今、大谷が「熱い」 昭和地区の石蔵調査に記者同行 はっしん!まちなか記者

大谷石の蔵の調査。所有者から聞き取り調査を行った

 大谷が熱い-。ミワリーです。「大谷」という表記を見て「おおたに」と読んでしまった皆さん、大いに反省してください。宮っ子は「おおや」です。大谷地区の観光が注目されていますが、大谷石のスポットは街なかにも数多くあります。「昭和地区」で行われた宇都宮まちづくり推進機構の歴史的建物活用特別委員会の大谷石の蔵の調査に同行しました。

 同委員会は大谷石の蔵の保存や活用などを目指して活動している。これまでにスマートフォンで利用できるルートマップの作製に着手し、第1弾「旧鎌倉街道編」を作った。

 ■石による違い実感

 今回の調査対象は、第3弾のルートマップとなる昭和地区。6月下旬、委員会のメンバーは県庁に集合。地区内の約30棟を3班に分かれて訪ね、建築年代や用途、構造形式を調べた。

 いわゆるアポなし訪問だが、「大谷石の蔵のことで」と切り出すと、所有者は断ることなく応じてくれる。建築年代は昭和初期が多く、江戸期もあるとか。

 「今の用途は物置だね。入れっぱなしになってるよ」と苦笑する所有者。そう言いつつ、東日本大震災で被災した蔵を修繕した例も。所有者の蔵へのまなざしは、少し手間がかかる子どもに向けるようだ。

 蔵を幾つか見て回るうちに、大谷石そのものに違いがあることを実感した。白っぽい地に虎の毛皮のように黄色が入ったような石がある。「虎杢(とらもく)」と呼ばれ、貴重だという。それに近いような石もあれば、青みがかった石もあった。大谷石は採れる場所や層で異なるという。

 手彫りの跡があるか、磨いてあるかでも、蔵の雰囲気は変わる。もちろん石を積んでいるのか、貼っているのかでも。1棟1棟、趣があり見比べるのも楽しい。

 調査は3時間ほどで終了した。「保存状態もよく、手入れされた、きれいな石蔵が多かったですね」と武井貴志(たけいたかし)委員長。「蔵を大切にされていることが分かります。石も良いものが使われていました」

 同委員会は今後、調査結果をまとめ、年度内のルートマップの完成を目指す。また第2弾「佐野街道編」や、各ルートマップにアクセスしやすいようQRコード付きのチラシの作製も進めている。

 ■米国でも関心高く

 米建築家フランク・ロイド・ライトが手掛け、大谷石が使われた東京都千代田区の帝国ホテル旧本館「ライト館」が来年、完成から100年となる。米大リーグの大谷翔平(おおたにしょうへい)選手の活躍が注目されているが、大谷石も米国とのつながりで一層、関心が高まりそうだ。

 6月末には南加(ロサンゼルス)県人会と米フランク・ロイド・ライト財団の主催で、オンライン講座が開かれた。米ワシントン大教授と武井委員長が講演し、米国の参加者から多くの質問が出された。

 大谷石の蔵は大切にされていても維持が難しくなり解体される例もある。この機会に、大谷石文化の価値を見直したい。

 やはり、大谷が熱い。

大谷石の蔵は敷地の奥にあることが多い。再活用が難しい理由の一つだ

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