磯焼けで痩せたウニを陸上で再生 陸上の施設で養殖したウニを宮城県で初出荷

宮城の海に異変についてです。近年、温暖化の影響で海藻が減少してしまう磯焼けが進み、餌を食べられずに痩せたウニが増えています。こうした中、注目されているのが痩せたウニを陸上で育てる陸上養殖です。宮城県南三陸町の水産加工会社の取り組みを取材しました。

牡鹿半島の先端に位置する石巻市の給分浜。6月29日、今シーズンのウニ漁が解禁され、漁師たちが早朝から素潜りでウニを水揚げしました。
岩場に生える海藻を餌とするウニ。しかし、映像を見ると海藻が減少する磯焼けが進んでいるのが分かります。
例年6月上旬から始まるウニ漁。2022年は例年に比べて海水温が高く、ウニが餌を食べる量が増えたことで、更に磯焼けが進んでいるといいます。そのためウニの身入りが悪く、開口の時期がが遅れたのです。
ウニ漁師「だいぶ海藻類は少なくなったと思います。食べ物が海藻なのである程度は影響があると思います」

宮城県北部を中心に磯焼けが深刻化

磯焼けが深刻化

磯焼けの被害は近年、県の北部を中心に深刻化しています。農林水産省によると県内のウニの漁獲量は、2010年に年間744トンありましたが、震災の影響で大幅に減少。その後、少しずつ回復していますが、震災前の水準には戻っていません。
その原因の一つが磯焼けが進行したことで、身入りが少なく出荷できないウニが大量に発生しているためです。

こうした中、痩せたウニを再生させる取り組みに注目が集まっています。南三陸町の水産加工会社、ケーエスフーズです。
ケーエスフーズ西條盛美社長「ウニの養殖場ということで、造らせてもらいました。いらなくなったウニ、身の入っていないウニを海から上げてもらって、身を入れてそれで商品化しようっていうことで」

痩せたウニを陸上で養殖

陸上の養殖場

ケーエスフーズでは3年前から、南三陸町の沿岸部に造った水槽で、磯焼けの進む海域から水揚げした身入りが5パーセント以下の痩せたウニを陸上養殖しています。
ウニの陸上養殖は、磯焼け対策の一環として大分県や青森県などで進められていますが、県内で行ってるのはこの会社だけです。

ウニは、10トンの水槽16基で最大2万個が育てられています。餌として与えるのは、自社の工場で加工する際に余ったコンブやワカメ、キャベツやレタスなどです。
ケーエスフーズ西條盛美社長「野菜類も、カット野菜工場から廃棄されているものをいただいて、それを冷蔵庫に保管しながら与えているということで、廃棄されているウニを廃棄されている野菜、海藻で育てていこうという考え方でやっています」

持続可能な養殖を

捨てられてしまうはずのウニを、捨てられてしまうはずの食材を使って生まれ変わらせる。目指すのは持続可能な養殖です。
半年ほどかけて養殖すると、身入りが出荷基準である15パーセントから20パーセント程度まで改善します。天然ものと遜色はありません。
ケーエスフーズ西條盛美社長「うまい具合に身が入りまして、これなら製品にできるということで」

陸上養殖で一番難しいのは、海の中と同じ水質や水温をどう作り出すかです。こちらの施設では、約200メートル離れた志津川湾からポンプで海水をくみ上げています。
コンピュータを使って、水槽内の水温や塩分濃度を24時間管理することで、陸上に海中と同じ環境を作り出すことに成功しました。

陸上で養殖したウニを出荷

陸上養殖を初めて3年。ケーエスフーズでは3月、県内で初めて陸上で養殖したウニを仙台の市場に出荷しました。
試食した人「おいしい」「天然物と変わらない甘くて、味が濃くておいしいです」

陸上養殖ウニを初出荷

天然ものとほぼ同じ1個400円で取引されました。ケーエスフーズでは、3月から6月と9月から年末の2回にわたって約3万個を出荷します。
ケーエスフーズ西條盛美社長「すごい評価をいただいたんですけど、ただ残念ながら出荷する数が足りなくて、皆さんからもっともっとって言われたんですけど。あとは数を増やすための努力をこれからしようと思います」

人件費のほか電気代がかかるため、年間10万個出荷しないと黒字化はできません。ケーエスフーズでは、2023年以降は養殖するウニの数を増やし、1年を通して出荷できる態勢を整えることにしています。

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