節電して得をする“節電ポイント”は本当に得をするのか!? その中身を検証

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。6月27日(月)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、政府が新たに導入する“節電ポイント”について深掘り。政府が講じる対策について意見を交わしました。

◆電力ひっ迫を回避すべく政府が新たなポイントを導入

6月21日、岸田首相は電気料金の高騰と電力需給のひっ迫対策として、節電した家庭に"節電ポイント”を付与すると発表。木原官房副長官は、節電プログラムに参加する家庭に2,000円相当のポイントを支給するとし、準備が整い次第進める意向を示しました。

この背景には現在の苦しい電力供給体制があり、火力発電は老朽化し、軒並み休止や廃止に。そして、再生可能エネルギーは天候によって供給が不安定で、原子力発電は多くが稼働停止・廃止という状況です。そのため、東京電力の電気料金は昨年に比べ、平均的な家庭で1,898円程度の値上げとなっています。

今回導入される節電ポイントは、電力会社のポイント付与サービスに連携するもので、ポイントは電気料金の支払いなどに使用可能。電気料金の1~2割のポイントを付与することを検討しているそうです。

電力会社の節電への取り組みとしては、東京電力エナジーパートナーや北陸電力などが節電ポイントを付与する他、九州電力は企業が節電に協力すると料金を割引するなどの取り組みも打ち出しています。

生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、ポイント獲得のために暑いなかでもエアコンを使用しないなど、無理な節電で健康にリスクが及ぶと懸念し、「ポイントよりも、インフレ対策や給付型というのもないのかなと思った」と率直な思いを吐露。

一方、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「ここに至ってはもうこれしかない」、「節電効果は確かにある」と節電ポイントを許容しつつ、「仕組みの納得度で言えば、非常に薄い」とも。というのも、一般的な世帯で毎月獲得できるポイントは数十円程度。そのために熱中症のリスクを高めるのはナンセンスだから。

むしろ、毎月の電気料金に上乗せされている再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)を一時停止したほうが「(家庭における)効果としては間違いなくある」と指摘します。

◆考えるべき節電ポイントの是非

東京電力エナジーパートナーでは、省エネへの取り組みとして6月8日から「夏の節電チャレンジ2022」を開始(9月30日まで)。これは専用フォームから申し込み、通知された節電対象時間帯に節電に取り組むと、1kWhあたり「5節電ポイント」がもらえます。そして、このポイントはAmazonギフト券やTポイント、Pontaカードなどのポイントに交換可能。ちなみに、1kWhとは掃除機(強)を60分間、ドライヤーを50分間使用した量になります。

節電ポイントに関しては課題も山積しており、そのひとつが手続きの煩雑さ。また、スマホやパソコンで行うため、高齢者は参加しにくいということも。そして、財源についても、1,000億円規模の財源が必要となり、木原官房副長官は予備費(5兆5,000億円程度)も含めて検討するとしています。

さらに、節電を求める部門についても問題が。エネルギー消費構成比を見ると、家庭部門が14%で企業・事業所などが62.7%。家庭よりも企業・事業所での節電効果のほうが大きいと見られることから、政府は企業へのポイント付与も検討していますが、制度の詳細は未定となっています。

Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは、今回の節電ポイントは「正直、続けにくいのではないか」と危惧。その理由としては、デバイスの問題に手続き簡略化の必要性。さらには、大空さんも話していた動機となるポイントの額に触れ、茶山さんは「エネルギーというところを見たときに、重要なのは持続することだと思うので、誰もが持続できるようなシステムを考えていただきたい」と行政に要望します。

茶山さんの"持続可能”という言葉を受け、キャスターの堀潤は日本のエネルギー供給源について「僕は悔しい」と悔恨。なぜなら原子力発電所の問題に対し、国が真っ向から向き合って議論したのか。さらには先日、最高裁が東京電力福島第一原発事故における国の責任を否定する判決を下したことを引き合いに「何か事故があったときの責任の所在が、極めて曖昧なまま」と忸怩たる思いを吐露。

堀は「僕は(原発が)あるなら動かせばいいと思う。でも、動かすための人的な体勢がしっかりと組めているのかが問題。これは政治側の不作為かなとも思う」と意見します。

これに大空さんは、「僕もまさにそう思うところはある」と同意。そして、原発に関しては安全性が担保されたものは稼働していく方針がある一方で、エネルギー会社や電気会社など、なかには儲かっている企業が多々あり、「その利益を再エネに投資する、このルートができていない。そこをちゃんと監視していくことが大事」と力説。

さらには、「節電ポイントは弱い立場にある人に節電をしろということ」と主張。なぜなら、2,000円のポイントのために節電するのは「生活に苦しい人」だから。「生活保護の人も含め、生活に困窮している人であればあるほど、こうしたことに協力せざるを得ない状況が作り上げられてしまう」と案じ、「これが本当に正しいのか、ぜひ考えていただきたい」と訴えます。

大空さんの指摘に加え、谷口さんは節電ポイントが使えるところが限定されていることを憂慮。「大きな企業などでしか使えないところも違和感がある」と話していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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