アラスカの動物や先住民…星野道夫さんが捉えた厳しくも美しい極北の世界 福井県の福井市美術館で写真展

愛情がにじむホッキョクグマ親子の写真を鑑賞する家族連れ=2日、福井市美術館(長島昌徳撮影)

 米アラスカの大自然、そこに生きる動物や先住民を写真と文章で記録し、取材中の事故で43歳の若さで亡くなった写真家、星野道夫さん(1952~96年)の写真展「星野道夫 悠久の時を旅する」(福井新聞社共催)が7月2日、福井市美術館で開幕した。星野さんが魅せられた厳しくも美しい極北のありのままの世界が広がっている。

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 星野さんは、20歳の時にアラスカの村でひと夏を過ごしたのをきっかけに写真家の道へ進み、アラスカに暮らしながら取材を続けた。作品は没後25年を過ぎた今も多くの人々を魅了している。

 会場では約150点の作品を展示。吹雪の中を一列になって歩くカリブー(トナカイ)の群れに太陽の光が差し込んだ瞬間を捉えた一枚は、星野さんのお気に入りだったといい、その神秘的な美しさに思わず息をのむ。

 縦1メートル、横3メートルに特大プリントされたパノラマ写真には、紅葉した大地にカリブーの頭蓋骨がポツンとある光景が写されている。力尽き、大地にかえったカリブーが植物の栄養となり、植物がカリブーの餌になる―という「命の循環」を感じ取ることができる。吹雪の中でぴったりと寄り添って眠るホッキョクグマの親子の姿は見る人の心をホッと和ませる一枚。先住民の人々が仕留めたクジラやセイウチを解体するシーンなど、人と自然のつながりを伝える写真も並ぶ。

 訪れた人はじっくりと作品を眺め、地球温暖化や開発の影響で今はもう見ることができないかもしれない極北の姿に魅せられていた。

 ほかにも、星野さんがアラスカに興味を抱くきっかけになった写真集や取材ノート、愛用のカメラなど貴重な資料が並ぶ。作品を印刷したタペストリーを背景に写真撮影できるエリアもある。

 8月6日午後2時からは、星野道夫事務所代表の星野直子さんを招いた講演会がある。定員40人(申し込みが必要、定員を超えた場合は抽選)。

 会期は8月28日まで(休館日あり)。観覧料は一般千円、高校・大学生800円、小・中学生500円。障害者手帳提示者と介護者1人、未就学児は無料。問い合わせは福井市美術館=電話0776(33)2990。

 

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