土曜首位オリバー・ソルベルグが決勝制圧も、車両規定違反でマルクランドが勝利/EuroRX1第2戦

 7月2~3日にスウェーデンの“聖地”ホーリエスで開催された同地伝統のイベント“Magic Weekend(マジック・ウイークエンド)”にて、実質的トップカテゴリーとして争われたFIA格式欧州選手権のFIAヨーロピアン・ラリークロス・チャンピオンシップ(EuroRX1)第2戦は、ヘドストロム・モータースポーツからゲスト参戦を果たしたオリバー・ソルベルグ(ヒョンデi20 RXスーパーカー)が初日から躍動。

 2020年以来となるラリークロス競技ながら土曜を首位で終えると、日曜も順当にファイナルへと進出し、WorldRX世界ラリークロス選手権“4冠王者”ヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ポロGTIスーパーカー)や、アンドレアス・バッケルド(アウディS1 EKS RXクワトロ)らを退け見事ウイナーに。

 しかしイベント後の再車検で「非準拠のアンダーボディプロテクションを使用した」ことでオリバーは失格処分となり、代わって開幕勝者のアントン・マルクランド(ヒョンデi20 RXスーパーカー)が連勝を飾る最終結果となった。

 WorldRX世界ラリークロス選手権の下部組織としてステップアップ・カテゴリーにも位置付けられるEuroRX1は、すでに5月21~22日にハンガリーで“スタンドアローン“の開幕戦を終え、このマジック・ウイークエンドでは第2戦が予定されていた。

 今季より電動化を果たすWorldRX最高峰のRX1eお披露目を前に、同イベントには“肩慣らし”として豪華スタードライバーたちが集結。言わずと知れた元WRC世界ラリー選手権王者であり、WorldRXでも世界タイトルを獲得したペター・ソルベルグの長男で、自身もRallyXノルディックチャンピオンの肩書きを持つオリバーも、2020年以来のラリークロス参戦を果たした。

 ようやく20歳を迎えたオリバーは、土曜早朝に土砂降りのマッドコンディションとなったヒート1で最速のスタートを切ると、続くヒートでもクリストファーソン、マルクランドに次ぐ3番手に入り、初めてステアリングを握ったマシンながら、初日を総合トップで終えるセンセーショナルな復帰劇を飾った。

「全体的に素晴らしい日だったね。最初のヒートでは本当にクリーンな走りができたよ」と、笑顔で初日を振り返ったオリバー。「実際に驚くほど気持ちが良かったんだけど、2回目のヒートではスタートに失敗して突然、2年ぶりのトラフィックに放り込まれたんだ」

「とても奇妙な感じだったけど、周囲のドライバーはとても速く、少ないマージンでバトルを繰り広げるのは本当にクールで楽しかった。こうして初日を終え、トップで夜を越せるのもファンタスティックだね!」

スウェーデンの“聖地”ホーリエスで開催された同地伝統のイベント”Magic Weekend”には、WorldRX世界ラリークロス選手権4冠王者ヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ポロGTIスーパーカー)や、アンドレアス・バッケルド(アウディS1 EKS RXクワトロ)ら豪華メンバーが集結
2020年以来のラリークロス参戦となったオリバー・ソルベルグ(ヒョンデi20 RXスーパーカー)は、週末を制圧する圧巻のパフォーマンスを披露した
つねにヒート首位を争った3名と、バッケルド、ジャン-バティスト・デュブール(プジョー208WRXスーパーカー)を含む5台でのファイナルに

 明けた日曜は「前日のセカンドヒートでは最後の2周でパワーダウンを感じた」と言いつつ、最速タイムを刻んでいたクリストファーソンがウォームアップからトップタイムを記録すると、続くヒート3ではマルクランドが首位を奪い、そこに初日出遅れたバッケルドがセミファイナル1を含む2ヒートを制して絡んでくる展開に。

 同じくセミファイナル2はオリバーが、セミファイナル3はクリストファーソンが制し、最終のファイナルは複数回のフランス・アイスレース王者、ジャン-バティスト・デュブール(プジョー208WRXスーパーカー)を含む5台で争われることとなった。

 そのスタートから先頭を死守したオリバーに対し、クリストファーソンがすぐさまジョーカーラップへ飛び込むと、サイド・バイ・サイドの攻防を繰り広げていたバッケルドとデュブールも反応し、続くラップでは首位オリバーもギリギリのタイミングで消化を終え、合流地点でクリストファーソンと激しくコンタクトしながらも、世界王者を相手に2番手を死守する。

 すると3ラップ目にはそのクリストファーソンが突如失速し、ジョーカー路へと退避してスローダウン。まさかのパンクにより戦列を去ることに。その直後、最後のジョーカーに飛び込んだマルクランドはサイドウェイが深くなり3番手で本コースに復帰すると、今度はなんと2番手バッケルドがサスペンション破損で停車。2度目の幸運が訪れたマルクランドが2番手に浮上すると、最後の幸運は首位チェッカーを受けたオリバーのまさかの失格処分となり、結果的にマルクランドがハンガリーに続く連勝を飾る結果となった。

「明らかにこの方法で勝ちたいと思うドライバーはいないし、オリバーが週末を通して驚くほど完璧なドライブを披露したから、この決着は非常に残念に思うよ」と語ったSETプロモーション所属のマルクランド。

「僕自身も2017年にノルウェーで初めてWorldRXの優勝を得るはずだったが、わずかな確認不足と技術的な規約違反によりそれを失った。だから彼が今感じている心痛が手に取るように分かるよ」と続けたマルクランド。

「ファイナルでは1周目のジャンプで完全にオーバーシュートし、フロントを強打してバランスが悪化した。現実的にオリバーに付いていくペースがなかったが、ライバルたちの不運に助けられた。明らかにチャンピオンシップにとっては非常にポジティブだし、今季残りの期間も、この連勝の勢いを維持したいと思っている」

 続くEuroRX1の第3戦は8月13~14日のノルウェー・ヘル戦へと飛ぶものの、その手前となる7月30~31日にはドイツ・ニュルブルクリンクでいよいよ新時代のWorldRXが開幕。今季よりフル電動クラスRX1eを頂点とする世界選手権と、2年目開催のRX2e、そしてEuroRX3の併催が予定されている。

開幕勝者のアントン・マルクランド(ヒョンデi20 RXスーパーカー)はファイナルでも2位でチェッカーを受ける
「明らかにこの方法で勝ちたいと思うドライバーはいない」と語ったマルクランドが、結果的に開幕連勝を飾った
併催の電動ワンメイク戦『FIA RX2eチャンピオンシップ』は、16歳の新鋭ヴィクトル・ヴランクスが初優勝を決めている

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