ヤフコメ閉鎖が提示する現代社会の縮図…誹謗中傷と言論の自由のバランスとは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、“ヤフコメ閉鎖”についてZ世代の論客が議論しました。

◆悪質な書き込みによりヤフコメ閉鎖…世間は賛否両論

IT大手のYahoo!が「Yahoo!ニュース」のコメント欄・ヤフコメを契約3社の記事で閉鎖。Yahoo!は、これまで誹謗中傷などの対策を行ってきましたが、特定の社を対象とした理由については明らかにしていません。

なお、ネットの誹謗中傷を巡っては、先日、侮辱罪の厳罰化を盛り込んだ改正刑法が成立するなど対策が進められています。

Yahoo!の措置に対し、街頭からは「書かれた本人だけじゃなく、読んで傷つく人、流されてしまう人もいる。いいことだけじゃないので封鎖したほうがいい」(22歳 女性)、「コメントは自由に書く場だが、誹謗中傷する場ではないので撤廃すべき」(20歳 男性)、「そのニュースに対する他人の意見でわかることもあるので残したほうがいい」(17歳 男性)、「誹謗中傷だけブロック・削除すればいい。情報交換、お互いの意見を尊重し合える場になれば」(22歳 男性)など賛否両論、さまざまな意見がありました。

慶應ビジネススクール2年(MBA)の池田颯さんは、「人格ではなく意見を」と主張。なぜなら、1日中議論をするビジネススクールで最初に教わるのが「意見は否定してもいいが、人格は絶対に否定してはいけない」ということだから。「その記事について言うのはいいが、当事者の人格を否定するのは全く違うということを意識しなければいけない」と言及。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんも、「私もデンマークで受けた政治の授業の最初にそれを言われた」と池田さんに同意。その上で、意見と人格の違いに関しては「冷静になったときに、それを言っている人の顔が変わったとしても同じことが言えていれば"意見”。でも、それがその人に紐づいてしまっていたら"人格”に繋がる」とし、「自分はこの人を嫌いになろうとしていないか立ち止まって考えることはある」と自身の経験談を明かします。

一方、株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは「物事の背景や人格と、そこにある事象は切り分けて考える必要がある」と指摘。そして、円滑なコミュニケーションを育むためにも「人格ありきで発言があるなかで、発言だけを戦わせることはいいが、背景や人格はリスペクトした上でその発言に向き合うべき」と言います。

この意見に対し、キャスターの堀潤は「人格と背景と発言は、それぞれ切り離せないのではないかと思ってしまうところがあるからこそ、この議論が難しくなっているのかなとも思う」とも。

◆コメント欄がヘイトやフェイクの温床に!?

能條さんはコメント欄廃止に対して否定的で「不適切なものだけが表示されないようになれば」と望んでいましたが、専門家である法政大学メディア社会学科の藤代教授は「AIや人の手でコントロールしていたが結局それができなかった。制御できていないんだから、(コメント欄は)やめるという選択肢が合理的なのではないか」と自身の見解を述べます。

その上で「もし残すのであれば人間の目をもっと入れてヘイトやフェイクなどが書き込まれないようにしなければいけない」と注意を促し、「書き込まれたら削除するなどの作業が必要で、その際はどういう方針でコメントを編集しているのか開示する必要がある」と指摘しました。

こうした藤代教授の意見に、池田さんは「これはとても難しい問題」と頭を悩ませます。というのも、既存の新聞などでも意見を選別して載せているように感じ、「一概にネットのコメントだけがおかしいというのもまた違うと思う」と意見します。

また、記事を掲載するプラットフォーマーのありようについて、能條さんは「プラットフォーマーはコメント欄を掲載することで利益を得ているのだから、コストを払い、維持する必要がある」と持論を展開。そして、ヘイト・フェイクの温床になる可能性があるから閉鎖すべきという藤代教授の意見に対しては「そこは立ち止まって、維持できる方法がないか考えたい」と話し、より良い形でのコメント欄継続を希望します。

◆小学生を批判する大人が蔓延る今の日本

つい先日もネットのコメント欄が話題になった事象がありました。それは、小学生が開発した重いランドセルをキャリケースのように運ぶ「さんぽセル」に関してで、これに大人たちから1,000件以上の批判が殺到。

なかには「開発した人は子どものことをよくわかっていない」という大人の意見に対し、「いま小学5年生です。子どものことよくわかってなかったらごめんなさい」という子どもからの返信や、大人からの「ランドセルは後ろに転んだとき、頭を打たないためにあるってことを知らない人多いよね」という声に、子どもが「そもそもランドセルが重いから後ろに転ぶんじゃん!」と返すなどのやり取りも。

これに堀は「こうして議論しているところが民主主義。こういうことが言える環境、子どもたちも議論に加わっているのはすごくいい」と喜ぶと、古井さんも「素晴らしい体験。必ずしも権威が正しいわけではないことに繋がる」と手放しで絶賛。

そんな2人に対し、能條さんは「本当に良い体験なのか」と疑問視。「学校の先生など顔を知っていて背景がわかる人たちから言われるのと、顔もわからない、知らない大人から言われるコメントは全然違う」と真っ向反論。そして、「コメントをしている大人たちは民主主義を表しているのかもしれないが、私には悪口を書いているようにしか見えないというか、もう少し楽しく生きていたら、きっとこんなことを小学生に言わずに済むと思ってしまうくらい、この発言をしている大人たちの背景が気になる」と書き込みをしている大人を案じます。

池田さんも能條さんに賛同。さらには、このコメント欄には人格を否定するような意見が多かったことを嘆くと、能條さんも「本当に酷かったので、大人が子どもに向ける視線がこんなものなのかというのもあったし、それが今の社会を表しているのかもしれないと思うと……」と残念そうに話しました。

最後に、Z議会を代表して古井さんが「ヘイトやフェイクも犯罪になることも」、「犯罪を別の表現で誤魔化さないことが大事では」と提言を発表。誹謗中傷と議論は違い、人を貶めるような意見は、犯罪としてしっかり取り締まるべきと主張します。

能條さんは、現在は請求すれば誰が書いているのか開示することができ、匿名性を排除することができるものの、そこには多くのコストがかかるなど当事者の負担が大きいため、「もう少し上手く使いこなす方法があると思う。いかにして言論の自由を守っていくのか考えたい」と最後まで意見・議論の場の必要性を訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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