<社説>参院選・沖縄振興 経済構造の変革必要だ

 沖縄の施政権返還(日本復帰)から50年を迎え、社会資本の整備は進んだ。だが1人当たり県民所得は全国最下位で、子どもの貧困率は全国の2倍など課題は山積する。 高い財政依存体質から脱却して自立的な経済構造に変えていくためには何が必要か。参院選では沖縄振興策の在り方が問われている。

 2018年度の県民所得は全国平均の74.8%。復帰時に比べ約15ポイント縮まったが、全国の8割に届かない。島嶼(しょ)県ゆえの高コスト体質の上、非正規雇用率が高く労働生産性が全国最下位にとどまる。

 沖縄振興に向けて政府が予算や制度などを担保する第6次沖縄振興計画(沖振計)が本年度から開始した。振計はこれまで第5次、50年間続き約13兆円の振興事業費が投入された。自立経済を目指したものの逆に財政に依存する経済構造に陥っている。

 大阪市立大学の宮本憲一名誉教授は「復帰から50年を経てもまだ国主導の振興法が必要というのは異常だ。内発的発展が弱く国の財政政策に依存していることを県も企業も深刻に考えないといけない」と指摘する。

 沖縄選挙区で事実上の一騎打ちを繰り広げる伊波洋一氏と古謝玄太氏に、本紙が振計の仕組みを続けるべきかどうか質問した。

 伊波氏は全国平均よりも低い県民所得や全国の2倍に上る子どもの貧困率を挙げて、当面の継続は必要だとの認識を示した。

 古謝氏は沖縄の特殊事情の変化を見ながら全国並みの予算や制度への移行も視野に入れる必要があると回答した。

 自立を阻む主要因は「ザル経済」だ。県内で発生した所得が外に流れ出てしまう。大城肇琉球大名誉教授が13年の数値を基に算出したところ、地域経済の自立度を表す県内の「地域経済循環率」は78.8%で、47都道府県で下から4番目だった。所得の2~3割が域外に流出しており、公共事業で沖縄に投じられた資金も4割が県外企業に環流している。観光収入も多くが県外・海外資本に流出しているといわれる。

 では「ザル」経済から脱却するにはどうするか。

 伊波氏は、持続可能な自立型経済の構築に向けて、DX化とイノベーション(技術革新)による産業振興に取り組むと主張する。他方で、沖縄振興予算が県外企業に還流する「ザル経済」を改善するため、国の公共調達の入札改革などによる県内企業の事業参入促進を図るとする。

 古謝氏は、「新5K経済(観光、健康、環境、海洋、起業)」を促進すると訴える。各産業のDX化推進のための人材育成・デジタル投資促進や起業環境を整備する「スタートアップアイランド構想」を掲げている。

 新型コロナウイルスの感染拡大で沖縄経済が疲弊している今、県内経済の構造改革は待ったなしだ。

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