「普通じゃない」こだわりもその人の魅力…演劇とダンス融合、癖のある人描く 10日からさいたま芸術劇場

近藤良平さん(左)と劇作家で演出家の松井周さん=6月30日午前、さいたま市内

 彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市中央区)小ホールで10日から18日まで、不条理劇「導かれるように間違う」が上演される。劇作家・松井周さん(49)の書き下ろし戯曲を、同劇場の近藤良平芸術監督(53)が演出・振り付け・美術を手がける、演劇とダンスを融合した舞台。同調圧力の強い現代社会をほうふつとさせる「病院」を舞台に、動きや考え方に癖がある人々のやりとりを描く。

 近藤さんはダンサーで振付家。演出家・故蜷川幸雄さんの後任として4月から芸術監督に就任し、テーマに「クロッシング(交差する)」を掲げる。ジャンルの違うアーティストが交流して新しい舞台芸術を生み出す企画「ジャンル・クロス」の第2弾。

 「導かれるように~」は、病院のベッドで目を覚ました「ある者」が退院を告げられ、出口を探すも、次々と登場する癖の強い患者たちに翻弄(ほんろう)され、目的を忘れるという筋書きだ。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」などに出演し、注目を集める実力派俳優・成河(そんは)さんやダンサーら計6人が出演する。

 作品が生まれるきっかけは近藤さんと松井さんの雑談。初対面だった2人は、自分や他人のこわだり話で盛り上がり、今回の舞台につながったという。松井さん自身、丸皿が3枚あったらなぜかくっつけたくなるタイプだといい、「癖のある人が好きだし、『なぜやるのかな』と興味が湧く。癖は直すべき、と決め付けられがちだけど、実は個性と深く結び付いている。時に『普通じゃない』こだわりも、その人の魅力なんだという思いで書きました」と語る。

 作品に登場するのは、背中側が体の正面だと思い込む患者をはじめとする「心と体がずれた」人たち。意外な動きをする患者同士のやりとりを、ダンサーや俳優がどう表現するかも見どころだ。

 近藤さんは「通常のダンスシーンはないけど、舞踊的な身体能力を必要とする作品。お客さんの中には、今の時代と重ねたり、自分の生き方を振り返ったりする人もいるかもしれない。もうひと頑張りするためのヒントになればうれしい」と語る。

 4月に上演した舞台「新世界」に続く、「ジャンル・クロス」の第2弾。近藤さんは「アーティストとの創作方法はたくさんあるので、まだまだ続けていくつもり」と笑顔を見せた。

 「導かれるように~」は10日~18日の全10回。問い合わせは劇場チケットセンター(電話0570.064.939)へ。

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