足尾でホタル舞う 鉱毒事件の印象一新 住民から感動の声

ビオトープで舞うホタルの光跡

 【日光】かつて足尾銅山を操業した古河機械金属が、地元の活性化や生物多様性の推進などのため、足尾町の花の渡良瀬公園の隣にビオトープを整備した。近くの沢から水を引き入れ、ホタルの幼虫を放流したところ、6月下旬にホタルが舞い始めた。長年、足尾ではホタルがほとんど見られなかったため、住民からは「足尾で初めて見た」などと感動の声が上がっている。

 同社は昨年、住民が集い、子どもの環境学習の場となるよう、所有地644平方メートルをビオトープとして整備した。獣害対策のためフェンスで囲い、花壇や池を設置。地元で珍しいホタルを育てようと、池には餌となるカワニナを放した。

 今春、カワニナの定着が見られることを確認。ゲンジボタルとヘイケボタルの幼虫約300匹を放流したところ、6月下旬にホタルが飛び始めた。今週いっぱいは楽しめるといい、社員が夜間にフェンスを開けて住民に開放している。

 4日夜は、30匹ほどのホタルが舞い、住民たちが見物に訪れた。足尾でホタルが見られる場所はほとんどなかったため、訪れた人は食い入るように見入った。足尾町向原、藤井豊(ふじいゆたか)さん(74)は「かつての鉱毒事件の歴史はあるが、ホタルが育つということは水がきれいだからだと思う。もっと増えて地域がより盛り上がってほしい」と話した。

 すぐ隣の同公園は、春になると桜が咲く。同社はビオトープの花壇に花を植えるなどし、ホタルの季節以外でも四季を感じられる場所づくりを目指している。

 同社足尾事業所の山崎義宏(やまざきよしひろ)所長(60)は「地域の一体感を醸成し、子どもたちが将来、古里の良い思い出となる場所になれば」と話している。

 

古河機械金属が整備したビオトープ

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