北朝鮮を揺るがす正体不明の「新型高熱病」…コロナと腸チフスに続き

新型コロナウイルスの感染拡大に続き、急性腸内性伝染病の患者が急増している北朝鮮の黄海南道(ファンヘナムド)の海州(ヘジュ)で、今度は「新種の高熱病」が蔓延している。

病気の正体はわかっておらず、地元当局が対応に当たっている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

感染が広がったのは、海州市内にある金鍾泰(キム・ジョンテ)師範大学の寄宿舎だ。先月10日から、高熱を出してな死亡する学生が相次いでいる。ただ、その正確な数は伝えられていない。発熱以外にも、胸部痛、血栓などの症状が共通して見られ、抗生剤を投与しても効果がなく、ひどい下痢を繰り返し死亡に至るという。

事態を重く見た黄海南道非常防疫指揮部は先月20日、国家非常防疫司令部に実態を報告し、その3日後、大学の教職員と学生全員に対して検診を行うよう緊急指示が出された。

検診を行った黄海南道と海州市の保健部門の関係者は、新型コロナウイルスの変異株の可能性があると医学的知見に基づいて結論を出したものの、国家非常防疫司令部は「新型高熱病との結論を下せ」との指示を下した。

海州市の保健部門は、事案は国に報告され、薬も供給されているので、市民に対して衛生と健康の管理をしっかりすれば大丈夫だと、市民の不安を抑えようとする一方で、「正確な医学的診断名を下すことは地方の医師が勝手にできることではないので、中央の指示に従い、今後布置(布告)する」と明らかにした。

何らかの政治的な意図に基づき、実際に患者を診た現場の所見は完全に無視されているということだ。ちなみに、この病気による死者は、国家非常防疫司令部が毎日発表している「全国的な伝染病拡散および治療状況」には、含まれていない。

北朝鮮の防疫機関は、発熱患者や死者が増えれば、「コロナ対策がなっていない」と叱責、処罰されるおそれがあるため、数字を意図的に少なく報告しているのではないかとの疑惑が持たれている。今回の事案も、幹部が保身のために、是が非でもコロナとして認めようとしないことの現れかもしれない。

地元では、同じような症状の病気は大学だけで見られるものではないとの声が上がっており、すでに地域全体に広がっている可能性がある。また、教職員や学生、その家族の間では、「危険な別のウイルスが大学に広がっているのではないか」と疑う声が飛び交っている。

また、「国はコロナが風邪レベルだと言っているが、治った人はひどくやつれている」「隔離中に薬が一度ももらえなかったという人も多いのに、本当に完治したのかわからない」「隠れ感染者が多くいるはずだ」などと、様々な噂が飛び交っているとのことだ。

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