会を1993年に設置。要望や意見を市が県や防衛省に伝えてきた。
 基地に近い同市古賀島西町内会の藤崎義則会長は、自宅上空をヘリが飛ぶことや、夜も「うるさい」と感じる時もあるという。オスプレイの騒音はどれくらいなのか。市街地に墜落することはないのか。6月末に開かれた九州防衛局の説明会では住民の中には反対意見もあることを伝えた。騒音に関しては数値レベルは示されず、疑問や不安は残ったままだ。
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 国防費の増加や基地機能の強化はなにをもたらすのか。佐世保の住民は「防衛費が増えると他の予算が削られるかもしれない。世界情勢を見ると仕方ないとは思うが」との本音を漏らす。藤崎会長は「日本で有事になった際、大村の基地が攻撃対象になるのでは」と不安感を示しこう続ける。「これは一つの地区だけの問題じゃないと思う」


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