大泉洋、「鎌倉殿の13人」源頼朝の死は「好きに受け取ってほしいです(笑)」

NHK総合ほかで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜午後8:00ほか)で、源頼朝役を熱演した大泉洋のコメントが到着した。

三谷幸喜が脚本を担当する本作は、頼朝の妻となる北条政子(小池栄子)の弟・北条義時(小栗旬)を主人公に、地方の豪族から頼朝の第一の側近となった義時が、その後いかにして頂点に上りつめたのかを、鎌倉幕府を支えた武士たちの姿を絡めて描くもの。

6月26日放送・第25回「天が望んだ男」のラストでは、頼朝の死を想像させる姿が描かれ、その突然の姿に多くの反響が寄せられるなど、同作の人気の一つとなっていた頼朝の存在。冷酷な頼朝役を熱演し、話題を呼んだ大泉だが、あらためて三谷作品の面白さについて「こんなことを言うと失礼かもしれませんが、三谷さんの円熟期の、集大成のような大河ドラマなのかなという気がします。海外のドラマなんかを見てると、やっぱりすごいじゃないですか。本当に面白いし、すごく重厚なものが多くて、どうしてもそこと比べてしまうと日本のテレビドラマというのはどこか成熟していないような気持ちがあって、『海外ドラマってすごいな』と思っていました。でも今回の『鎌倉殿の13人』って初めて、本当に『日本にもこんなにすごいドラマがあるんだ!』って自慢したくなるような。僕は全部の大河ドラマを見てるわけじゃないし、全部のテレビドラマを見てるわけじゃないから、あくまで僕の個人的な感想だけど、そう思えるようなドラマですよね」と力を込める。

さらに、「三谷さんが書いているので、単純な面白さ、笑いの要素もあるんだけど、笑いから“どシリアス”への振り幅がすごくて。よくファンの皆さんが『風邪引きそうだ』とか言っていますが、本当にそんな感じですよね。笑ってたところからこんなシリアスになっちゃうんだ、とかね。僕なんか今でも第15回、もう本当にあれで日本中から嫌われましたけれども(笑)。やっぱりあんなに面白い回はないなと思いましたね。あの時も三谷さんからメールが来て『案の定、日本中を敵に回しましたね』って一言目に書いてあって、最後に『でも僕は大好きです』って書いてあって(笑)。あきらかに面白がってますよね(笑)。三谷さんのゆがんだ愛が私をいつも襲ってます(笑)」と三谷とのやりとりを明かす。

完全な悪ではない部分がある頼朝だが、演じる上で「これだけは忘れずにいよう」と心がけたことを尋ねると、「自分が演じる役ですから、皆さんが言うほど僕は嫌いじゃないです。彼がやってることはとても正しいというか。でも演じる上では、どこか孤独な人というか、ちょっと生い立ちが不幸だったなと思いますね。子どもの頃に家族を殺されて伊豆に流されてしまい、人をなかなか信用できないところがあるんだろうなと思う。頼朝なりの愛情はいろんな人にあったとは思うんです。政子や子どもたちだったり、義時や義経だったりへの愛情はもちろんある。ただ彼にとって一番大事なことって、自分のことや、自分の一族のことなんですよね。すべては自分の、源氏の一族が末代まで繁栄できるようにということしか考えていないんだと思うんです。もちろん兄弟は大事なんだけど、自分に取って代わる可能性が一番あるのも兄弟だったんですよね、あの時代は。だからやっぱり義経にしても、範頼にしても、排除せざるを得ない。そこがまた彼が孤独で人を信じ切れない人だからこそなんでしょうけど。ただ、あの時代を見ると、兄弟を排除する、親を排除するというのが実はものすごく多いわけです。今回はそこが見事に描かれちゃってるから、頼朝さんはどうしても嫌われちゃうんだけど、『そんなのみんなそうじゃないか!』と私は思ったりもするんですけど(笑)」と演じた頼朝の心情を思いやる。

孤独な頼朝が、義時のことは信頼していたが、「頼朝は、直感的な判断で人を見ていたと思うんですよね。義時についてはもう会った途端から好きというか。小栗(旬)くんが演じている義時という人は、真面目だし、野心がない。そういうところを見ていたんじゃないですかね。結局義時は頼朝についていって、頼朝をずっと見てどんどん変わっていってしまうわけですよね。そこもまた『大泉のせい』って言われちゃんだろうな」と笑う。

