転職活動で「面接は数撃ちゃ当たる」は通用しない?新卒と中途採用の違いとは

転職活動をしているとよく耳にする「面接は数撃ちゃ当たる」「やりたいことが大事」というのは本当なのでしょうか?

作家で外資系大手IT企業の現役企画部長の安斎 響市( @AnzaiKyo1 )氏の著書『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)より、一部を抜粋・編集して転職のためのヒントを紹介します。


早く転職したいなら、「短期集中」が必須

転職活動の際は、「職場に迷惑がかかる」などとは考えないのが鉄則です。

自分が退職することによって会社に迷惑がかかるのは、当たり前のことです。

これは優先順位の問題で、「今の会社」と「次の会社」のどちらが大事なのか、という話なので、決して避けては通れません。

たまに、「自分がいないと会社が回らない」と言って、職場に気を遣って転職に踏み切れない人がいますが、あなたがいなくても会社は余裕で回るので気にしなくて大丈夫です。

退職して半年もすれば、同僚たちはあなたのことをほとんど忘れることでしょう。

少し寂しい気もしますが、会社とはそういうものです。

本気で転職を成功させたいのであれば、「転職活動」と「現職の仕事」を同時に完璧に両立させることは不可能、という認識は必要です。

例えば、転職エージェントとの面談や企業の面接のために有給休暇を取得する、最低限の仕事だけ片付けたら定時退社して企業研究の時間を確保するなど、転職活動を進めるうえでは、ある程度は現職の仕事を犠牲にしないといけません。

ここで仕事の都合を優先して、時間がないからと熟考せずに応募企業を決めたり、面接前の準備で手を抜いたりすると、転職活動は高確率で失敗し、長期化してしまいます。

片手間で適当にやっていると、いつまでも内定が出ないので、転職活動をしている意味さえなくなってきます。

大手転職サイトには「転職活動の期間は一般的に3カ月~6カ月程度」と書かれていますが、これはあくまで「内定を獲得できた人たち」の話であって、実際には、その裏に無数の「半年~1年以上転職活動を続けたけれど内定が出なくてあきらめた人たち」がいます。3カ月あれば内定が出るだろう、という考えでは甘いのです。

転職活動には、できる限りの時間と労力を注いで「短期集中」で内定を取りにいくのが、結局は「最も職場に迷惑がかからない方法」です。転職活動が長引けば長引くほど、現職の仕事に集中しきれない期間が続いてしまうわけですから。

ちなみに、転職活動と現職の仕事の両立は難しいから、一度仕事を辞めてから転職活動をしよう、という考えの人もいますが、これは完全にNGです。

在職中に転職活動をして、「内定が決まってから会社に退職届を出す」のが、転職活動での失敗を避けるための最低限の心構えです。

自分のキャリアをコントロールする

社員が数十名の小規模な会社や、ベンチャー企業などを除き、ほとんどの会社には「人事異動」「転勤」があります。会社は、これらの制度について「ジョブローテーションによって複数の職種を経験させ、経営幹部候補となり得るジェネラリストを育てる」などと説明します。

しかし、実際には、ジョブローテーションとは、社内の「穴」を塞ぐための会社都合の措置に過ぎません。そして、はっきり言ってしまえば、ジェネラリストとは「特にこれといって何も強みがない人」とほとんど同義です。

多くの会社では、新卒一括採用・終身雇用が未だに主流で、中途採用で積極的に社外からの人材獲得をせず、「社内の人材プール」から組織全体のニーズを充足させようとするから、個人のキャリアを無視してコロコロ職種を変えさせたり、数年おきに転勤を命じたり、という無理が生じてしまうのです。

また、このお話に出てきた通り、会社全体の人件費を減らすなど「裏の目的」のために、見かけ上の「組織変更」をするというケースも、決して珍しくはありません。

そして、もっと恐ろしいのが、人事異動や組織変更を、「社員を辞めさせる手段」「問題を起こした社員を反省させる手段」として使う会社が、現実に多くあることです。

名作ドラマ『半沢直樹』でも度々登場する光景ですが、日本の老舗企業の場合、問題を起こした社員は、クビになるのではなく、地方子会社などに「出向」させられます。もしくは、「辞めさせたい社員」をあえて本人の希望と真逆の部署に異動させて、強引に退職に追い込む、ということもあります。

「事実は小説より奇なり」というように、「こんなに理不尽な異動があるのか。これじゃ、『辞めろ』と言っているのと同じではないか……」と、周りの同僚の理不尽な人事異動に驚かされた経験が、私にも何度もあります。

