今後数十年で異常干ばつが世界複数域で常態化、東京大学などが予測

国立環境研究所、東京大学、韓国科学技術院などの国際研究チームは、過去最大を超える干ばつが何年も継続して発生する時期、つまりこれまでの「異常」が常態化してしまう時期を世界で初めて推定した。

地球温暖化の影響による干ばつの将来的変化についての知見は、地球温暖化に対する長期的対策の検討に重要となる。特に水資源や農業、エネルギー分野では、従来の統計値や経験が適用できなくなる時期を把握する必要がある。気温や降水量に関しては、過去の観測値を上回るようになる時期を推定した研究例が多数あるが、河川水など地表にある水の干ばつについては、経験したことのない状態が何年も継続するようになる時期を特定した研究はなかった。

研究グループは、数値モデルを用いて河川流量の全球将来予測データ(全球59地域)を解析し、干ばつが発生する頻度を調査。その結果、地中海沿岸域や南米南部など特定の地域では、今世紀の前半もしくは半ば頃までに、過去最大の干ばつを少なくとも5年以上継続して超える時期を迎え、「これまでの異常」が珍しくなくなる可能性が高いことが分かった。

また、温室効果ガスの排出削減を強く進めた場合でも、今後数十年のうちにそのような記録超えが常態的になる地域が複数あると見られる(南米南西部、地中海ヨーロッパ、北アフリカなど)。一方、温室効果ガスの排出削減を進めて脱炭素社会を実現すれば、継続的な記録超えを迎える時期が遅くなるか、継続時間が短くなることも示された。

これらの結果により、脱炭素社会の実現に向けた緩和策推進の重要性とともに、特定の地域では今後数十年程度の間に適応策を効率的かつ迅速に進める必要があるとしている。

論文情報:

【Nature Communications】The timing of unprecedented hydrological drought under climate change

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