参院選兵庫選挙区「熱気はどこに?」(オフィス・シュンキ)

第26回参議院議員通常選挙は7月10日に投開票が行われます。6月22日に公示され、18日間の選挙戦ですが、過去最多の13人が立候補した兵庫選挙区の模様を、都道府県議会議員の経験を持ち、党員資格も含め現在、どこにも所属していない一人の有権者、という立場で歩いてみました。

参院選兵庫選挙区の立候補者(届出順)西村しのぶ(59)参政党
片山大介(55)日本維新の会
木原くにや(38)無所属
稲垣ひでや(53)新党くにもり
速水はじめ(37)NHK党
伊藤たかえ(54)公明党
里村英一(61)幸福実現党
黒田秀高(75)維新政党・新風
末松信介(66)自由民主党
山崎あい子(37)NHK党
相崎佐和子(49)立憲民主党
中曽ちづ子(60)NHK党
こむら潤(46)日本共産党

13人全員のポスターは

まずは公設の掲示板。私は神戸市在住ですが、今回、兵庫選挙区に立候補している13人全員のポスターがそろっている掲示板をはじめて目にしたのは7月3日。住まいでない区の神戸市中央区・JR元町駅高架下でみたのですが、投票日まで残り一週間。いたるところで掲示板を注視してきてやっとでした。

私の住居のある地区はどうか?報道でも阪神淡路大震災からの復興モデルとして取り上げられる機会の多い神戸市長田区の新長田再開発地区にある掲示板は、元町駅で完成版の掲示板を目撃する前夜、貼られていたのが9人分。4人の方は選挙終盤戦に入っても政令指定都市でのポスター貼りが完了していませんでした。つまり街中に、歯抜けのような掲示板が散在しているのが選挙終盤での兵庫選挙区の実態でした。

熱気は一部だけ?

「熱気はあるけど一部だけだなあ」―これが、兵庫選挙区を2週間近く注視しての印象でした。今回の選挙。私の注目は、全員立候補している現職3人(自民党・公明党・日本維新の会)の所属する国政政党のうち、昨年行われた衆議院選挙で県内比例票が約29万票と、今回の当選ラインといわれる約50万票に全く届いていなかった公明党の戦い方でした。同時に、公明党の対抗馬と目されていた立憲民主党の戦い方にもいやでも注意がいきます。

公示日の22日。公明党と立憲民主党がニアミスとなった現場に立ち会いました。神戸市中央区の大手百貨店「大丸」の前です。

先に演説を行ったのは立憲民主党。候補者は、見守る有権者らよりほんの少し高い位置から話を始めました。写真撮影も同時に行う私は後方に位置したのですが、ほとんど候補者が見えません。しかし、声だけは明瞭に響いていました。「これまで(県議および市議の経験あり)どの選挙を戦った時にも言ってこなかったのですが、仕事の契約を切られた(雇い止め)が私の原点です」と政党とは直接関係ないことが聞こえてきました。政党よりも個人に立ち返ってが、今回の戦い方なのかな、と思ったのは事実です。

そして、すぐあと。そこから歩いて1分もいかない位置で、公明党の候補の演説が始まりました。こちらの立候補者は今の内外の状況についてから始めました。「ウクライナへのロシアの侵略は絶対に許すことができない。そのひとつが物価の高騰。まずはガソリン代」と、政府与党を担う政党らしい話から入りました。そして、同じ壇上に上がった前大臣の衆議院議員が「状況は厳しい。(当選の)圏外に我々はいる」と集まった聴衆に危機感を煽るような演説を行いました。

公明党候補は6年前の選挙で54万票余りを獲得して自民党候補に次いで2位当選しています。しかし、今回は、3年前の参議院選挙で自民党候補が3位で公明党候補が2位となったことのしこりなどで、国会で連立与党を組む自民党との相互推薦決定が遅れる形となり、序盤の情勢では3番手争いとみられているのです。そして、おそらく支持母体の創価学会の動員もあったであろう「大丸前」は真剣に聴き入る聴衆であふれていたのも確かでした。それは、立憲民主党の候補者が一般人の目線で真剣に「個人の思い」を訴えている間、演説より、扇子で自分の顔付近をあおぐのに必死に見えた所属議員の存在に、私が気を取られた場とは対照的に映りました。

今回の序盤報道で優位とされた自民党と日本維新の会。自民党候補は兵庫県知事、神戸市長も駆け付ける中で「国を守る。国民を守るんです」と国防から教育の話へと展開する第一声。日本維新の会の候補は「不都合なことでも、しっかり情報公開してみなさんの審判を仰ぐのが我々です」と党の特徴を述べる第一声でした。

日本維新の会は、県内の尼崎市で所属していた地方議員の「政務活動費」をめぐる不正疑惑が取り沙汰されており、立候補者の第一声にもかかわらず「皆さんの期待を裏切って申し訳ない」と謝罪を後日、尼崎市入りした松井一郎党代表がいきなり述べるなど、身内の不祥事が昨秋の衆議院議員選挙での躍進に影を落とす戦い方になっているのも間違いありません。にもかかわらず、トップ当選となった3年前の参院選よりも余裕が感じられたのも確かでした。

それ以外の政党候補。私の目に留まったのは「参政党」と「NHK党」でした。参政党は「(掲示板の)1番を取った。風が吹いてきているとしか思えません」の候補者の第一声に始まり、その後も日増しにJR元町駅東口近くに構える事務所近辺などでの演説に人だかりが出来、通行している方が足を止めていくのが目立ちます。そして、「NHK党」。こちらも同じ場所での公示日第一声でしたが、その現場取材にNHK神戸放送局が登場し、他の報道陣を圧倒しているように見えたのが印象的でした。

NHK神戸放送局は、5月に知床遊覧船事故報道のことで、兵庫県警記者クラブから除名処分を受けたばかり。政治は警察とは所属記者クラブが違うとはいえ、他の記者クラブ所属報道機関がいる中で堂々とはすごい、と思ったのでNHKの方に聞いてみました。「除名処分のことは影響していないのですか?」と。答えは「私たち(現場記者・カメラマン)が答えることではないです」でした。ちなみに、そのやり取りのてん末も含め、「NHK党」の立候補者にその場で聞いてみたところ「え?NHKの記者クラブ除名って?知りませんでした!」と。いや、まあ、そんなもんかいな、「NHK党」さん。

 局地的な熱気がどう兵庫県民に広がったのか、どうか?結果はもうすぐ下されます。

 (オフィス・シュンキ)

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