そして、義時が頼朝に似てきたタイミングについては「顕著になるのは頼朝が亡くなってからだとは思います。曽我兄弟の仇討ちの収め方とかも、義時ならではというか。そういう、とっても賢い人だっていうのを、頼朝は見抜いていたんじゃないですかね」と答えたが、「でも『自分に似てきてるな』と思っていたかと言われると、僕はそう思って演じてはいなかった。この『鎌倉殿の13人』って頼朝が死んでからが大事なお話というか。頼家の時代になってからが本番になる。だから当初、小栗くんとはLINEでよく『早く大泉死んでくれないと困る』とか『三谷さん頼朝を描きすぎた』とか言ってたんだけど、最近、僕が死んでからは相当厳しい決断が続いているらしくて、『いやぁ、頼朝さんは死ぬのが早すぎた』って手のひらを返された(笑)。頼朝がやってた厳しい決断を、今度は自分で下してるんだろうなと想像しているんだけど」と考えを述べた。

第25回では、頼家も妻と子がいながら別の女性を妻にしようとするシーンがあったが、「女好きは思いっきり継いでますよね。それを『女好きはわが嫡男の証しだ』なんて、あれはばかなシーンでしたね。『頼もしいぞ』とか言って、ばかだなと(笑)。なぜ三谷さんはここまで頼朝をだめに描くんだろう。厳しい決断を政治家として下していくのはいい。だけど本当に幸せそうな八重に向かって昔の話をさんざんする、あのシーン(前出・第21回)は大変でした(笑)。こんなところまで(器の)小さを表現するのかと。ドラマ本編が43分しかない中で、ここにその尺割きます?っていう。だったらもっと他の人描いた方がいいのではと。聞いちゃったもん、『(頼朝は)なんでこんなこと言うんですか?』って。『いや、単純に腹が立っただけ。幸せな八重を見てイラッとしたんじゃない?』だって。理解できなかったです」とあまりの展開に三谷に問いかけたことを明かした。

また、頼朝が死に向かっていく台本を「面白いと思った」という大泉。「1人の、権力の頂点に上りつめた人がどんどんだめになっていく。巻狩りの最後でも口にしていましたが、どこか天にも見放された気持ちになってきて、どんどん自分の犯してきた、罪…とは言いたくないけど、たくさんの人を排除してきた男が、そこに苦しめられていくというか、その亡霊に苦しめられていくというか。25回の頼朝は精神分裂気味の人になってしまったのかなと思っていました。突然、巴御前のところに行って、義仲を討ったことを申し訳ないって思っちゃった。その気持ちも分かる気がしました。死ぬ直前に今まで自分がやって来たことを謝りたくなるような気持ちでした」と心境を告白。

頼朝の死について視聴者には「好きに受け取ってほしいです(笑)」という大泉だが、「どう思うんでしょうね。あまりにも頼朝はひどく描かれてますからね。頼朝が倒す相手はものすごくいい人に、とにかく性格よく描いてるから、そりゃ頼朝が悪く見えるし、『ひどい殺され方してほしい』なんて言われてしまってる(笑)。でも僕は、実にシンプルというか、素直に頼朝の最期が描かれていて、とっても面白いなと。25回では馬から落ちて、そのあとの26回もまた、三谷さんらしいですよね。頼朝がただ寝てるだけっていうのは面白いなぁと。寝てる頼朝の周りでどんどん動いていく。まさに劇作家・三谷幸喜の真骨頂というか。基本、三谷さんの舞台はワンシチュエーションですよね。一つの部屋があってそこで何かがずっと起きてくのを描くのが上手な方だから。大河ドラマだから頼朝の最期も大きなうねりの中で描いていきたいだろうけど、それが、頼朝が眠ってるそこだけで起きていく。小さいんだけども、今後の鎌倉がどうなっていくかの大事な話し合いが行われていく。そして頼朝の本当の最期は政子と2人で迎えましたけど、演出の保坂慶太さんが非常によく撮ってくれて、すごく美しいカットだったんです。小池栄子さんの熱演も素晴らしかった。とても印象に残ってます。こんなドラマとこんな役にはそうそう巡り会えないなと、とっても幸せだなと思いましたね。もう、こんな役をいただいて三谷さんには感謝しかないです」と思いを伝えている。

© 株式会社東京ニュース通信社