会社に「忠誠」を誓って、会社に指示されるがままに人生を送っても構わない、と言えるだけの「愛社精神」や「会社への強い信頼」がある人はそれでもいいと思います。

しかし、そうでないのなら、納得のできないことにははっきりと「NO」の意思表示をしないといけません。

会社に忠誠を誓い人生を預けても、会社側は、将来あなたのことを平気で捨てる可能性もあります。会社都合のジョブローテーションに黙って従っていると、5年後、10年後にはすっかり競争力のない弱い人材になってしまうかもしれません。

自分のキャリアの方向性は、しっかりと自分でコントロールしましょう。

望まない人事異動を言い渡され、どうしても拒否できない場合は、「転職」でキャリアの方向性を取り戻すという手段もあります。

面接に「数撃ちゃ当たる」は通用しない

はじめての転職活動では、最初から「自分目線」だけで応募企業を絞りすぎず、たくさんの求人に目を通すのが大事です。

しかし、勘違いしてはいけないのは、転職は「数を撃てば当たる」ものではないということです。熟考なしに、「数」を追ってはいけません。

多くの求人票の中から、自分に狙えそうなものを吟味するプロセスは重要ですが、片っ端から何にでも応募すればいいわけではありません。

中途採用の求人には、明確な「採用条件」や「必要とされる経験」があります。明らかに見込みのない求人に、何十件、何百件応募しても、恐らく内定が出ることはありません。

一方、適当に応募してもあっさり内定が出てしまう会社というのは、「社員が次々に離職していて、誰でもいいから採用したい」というブラック企業である可能性が高いです。

転職エージェントの中には、「とにかく20社応募しましょう」「書類通過率は2~3割程度なので、とりあえず数で勝負するのが基本ですよ」などと言う人もいます(私も実際に言われたことがあります)。

しかし、数で勝負して、たまたま当たった会社が、本当に自分の望むキャリアを実現できる場所なのでしょうか?

もし、転職の意思がそれほど強くはなく、「内定は出なくてもいいから、とりあえず面接ってどんな感じか受けてみたい」など、軽い気持ちであれば、それでもいいのかもしれません。

しかし、転職をできるだけ早い段階で決めたいという本気の意思があるのであれば、「もし内定が出て、条件が合致した場合には、ぜひ入社したい」と強く思える企業以外には、はじめから書類を送らない方がいいです。

新卒の就活とはちがって、中途採用の転職活動では、たくさんの会社を同時に受けるのは悪手でしかありません。軽い気持ちで面接を受けて、あっさり落ちたり、途中で選考を辞退したりしてしまうと、転職エージェントからも「この人は見込みがない」と思われて、いい案件を紹介されなくなってしまうこともあります。

時間や労力を無駄にしないためにも、応募企業は慎重に選びましょう。

「やりたいこと」なんて、別になくてもいい

たまに、「転職を考えているけれど、特にやりたいことは何もない」と悩む人がいます。

何か特別な「やりたいこと」がないと、転職はできないのでしょうか?

私は、そうは思いません。転職を考える理由は、「今いる、嫌な環境から逃げたい」でも別にいいし、「年収を上げたい」でも構いません。

ほとんどの人にとって、本音はそんなものだと思います。

転職活動を始める時、「やりたいこと」がはじめから明確に決まっている人の方が、実は少ないのではないでしょうか。

具体的に「やりたい仕事」がなくても、「手に入れたい環境」「なりたい自分」は、誰だって何となくはあるはずです(それさえも何も思い浮かばないのであれば、今いる場所が十分に幸せだということなので、転職をする必要はないと思います)。

「残業が少ない会社に行きたい」「人間関係が良好で、上司が職場で怒鳴ったりしない環境に行きたい」「リモートワークで働きたい」「年収1000万円以上稼ぎたい」など、何でもいいのです。ある意味、それが、あなたの「やりたいこと」です。

でも、その場合、どうやって職種や業種を選んだらいいの? と思う人もいるでしょう。

業界やポジションにこだわりがない場合は、求める諸々の条件を満たしつつ、「自分の過去の経験や所有スキルで現実的に狙えそうなポジション」を探せばいいと思います。

そして、「自分には特に何のスキルもない」と、あまり深刻に悩むのもやめましょう。

ほとんどの人には、そんなに超強力なスキルはありません。

しかし、過去3年、5年と積み重ねてきた仕事の中には、「売りになるもの」がきっとあります。今まで真剣に仕事に取り組んできた人であれば、転職活動では、必ずどこかに「評価してくれる人」がいます。

それを見つけに行く前に、「自分には何もない」とネガティブな思考になっても、何もいいことはありません。

今の時点で「転職できる自信」がないとしても、同時に、「転職できない根拠」も、これといって何もないのだから、必要以上に気にしない方がいいです。

転職できるかどうかは、やってみないとわかりません。

自分の過去の経験・スキルを生かした、具体的な「求人の探し方」は、この先の物語の中で書いていきます。

安斎 響市 著

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