世界的メガヒット!ケイト・ブッシュ「神秘の丘」は単純な80'sリバイバルじゃないぞ! Netflix「ストレンジャー・シングス」で集める80年代回帰!

Running Up That Hill / Kate Bush

世界規模の “80年代回帰” を考察

世界レベルで巻き起こる80年代回帰は、とどまるところを知らないのだろうか。2022年に入って、80年代回帰の直接的きっかけを作った男、ザ・ウィークエンドが新アルバム『ドーンFM』でそれをさらに押し進め(シティポップブームで再評価著しい亜蘭知子の作品をサンプリングというサプライズまで!)、新アルバムが世界各国で首位獲得となったハリー・スタイルズを筆頭にポップアイコン(特に英米女性シンガー)たちがそのアプローチを強めていく… 21世紀に入ったころから “80年代回帰” という言葉は、ことある毎に取り沙汰されてはいたが、ここ数年(ザ・ウィークエンド「ブラインディング・ライツ」のヒット以降?)のそれは年々加速度を増していっているような印象を受ける。

この “80年代回帰” 現象は、ザ・ウィークエンドの例を挙げるまでもなく、現行ポップアイコンたちによるポスト・ディスコ期ブギー・ファンク~エレ・ポップへのアプローチ、再現がその実体だ。そこにSNS等の影響によって当時のヒットソングのリバイバル現象が絡んでくる(数年前TikTokで使用されたことによってフリートウッド・マック「ドリームス」がおよそ40年ぶりにトップ40ヒットに!)。そう、ここ数年の “80年代回帰” 現象は、この方程式に則ったものだった。

「ストレンジャー・シングス」で注目! ケイト・ブッシュ「神秘の丘」

2022年初夏、この方程式に則ることのない “80年代回帰” 現象が勃発した。既に各メディアが報じているのでご存知の方も多いだろうが、英女性歌手ケイト・ブッシュのかつてのシングル「ランニング・アップ・ザット・ヒル(神秘の丘)」(1985年)がNetflixのドラマ『ストレンジャー・シングス~未知の世界』で使用され、世界各国のヒットチャートのトップ10入りを果たしたのだ。

本国イギリスを筆頭にスイス、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド等では1位、米ビルボードHot100では4位を記録、リリース当時を大きく上回る、もはや世界的なメガヒット、そしてケイト・ブッシュ史上最大ヒットという状況になっている(2022年6月28日現在)。

しかしどうも今回のケイト・ブッシュ「神秘の丘」のヒットは、ここ数年の “80年代回帰” 現象の方程式から逸脱している… というか単純な80年代回帰に当てはまらないようにみえる。その要因はいったい何なのだろうか。

Netflixのおかげ? 世界各国同時多発的ヒット

世界で配信されているNetflixのドラマで使用されたからこそ、世界各国同時多発的ヒットが実現したというのが “実に2020年代的で新しい” というのも大きな要因だろうが、そもそも「神秘の丘」自体が万人の知る1980年代を代表するようなメガヒット作品ではなかった、というのがまず挙げられる要因だろう。

ケイト・ブッシュはデビュー曲「嵐が丘(Wuthering Heights)」(1978年)こそ全英ナンバーワンに輝き、日英(あるいは日欧)ではそれなりの人気を得ていたが(日本では後年当曲が明石家さんまの人気番組で使用され、特異な立ち位置にある)、80年代を通してヒットシングルを連発するような派手なアーティストでは決してなかった。どちらかというとアーティスティックな姿勢を崩さない、わかる人だけわかってもらえればいいという、強いて言えばケイトが敬愛するジョニ・ミッチェル・タイプのシンガーであったということだ。

だから唯一Hot100のトップ40入りを果たしたものの(30位)、イギリス以外では認知度の低い、どちらかというと地味な印象を抱く「神秘の丘」の今年のヒットぶりは、楽曲やアーティストのパワーによるものではないということになるだろう。1にも2にもNetflixのおかげということなのだろうか。

メインストリームに乗らずに表現し続けた“独自の内省的世界観”

そして単純な “80年代回帰” に当てはまらないもうひとつの要因、それは「神秘の丘」がいわゆるエレ・ポップ文脈とは遠くかけ離れたところにあった楽曲だったということだ。派手でキラキラした感触のエレ・ポップは、常に80年代のヒット・パレードのメイン・ストリームだったが、もちろんケイトはそんな潮流には見向きもせずに独自の内省的世界観を表現し続けていた。

だから当時「神秘の丘」が、30位止まりとはいえ、Hot100のトップ40入りしたのには、驚いたというよりは不思議な感覚に包まれたのを覚えている。ケイトがイギリス以外の国でヒットを放った…。延いては2022年の「神秘の丘」の世界的メガヒットには、驚愕さえ覚えたことを、この場で言っておこう。

さてここ数年の “80年代回帰” の流れとは明らかに一線を画す「神秘の丘」のヒット。この事件が持つ本当の意味合いを理解するには、もう少し時間が必要なのかもしれない。

カタリベ: KARL南澤

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