くらしき宵待ちGARDEN ~ 竹林が美しい、吉備の文化に触れる複合文化施設

倉敷美観地区の中心部に、美しい竹林があることを知っていますか?

「くらしき宵待ちGARDEN」は、竹林散策庭園・野外催事場・ミュージアム・フルーツパーラー・イタリアンレストランを有する複合施設。

芸術や食文化を通じて、倉敷を訪れる人に喜んでもらえるようにと願う、おもてなしの心にあふれた施設なのです。

いにしえから現代にかけての岡山の魅力に触れられる、くらしき宵待ちGARDENを紹介します。

くらしき宵待ちGARDENの概要

くらしき宵待ちGARDENは、岡山ならではのグルメや美術を堪能できる複合施設です。

以下の施設・お店を有しています。

  • 竹林散策庭園・野外催事場
  • きび美ミュージアム
  • パーラー果物小町
  • イタリア料理 星のヒカリ

「宵待ち」の名のとおり、庭園は夕方から夜の時間も楽しめる場所なのです。

しばらくの間、細い裏路地にのみ面していたので、「近くは何度も通ったことあるけれど知らなかった」という声も多いスポットでした。

2022年4月に、隣地に複合施設「倉敷SOLA」がオープン。
倉敷川沿いの道からも、倉敷SOLAみんげい広場を通ってくらしき宵待ちGARDENに行けるようになりました。

くらしき宵待ちGARDENの営業時間・定休日

くらしき宵待ちGARDENにある各施設の営業時間・定休日は、以下のとおりです。

利用料

以下については有料です。

  • きび美ミュージアムの入館
  • 竹林庭園の商用利用や団体利用 (プロモデルを使った撮影なども含む)
  • ホールやお茶室の利用

お茶室やミュージアムで婚礼前撮りなどの撮影も可能です。

金額や詳細な条件は施設に確認してください

庭園とガーデン席はペットとともに入れます。
ただし店内入場、日常のペットのお散歩はNGなので注意しましょう。
介助犬は店内入場可能です。

続いて、くらしき宵待ちGARDENの各施設/店を簡単に紹介します。

竹林散策庭園

倉敷美観地区の中心部にありながらも穏やかな、和の美しさを感じられる竹林庭園です。

井戸から湧いた小川からは水が流れる音が聞こえ、金魚が泳いでいました。
竹の足元には常緑多年草であるシャガを植えていて、5~6月ごろには白い花が咲くそうです。

歩くだけで優雅な気分になれることでしょう。

着物で歩くのもおすすめ!
倉敷美観地区周辺にはレンタル着物店が多いので、気軽に着物散策できますよ。

隣地と区切る壁は、造園時に伐採した竹を利用。
風情を邪魔せず馴染んでいます。

日没から午後10時30分まではライトアップされているので、宵から夜の時間を楽しんでください。

倉敷SOLA側の入口は、夜の時間帯に閉鎖しています。
果物小町のある路地側の入口を使ってください。(※取材時、暫定的に夜間閉鎖中、要確認)

野外催事場

竹林を臨む野外催事場では、音楽イベントなどが行われてきました。

2015年のオープニング記念コンサートでは、アコースティックギタリストの第一人者である押尾コータロー(おしお コータロー)さんが演奏!

他にも、フルート奏者の山野智子(やまの ともこ)さん、オペラ・テノールの征木和敬(まさき かずよし)さんらが美しい音楽を響かせました。

これまで、二胡・ジャズギター・琴・尺八などの演奏が行われたステージ。

竹の筒がパイプオルガンのように生音を乱反射させることで、音が柔らかく分散するのだとか。

押尾コータローさんも、竹林に入りながら演奏し、「やっぱりいい音がする」と言っていたのだそうです。

きび美ミュージアム

古代日本の四大王国のひとつだった「吉備国(きびのくに)」。
現代でも、岡山県から広島県東部の地域を「吉備」と呼ぶことがあります。

「きび美ミュージアム」は、吉備の美に出会うミュージアムです。

「吉備と出会う 吉備に恋する」をコンセプトに、ゆかりの先人たちが遺したさまざまな文化財を通じて、優れた技や知恵、美意識や世界観を今に伝えます。

2021年春に開館し、吉備の「刀・陶・書・画」をメインに企画展を開催。

車いす用の入口もあります。

企画によって、展示内容は変わります。
取材時は、「至純至高の筆妙 良寛」を開催中でした。

刀陶(とうとう)の間

刀陶の間には、埴輪や弥生土器など、古代の貴重な品が展示されています。

古代吉備の特徴的な遺物である特殊器台(とくしゅきだい)は、葬儀などに使われたもの。特殊器台の特徴がよく現れている円筒埴輪を見られます。

とくに、雉香炉(きじこうろ)の精巧な美しさは見事です。

雉香炉

翰墨(かんぼく)の間

江戸時代の作品を中心に、書作や日本画を展示しています。

きび美ミュージアムは、倉敷で修行した良寛(りょうかん)の書も多く所蔵しています。
夏目漱石(なつめ そうせき)もファンだったといわれる良寛さんの書は、素朴さが魅力。

