参院選長崎 比例の戦い 自公/協力で不協和音 野党/党勢維持に懸命

河野氏(手前右)とアーケードの中を一緒に練り歩く吉岡候補(右端)=佐世保市

 終盤を迎えた参院選。長崎県内では長崎選挙区の6人の候補だけでなく、各党県連が全国で50議席を争う比例代表の票獲得へ火花を散らしている。連立政権を組む自民、公明からは選挙協力を巡り不協和音が聞かれ、野党も党勢維持に向け支持拡大に懸命だ。
 3日午後、佐世保市中心部のアーケードの入り口付近に公明の県議、市議2人の姿があった。この日、選挙区の自民・山本啓介候補(47)の応援で党広報本部長の河野太郎氏が来県。山本、河野両氏がアーケードを練り歩く「桃太郎作戦」についていき、公明の比例候補、窪田哲也候補(56)をPRするビラを商店主らに配る予定だった。
 同じころ、そばの公園では自民の比例候補で全国保育推進連盟幹事長の吉岡伸太郎候補(50)=諫早市出身=が街頭演説を始めた。そこに山本、河野両氏が飛び入り参加し、吉岡氏への支持を訴えた。公明の議員たちは遠くからその様子を見つめ、不快そうな表情を浮かべていた。
 この後、山本氏が「桃太郎」を始めると吉岡氏も同行。知名度抜群の河野氏のそばでアピールを続けた。公明の議員たちは「マナー違反だ」と怒りを隠さず立ち去った。自民関係者によると、吉岡氏が同行する予定はなかったといい、「(佐世保市を含む)衆院長崎4区では公明と協力して戦ってきた経緯がある。吉岡氏にはわれわれの立場をもう少し考えてほしかった」と困惑していた。
 自民は今回、吉岡氏を含む33人を比例に擁立。ある自民県議は「公明は連立政権のパートナーだが(比例候補を抱える自民の)職域団体も大事にせざるを得ない」と話す。
 県選管によると、3年前の前回、自民が県内で獲得した比例票は約21万票。このうち候補名が記入されていたのは約7万票で、残りの約14万票には党名が書かれていた。山本氏らは集会などでこうした事実を紹介し、職域団体と公明支持者双方にこの「14万票」を狙うよう訴えバランスを取る。さらに自民の組織内候補がいない漁協関係者を公明に紹介するなど「できる限りの協力はしている」(別の自民県議)という。
 これに対し、公明県議は「比例票の出方次第で来春の統一地方選や今後の国政選挙の協力に影響が出る可能性もある」とけん制する。

 「2枚目の投票用紙(比例)には国民民主党を」-。先月28日夕、国民県連代表の西岡秀子衆院議員(長崎1区)らが長崎市内の国道沿いを歩きながら、支持を訴えていた。比例の選挙カーが県内に入るのは3日間だけ。それ以外は公選法の規定でマイクが使えず、メガホンを手に声を張り上げている。昨年秋の衆院選で獲得した比例票5万3700票が目標。ただ、国民系の三菱重工労組をはじめとする基幹労連は今回、立憲民主から比例に出馬している組織内候補の支援に回る。国民は比例の現有4議席死守を掲げるが、県連幹部は「厳しい戦いだ」と危機感を募らせる。
 一方、社民は政党として生き残るためには比例得票率2%以上が必要で、正念場が続いている。県連は昨秋の衆院選の比例票を上回る1万7千票を目標とし、党公認の元広島市長、秋葉忠利候補(79)が長崎市内で集会を開くなどして票を掘り起こす。ただ党員減と高齢化は否めず、街頭活動は年々厳しくなっている。県連幹部は「支持層を確実に固め、灯を守らなければ」と悲壮感を漂わせる。


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