空振り、見逃し

 野球の三振には、振ったバットが空(くう)を切る「空振り」と、振らない、振れないままの「見逃し」がある。思い切り振ったが、かすりもしない。当てようにも手が出ない。大リーグの大谷翔平投手が三振を奪った時のガッツポーズには毎度しびれる▲奪われた方は悔しいばかりだが、では、打者ではなくて、雲の動きを予測する立場ならばどうだろう。気象庁は6月から、局地的な大雨をもたらす「線状降水帯」の半日前予報を始めた。これにも「空振り」と「見逃し」がある▲予測が外れる「空振り」は2回に1回、予測していないのに発生する「見逃し」は3回に2回あるという。先ごろの台風4号では、高知県の空で発生し、何十棟も浸水したが、これを見逃した▲進路も勢力も変わる台風が絡んだために、ただでさえ難しい予測がますます…ということらしい。打率、いや、的中率はなんともおぼつかないが、ただ「悔しい」で済むはずがない▲言うまでもなく、事は人命に直結する。大雨が見込まれるようなら、半日前予報があってもなくても身を守る行動を。心構えはどうぞ緩めずに▲予報が空振りならばそれで良し。かねて語られてきた避難の心得だが、見逃しも数あるようでは心もとない。予見できない大雨に人智がまだまだ及ばないのは、どうにも悔しい。(徹)

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