解説も充実していました。

有彩(ゆうさい)の間

吉備ゆかりの、近現代の洋画を展示しています。

部屋の入口付近はウィリアム・モリスの壁紙で、カフェスペースの壁は漆喰にベンガラを混ぜて手塗りしたもの。
趣があり、優雅な気分になりました。

カフェもあり、竹林庭園を眺めながら一息つけます。

カフェメニューは、倉敷の老舗コーヒー店で焙煎したコーヒーと、岡山県産の高梁紅茶。

ウエッジウッドやオールドノリタケなど、貴重なアンティークカップのなかから好みのものを選んで使えるのも、うれしいポイントです。

小窓ギャラリーとミュージアムショップ

建物外壁には小窓ギャラリーがあり、小さな作品が展示されています。

桃太郎をテーマにした作品群など吉備文化を感じられる作品があるので、ぜひチェックしてください。

ミュージアムショップでは、備前焼のカップ・畳縁を使ったバッグ・ポストカードなどを購入できます。

きび美ホール

きび美ホール (画像提供:くらしき宵待ちGARDEN)

展示・講演・ワークショップなど多目的に利用できるホールです。

館長・副館長による文化講座も開催しています。

茶室 聴竹亭(ちょうちくてい)

琵琶床を備えた「松風楼(しょうふうろう)スタイル」と呼ばれる様式の茶室です。

竹林を臨む8畳の茶室と控えの間があり、心静かに過ごせることでしょう。

お茶会の開催もしています。
これまでには、江戸時代の四大書僧のひとり、寂厳(じゃくごん)の書を飾って鑑賞するお茶会などが行われました。

貸茶室としても利用できます。

パーラー果物小町

フレッシュな岡山県産果物が味わえるフルーツパーラーです。

ガーデン席で過ごすのは至福のひととき!
フルーツ王国岡山ならではの、季節のフルーツを楽しめます。

イチオシは、果汁がたっぷり入ったオリジナルソフトクリーム。

「旬の岡山県産フルーツを味わってもらう」ために、2年以上かけて開発したのが、パーラー果物小町のソフトクリームなのです。

旬の果物果汁を45パーセント以上配合し、着色料・香料は無添加。
岡山フルーツのおいしさをしっかり味わえる逸品です。

なお、倉敷美観地区入口にある「果物小町のソフトクリームパーラー」は姉妹店です。

イタリア料理 星のヒカリ

星のヒカリ料理 (画像提供:くらしき宵待ちGARDEN)

岡山・城下のイタリアンの名店、「リストランテ ステリーナ」の姉妹店です。

気軽なランチから、本格イタリアンのディナーまで。
瀬戸内の魚介と新鮮な野菜を使い、イタリアンに和のテイストを加えた料理に仕上げます。

オーナーが「この味なら」と惚れ込んだ、シェフの味。
店内の雰囲気もおしゃれで、彩り豊かな食事が楽しめることでしょう。

星のヒカリ店内 (画像提供:くらしき宵待ちGARDEN)

筆者がグルメな友人たちとランチに訪れたところ、友人も「お得で、目に美しく優しいお味」と絶賛していました!

地元食材の豊かさを堪能してください。
人気店なので予約がおすすめです。

どんな思いでできた場所なのでしょうか。
くらしき宵待ちGARDENを運営する、株式会社倉子城(くらしき)文化サロンの広報担当のかたに話を聞きました。

インタビュー

岡山の美術品や岡山の食文化に出会える、くらしき宵待ちGARDEN。

成り立ちや思いについて、株式会社倉子城文化サロンの広報担当のかたに話を聞きました。

くらしき宵待ちGARDENの成り立ち

──くらしき宵待ちGARDENの成り立ちを教えてください。

広報担当──

倉子城文化サロンのオーナーのお父様がこの土地を約40年前に買い取りました。

しばらく手つかずになっていたのですが、20年近く前にオーナーが、地域の美に触れられるミュージアムを建てたいと考えたんです。

ミュージアムのために財団ができ、この場所に人を集めるために「くらしき宵待ちGARDEN」を作ることにしました。

──つまり、きび美ミュージアムの計画が先にあったんですか?

広報担当──

そうなんですよ。

2015年に完了した「1期工事」でパーラーやレストランの入った木造2階建てを建設し竹林を整備して、きび美ミュージアムは「2期工事」で完成しました。

でも、2期工事の内容も最初から計画していたものです。

倉敷美観地区にある土地や建物は、持ち主が自由に工事できるわけではありません。
倉敷市が中心市街地活性化計画を立てていて、その計画順に沿って開発しています。

くらしき宵待ちGARDENも倉敷SOLAも、その計画に組み込まれた壮大なプロジェクトのなかのひとつなんです。

竹林について

──この土地に竹林があるのは、計画したものですか?

