「一緒に過ごす未来奪われたこと、許せない」熱海土石流災害から1年…被災地は鎮魂の思いに包まれる

静岡県熱海市で発生した土石流災害から7月3日で、1年を迎えました。土石流の発生した時刻にあわせて、多くの人が黙とうを捧げ、犠牲者を悼みました。

<滝澤悠希アナウンサー>

「1年前の記憶を思いさせるかように小雨が降り続いている熱海市伊豆山地区です。大量の土砂が流れ込んだ訳ですが、被害を物語る赤い建物も解体が進み、現在はその姿がなくなっています。あれから1年、きょうの被災地は鎮魂の思いに包まれました」

<熱海市 斉藤栄市長>

「この度の災害により大切な家族を失った皆様の気持ちを思うと、今なお、哀惜の念に堪えません」

7月3日午前9時から伊豆山小学校では、遺族や行政の関係者が集い、追悼式を執り行いました。会場には天皇・皇后両陛下から贈られた生花が飾られ、多くの人が犠牲者を悼みました。

2021年7月3日、熱海市伊豆山地区で土石流が発生。これまでに27人の死亡が確認され、いまだに1人が行方不明のままです。

<娘を亡くした小磯洋子さん>

「涙しない日はなかったですし、これからもそうだと思います。孫の母親と一緒に過ごす未来もとられてしまったことはやっぱり許せない」

<災害関連死で父を亡くした伊東真由美さん>

「この痛みを表す言葉は見つかりません。言葉にならないです」

土石流の発生した時刻に伊豆山地区に響くサイレンの音に合わせて各地で黙とうが捧げられました。

<静岡県 川勝平太知事>

「災害を二度と繰り返してはならないと強く誓った」

<熱海市 斉藤栄市長>

「復興に向けて本格的に力を入れていくという思いを強くした」

警察は土石流が流れ込んだ伊豆山港で、海上保安庁や地元のダイバーらとともに行方不明となっている女性の一斉捜索活動を、これまでで最大規模となる200人規模で実施しました。

しかし、発見につながるような手掛かりは見つかりませんでした。

一方で、土石流の責任を問う新たな動きも出ています。

<被害者の会 瀬下雄史会長>

「行政訴訟は引き続きスコープ(視野)に入っていた。1年という時間が掛かったが、行政訴訟に踏み切る」

遺族らで構成する被害者の会は、土石流の起点にあった盛り土を適切に規制しなかったなどとして、静岡県と熱海市を相手取り、損害賠償請求を起こす考えを明らかにしました。

<滝澤悠希アナウンサー>

「今回、取材をして感じたのは、土石流は住民のコミュニティーをも『分断』してしまったのではないかということです。

土石流災害の影響で1年経った今も132世帯235人が避難生活を余儀なくされていますが、熱海市が調査をしたところ、伊豆山に「戻りたい」と考えている人はおよそ5割にとどまっていて、実際にきょう住民の方々に、話を聞いてみても『時間がたつにつれて、さらに戻りたいと願う人は少なくなってしまうのではないか』という心配の声も上がっていました。

こうした中、行政には引き続き住民たちが引き続きつながりを維持できるような取り組みが求められます」

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