インフレ・円安に備える資産形成とは?資産を守りながら増やしていく資産形成術

インフレ、円安が進む日本。大きな経済変化が起こる中、私たちは自分の資産をどのように守り運用していけばいいのでしょうか?

この問題を解決するキーワードは「資産分散」です。長年、資産形成のサポートしているファイナンシャルプランナーの視点から、資産を守り増やしていくための資産形成術をお伝えします。


インフレとはお金の価値が下がること

最近、「値上げ」という文字を見ない日がありません。物価の動きを表す消費者物価指数(※)をみてみると、前年同月比で5月は、米国8.6%、ユーロ圏8.1%と予想を上回る上昇でした。そして、日本は2.5%。欧米ほどではありませんが、インフレはジリジリと日本にも及んできています。
※生鮮食品やエネルギーも含む消費者物価指数(総合)の数値を記載

インフレとはモノの価格が上がること。つまり、お金の価値が下がることを意味します。欧米のインフレ率が8%以上ということは、1年前と比べて、お金の価値が8%以上も下落していることになります。

例えば、いままでリンゴ1個=100円で買えていたとします。これがインフレ率8%となり、モノの価格が上がり、お金の価値が下がると、リンゴ1個=108円に値上がります。もう100円ではリンゴは買えなくなってしまうのです。

円安とは円の価値が下落すること

為替相場でも、20数年ぶりのドル高円安が進んでいます。

2021年1月時点では1ドル=約104円でした。しかし、今は135円(2022年6月時点)前後と大きく円安に。これは、米ドルが円に対して約30%値上がりし、その分、円の価値が下落していることを意味します。

海外旅行に行くと、為替相場の影響を強く感じます。旅行先でかわいい100ドルのバックを見付けたとします。1ドル=104円なら10,400円で買えますが、1ドル=135円だと13,500円になるわけです。「1年前だったら、1万円ちょっとで買えたのに…」と悔やんでも、円しか持っていなければ、13,500円分を支払うしかありません。

では、日本国内なら円安の影響を受けないのかというと、そんなことはありません。日本はエネルギーや食料などの多くを輸入に頼っています。それらの輸入価格は、今、急激に上昇しています。そして、それはいずれ私たちのところに物価上昇という形で跳ね返ってくるはずです。

資産分散であらゆる経済変化に備える

突然ですが、あなたは自分の資産を何で持っていますか?

「ほとんど預貯金です」という方は要注意。今起こっている経済の変化に対して、資産価値を維持することができなくなるかもしれません。

では、どうすればいいのでしょうか? それを解決してくれるのが「資産分散」です。

資産分散とは、異なる資産に分けて持つことをいいます。例えば、100万円を国内債券、国内株式、外国債券、外国株式に25万円ずつ分けて保有するというイメージです。

資産分散には主に2つの効果があります。

資産全体のリスクを小さくする

資産分散の1つ目の効果は、運用における資産全体のリスクを小さくしてくれるという点です。

株式や債券、国内外のものとでは、それぞれ価格の動き方は異なります。そして、片方が上昇し片方が下落する、ということが頻繁に起こります。資産分散では、異なる資産を組み合わせて持つことにより、お互いのブレが相殺され、資産全体のブレを小さくすることができます。

資産運用のリスクとは、ブレ幅のこと。つまり資産分散は、資産全体のリスクを小さくしてくれる効果があるのです。

経済変化に対して資産価値を守る

2つ目の効果は、経済がどのように動いたとしても、資産価値を大きく減らさないようにする資産保全効果です。

資産を円預金だけで保有している場合、インフレ時や円安時に資産価値を維持することが難しくなります。しかし、インフレ時に同じように価格が上昇していく株式や不動産、金などのコモディティを保有しておけば、預貯金の価値の下落分をカバーしてくれます。

また、円安時に外国の資産を保有していれば、円資産の価値の下落分を外国の資産がカバーしてくれます。資産分散をしておけば、経済がインフレ、デフレ、円高、円安、どのように動いたとしても、資産価値を維持できるよう準備することができるというわけです。

いまは、不動産や金などのコモディティも、投資信託などの金融商品を使えば、少額から簡単に保有することができます。

(図)経済変化に対抗するための資産分散の考え方


資産分散とは、株式や債券などを保有し資産を増やしていくという資産運用の一つの戦略です。しかし同時に、あらゆる経済状況に対しても資産価値を減らさない、資産保全にもつながる資産形成術ともいえるのです。

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