【18歳選挙権】都道府県別10代有権者の投票動向(原口和徳)

6月22日公示、7月10日投開票の日程で参議院議員選挙が行われています。

18歳選挙権が導入されてから5回目の国政選挙となりますが、18歳選挙権の導入により、若い世代の意見を国や地方の政治に反映できるようになってきたのでしょうか。

総務省「年齢別投票率調」を使用して、直近の国政選挙であった衆議院議員総選挙を題材に10代を中心とした若者の投票状況とそこに見える課題を都道県単位で確認してみましょう。

10代有権者が最も投票したのは京都府

図表1では、10代有権者の投票率を基準に全都道府県をランキングしています。

図表1_衆院選(2021年)における10代投票率

10代有権者の投票率を高い方から順に並べてみると、京都府(62.30%)、埼玉県(58.99%)、東京都(55.86%)、青森県(55.05%)、新潟県(53.48%)となります。

一方、投票率が低かったのは、低い方から順に島根県(28.17%)、宮崎県(30.41%)、岩手県(31.63%)、山口県(33.08%)、茨城県(33.63%)となっています。

18歳有権者の投票率が最も高かった埼玉県は、知事選挙の投票率ワースト記録をもち、ワースト5の内3つを記録するなど、しばしば低投票率で話題になる県です。同様に19歳投票率及び10代投票率がトップの京都府も中心地である京都市が指定都市市長選挙の投票率ワースト1、2の記録を持っています。

明るい選挙推進協会が行った意識調査では、18歳~29歳の有権者で投票を棄権した人のうち20%の人が「政党の政策や候補者の人物像など、違いがよくわからなかったから」を、15.6%の人が「政治のことがわからない者は投票しない方がいいと思ったから」を棄権理由として挙げているように、政治参加の技術を学ぶことは若者の政治参加を実現する上で重要視されるポイントです。(出所:明るい選挙推進協会「第49回衆議院議員総選挙全国意識調査」 設問の回答は複数回答制)

「地方自治は民主主義の学校」と言われることもありますが、国政選挙と地方自治体の選挙の投票状況の違いからは、政治参加の方法、技術を学ぶ場への若者の参加をいかにデザインしていくかという課題も浮き彫りになっています。

18歳投票率が10%以上減少した県もあります

過去の衆議院議員選挙での順位も確認してみましょう。

図表2_衆院選(2021年)における10代投票率

2017年衆院選での10代投票率ベスト5のうちで、2021年もベスト5に残っているのは埼玉県と三重県です。投票率上位の都道府県は入れ替わりが激しく、2021年に10代と19歳で投票率トップとなった京都府は2017年には10代13位、19歳12位でした。また10代3位、18歳3位、19歳4位を記録した東京都は、2017年には10代12位、18歳39位、19歳1位という状況でした。一方、山梨県や佐賀県といった県では18歳投票率が10%以上低下しています。

より多くの若者が投票する状況を目指すのならば、一度高い投票率を記録したとしてもそこで満足せずに取り組みを継続していくことが求められそうです。

また、投票率ワーストに目を向けると、茨城県、島根県、宮崎県が前回に引き続きワースト5に残っています。この3県は10代及び18歳投票率が継続して他県よりも低い水準にあることが特徴となっています。一方で、全年代投票率は島根県65.30%(3位)、宮崎県55.31%(35位)と、若者世代ほど他県よりも低くなっているわけではありません。

衆議院選挙は10月末に行われていますので、18歳有権者の半数以上は高校在学中であったことが想定されます。

「卒業を機に県外に移住した者が多いから若者の投票率が低くなっている」ことに加えた若者の参加を阻害する要因があることが推測される状況です。

棄権者数は上位5都道府県で全体の30%超

図表3では人口推計(各年10月1日現在人口)を基に推計した10代有権者の投票棄権者数をランキングしています。

図表3_衆院選(2021年、2017年)における10代棄権者数ランキング

都市部への人口集中の影響もあり、10代有権者の投票率上位であった東京都(10代投票率3位)や神奈川県(6位)、愛知県(4位)、埼玉県(2位)などが棄権者数上位となっています。

また、多くの若者が棄権している地域は、この4年間で大きく変わっていません。棄権者数上位5都道府県で、全体の30%を占めている状況です。

3人に1人が2回目の投票を棄権

図表4では、2017年衆院選での10代有権者の2021年投票率について、乖離が大きかった順にランキングしています。

図表4_衆院選(2017年)10代有権者の2021年投票率低下ランキング

衆院選(2017年)で18歳有権者であった世代の投票率の落ち込みが大きく、2017年に投票した人のうち、3人に1人は2回目の衆院選の投票に参加していないことになります。

特に、18歳(2017年)について落ち込みが大きくなった上位4県では2017年に投票した人の半分が2度目の投票に参加していないこともわかります。

また、18歳(2017年)→22歳(2021年)の比較では投票率の増加した都道府県は2カ所だけですが、19歳(2017年)→23歳(2021年)の比較では投票率が増加した都道府県は24か所に増加しています。

同じ「18歳の有権者」でも、高校に在学中の人の方がすでに卒業している人よりも投票率が高くなるとの報告もあります。

より多くの若者の投票参加を実現するためには、加齢に伴う投票率の増加はベースとしつつ、高校等に在学している若者と投票を結びつけること、そして2回目の投票に向けた意識づけを行っていくことがポイントになりそうです。

日本全体での10代有権者の投票率は1.5%の増加も全年代よりも低い

総務省の発表によると、10代有権者の投票率は1.5%、18歳有権者は0.4%、19歳有権者は2.7%、前回の衆議院議員選挙よりも投票率が増加しています。

図表5_10代有権者の投票率の比較

ただし、全年齢の投票率(小選挙区)も2.25%増加しています。

10代の投票率上昇はポジティブに捉えられることも多いのですが、他の世代よりも投票率が上昇しなかったことも抑えておかなければいけないポイントです。

若者の政治参加に向けた「情報公開」も重要

若者の投票参加を促す活動には、「VOICE PROJECT」などの選挙への関心を高めるための呼びかけや「選挙割」、「ボートマッチ」など以外にも、学生団体や市民団体が特定の地域で試行錯誤しながら実施するものなど、様々なものがあります。若者の政治参加を取り巻く状況は地域によって異なるため、各地域で行われる活動が果たす役割は大きいものがあります。

一方で、「年齢別投票状況」は、全国集計の結果しかインターネット上に公表されておらず、データによる裏付けのある地域特性を考慮した取り組みを企画、実行するのが難しい状況にあります。

地域地域で独自性のある活動を実現するためにも、情報公開による環境整備も求められます。

コロナ禍からの復興や物価高対策、ウクライナ侵攻を受けた外交・安全保障など、これから先10年、20年後にも影響を及ぼすような政策テーマが目白押しの中、若者の選挙への参加がどうなるのか、注目されます。

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