岡山県に甚大な被害を及ぼした2018年7月6日発生の西日本豪雨。この4年間に、川の流れをスムーズにする河川の付け替えや、決壊した10河川18カ所の堤防復旧・強化工事などが行われており、災害への備えが急ピッチで進む。来年度中には計画している全ての治水対策が完了する見込みだ。
一連の工事で最も大がかりなのが、倉敷市真備町地区を流れる小田川と、高梁川との合流点を下流に付け替える国の工事だ。豪雨時は、本流の高梁川が増水して支流の小田川から水が流れ込みにくくなる「バックウオーター現象」が起き、小田川やその支流の堤防が相次ぎ決壊。県内で戦後最大級の水害につながり、多くの命が失われた。
計画では、現在の合流点に向かう小田川の流れを東向きから南向きに変え、柳井原貯水池(同市船穂町柳井原)を通るバイパスを新設。約4.6キロ下流に新たな合流点を設ける。メイン工事はバイパスの通り道となる南山(標高67メートル)の掘削で、3月末時点で山頂から約60メートル掘り下げた。現在の合流点には一連の工事で掘削した土砂を使って堤防を整備し、二つの河川を分離する。
並行して新しい合流点周辺の河道掘削、貯水池付近の堤防の新設にも着手。貯水池と合流点の中間に架ける橋の建設は最後の仕上げに差しかかっている。付け替えは施工方法を見直すなどし、当初の予定を5年前倒しして23年度末完了が目標で、6月15日時点の進捗(しんちょく)率は63%となっている。
現在の合流点から上流の小田川の堤防幅を約5メートルから7メートルにする拡幅工事(約7.2キロ区間)は国と倉敷市が実施し、墓地の移転手続き中の一部区間と約20カ所の樋門(ひもん)の強化を除いて3月に完了。耐久性を高めたほか、堤防の上部は緊急車両の通行や避難時に活用できる市道として整備した。
合流点付け替えと堤防強化は「真備緊急治水対策プロジェクト」のハード整備の柱で、事業費は小田川の河道掘削も含め約332億円に上る。
このほか、県管理で真備町地区を流れる小田川3支流(末政川、高馬川、真谷川)の決壊箇所を原形復旧する工事は終わり、堤防拡幅などで機能強化を図る改良工事を残すのみとなっている。県はいずれも23年度中には終えたいとする。
末政川に架かる有井橋の架け替え工事も進められている。橋を従来より約3メートルかさ上げし、堤防が途切れた部分をつなぐ従前の構造から堤防の上を通過する形に変更し、増水時でも堤防より高い位置にある橋を利用してスムーズに避難できるようにする。途切れた部分にあり、豪雨時に機能しなかったことが堤防決壊の要因と指摘された門扉「陸閘(りっこう)」は廃止する。
国土交通省高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所の浜本堅太郎副所長(53)は「住民が安心して暮らせるよう、河川の付け替えや堤防の強化といった工事全般を滞りなく進めてきた。災害に強いまちを実現させるためにも、今後も工事への協力をお願いしたい」としている。