広報担当──

竹林庭園にするために植えたものではありません。
近隣の竹から根がやってきたのか、自然発生的にこの土地に竹が生えていたんです。

真ん中にある木も、わざわざ植えたものではなくて、鳥が落とした種から育ったものなんですよ。

昔は竹が1,500本くらい生えていて、ジャングルのように人が入れないほど茂っていました。
知る人ぞ知る、筍掘りスポットだったそうなんです。

倉敷美観地区は意外と緑地が少ないんですよね。
せっかく竹が青々と茂っていたので、竹を活かしてみんなが楽しめる庭にできないか、と考えて設計された庭です。

それでも計画当初は、2期工事で竹林をすべて潰そうと考えていたんです。
しかし、訪れるみなさんが竹林を喜んでくださったので、竹林を残して隅にミュージアムを建てる形に変更しました。

──竹林の維持管理のために、どのようなことをしていますか?

広報担当──

どんどん根が広がるので、通路などから生えてくるたけのこは処分しなければなりません。

春には、葉っぱがものすごい勢いで落ちてくるので、月4回ほど庭師やお掃除の人に入っていただいています。

風通しを良くしておかないと腐っていくので、古い竹や傷んだ竹もどんどん伐採して。

また、根が広がりはするんですが、メロンの皮模様のように網状に広がるため根が浅いんですね。

なので、台風のたびに何本も倒れたり折れたりします。その時も処分と手入れが必要です。

殺虫剤はできるだけ使いたくないので、最低限、蚊が葉っぱに止まりにくくなる防虫剤を撒いています。

芝も何度も植えかえているんですけど、頻繁に人が歩くので茂りませんね。

きび美ミュージアムと茶室

──きび美ミュージアムのコレクションはどうやって集められたのでしょうか?

広報担当──

オーナーのお父様が、「地元作家の作品を地元に残しておきたい」との思いで集められたものです。

そして今のオーナーが「集めた作品を一般公開できるように」と考え、きび美ミュージアムができました。

──茶室を作ったのはなぜですか?

広報担当──

文化財的なお茶道具をたくさん持っていたんですね。

お茶道具はすべて美術品です。
書を掛けてみなさんで鑑賞して、いわれだとか作家のことを知り楽しんだあとに、またお茶をゆっくりいただくようなお茶会を開きたいなと思いました。

実際にお茶会を開催しています。どういう美術品があるかお品書きみたいなものを準備して。みなさんお勉強もしながら楽しんでいただいています。

足が痛い人に向けてテーブルに椅子の席も用意していますよ。

「おもてなし」から生まれたパーラー果物小町

──パーラーを作ったのはなぜでしょう?

広報担当──

倉子城文化サロンのオーナーのおもてなしの心から始めたことです。

観光で岡山にいらっしゃったかたが、冬に来て「白桃はありますか?」っておっしゃるんですね。

そんなかたにも旬の白桃を味わっていただくために、苦節2年かけてシェフが開発したのが、白桃のソフトクリームです。
地元産の白桃の旬の果汁を45パーセント以上練り込んでいます。

実は世の中の「普通の」ソフトクリームには、果汁が1滴も入っていないソフトクリームが多いんです。

パーラー果物小町のソフトクリームは、着色料も香料も使わず、果物を丸かじりしたような鼻に抜ける香りと味わいを残しています。

企業秘密な部分があるので、宣伝したい部分が言えないもどかしさがあるんですけど。

旬でない時期に倉敷に来られたとしても、「清水白桃はこんなにおいしいんだ」と知っていただきたくて始めました。

「くらしき宵待ちGARDEN」の名前に込めた願い

画像提供:くらしき宵待ちGARDEN

──「くらしき宵待ちGARDEN」の名前の由来を教えてください

広報担当──

滞在型の倉敷観光を目指し、大人のかたが宵を楽しみに出かけられる場所にしたい、という思いからです。

まだ充分にはできていないのですが、夜を楽しめるよう、ライトアップなどに力を入れて。

観光の人も近所の人も夕食の後にお散歩していただけるいい場所にしたい、と願って作っています。

訪れたかたが、上質な楽しみやくつろぎ、「憩い」を感じてくださればうれしいです。

「くらしき宵待ちGARDEN」で上質なひとときを

おもてなしの気持ちから生まれたソフトクリーム、地域食材を活かしたイタリアン、地域のことを考えて集めた美術品と、美しい竹林庭園。

大人が落ち着いて過ごせる空間は、昼も夜も魅力的で、地域と人を思うあたたかい場所でもありました。

今後も、音楽イベントやお茶会やホールでの講演などの情報など、ぜひチェックしてみてください。

吉備の文化や美に触れ、心豊かなときを過ごせることでしょう。

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