旅行会社が学習塾、パーソナルジム…コロナで打撃、異業種に活路 福井県内の2社、本業との連動も視野

福井旅行が学習塾運営の新事業に向け、店舗一部を改装して設置した教室=福井県福井市花堂南2丁目のベルトラベルサロン
旅行事業以外の収益確保のため、ハッピートラベルが新たに始めたパーソナルジム=福井県越前市庄町

 新型コロナウイルス禍で打撃を受ける福井県内の旅行会社2社が、新たな収益源の確保のため、学習塾やパーソナルジム運営の新規事業に乗り出している。両社とも国の事業再構築補助金を使って店舗の一部などを改装し、担当人材は適性のある社員を研修させて対応。教育旅行やヘルスツーリズムといったツアー企画との連動を視野に入れており、本業との相乗効果も狙う。

「旅育」テーマに

 創業50年超の老舗、福井旅行(本社福井市花堂南2丁目、小林敏博社長)は、同市のショッピングセンターベルの一角にある「ベルトラベルサロン」店内の一部約50平方メートルを改装。学研グループとフランチャイズ契約し、幼児~中学生向け教室を7月4日に開校する。家庭教師などの経験がある社員が学研の指導者研修を終え、講師を務める。

 コロナ禍で旅行事業の売り上げは一時、10分の1程度にまで落ち込み、退職する者もいた。小林社長は「対面で顧客と信頼関係を築いてきたが、接客型店舗は厳しい時代。店舗を維持するためにも人が集まる事業にしたかった」と学習塾を選んだ。

 学習塾の運営とともに教育旅行に力を入れる。「旅育(たびいく)」をテーマに、教室生と保護者を対象にした旅行企画を提供するほか、親子に工作や実験、自然などを体験してもらうツアーも開いていく。5年後の教室と教育旅行の売り上げは全体の1割程度を目標とし、さらに成長させたい考えだ。

ヘルスツーリズム視野

 旅行大手JTBの総合提携店、ハッピートラベル(本店坂井市春江町随応寺、高木智之社長)は、コロナ禍の影響で越前市のショッピングセンター武生楽市に入居していた武生店を閉鎖。同市庄町のテナントに武生サテライト店を開設し、昨年10月からパーソナルジム「RAISE(レイズ)」を始めた。

 旅行事業の売上高が7~8割減となる中、「コロナ下にあって個別指導のパーソナルジムの需要増に注目していた」と織田利昭会長。福井市内のパーソナルジムに協力を求め、スポーツやフィットネスが得意な社員2人をトレーナーとして養成した。

 ジムの会員数は口コミで徐々に増えている。「1対1の個別指導はコミュニケーションも重要で、旅行業に通じるところがある」と織田会長。今後もジム運営に力を入れる方針で、5年後は全体の売上高の1割以上を目標に掲げる。さらにトレーニングと旅行を掛け合わせた商品やヘルスツーリズムの提供も検討していく。

発信拠点残すため

 新型コロナ感染が落ち着き、旅行需要は回復傾向にあり、アフターコロナで一気に“リベンジ消費”が来る期待感もある。だが、コロナ禍で旅行形態は団体から個人型への移行が加速。オンラインやアプリで直接予約できるサービスが増え、店舗に置くパンフレット商品も削減の流れだ。

 「コロナが終わっても、旅行需要はかつてほどには戻らない」とハッピートラベルの織田会長。地域の旅行会社の主力だった団体旅行の需要は少なくなるとの見方だ。福井旅行の岩佐健営業課長は「新事業は1、2年先を見据えたものではなく、中長期で旅行文化を発信する店舗を福井に残すための一手」と力を込めた。

© 株式会社福井新聞社