物価高騰や賃上げの解決策は…有識者の視点 福井県立大学・南保勝特任教授インタビュー

物価高対策について「生活必需品の購入割引などの消費支援策に力を入れるべきだ」と語る福井県立大学地域経済研究所の南保勝所長=福井県永平寺町の同大学永平寺キャンパス

 参院選で物価高騰と賃上げが争点となっている中、福井県立大学地域経済研究所の南保勝所長(特任教授)に、現在の経済情勢や必要な政策についてインタビューした。南保所長は物価高対策として「生活必需品の購入割引などの消費支援策に力を入れるべきだ」と指摘した上で、根本的な解決には経済基盤や産業構造の変革に向けた政策が求められると強調した。

 ―物価高の経済情勢をどう見るか。

 「現在の物価高騰は食料品やエネルギー価格が主となっている。生活必需品関連が値上がりしているので、個人消費のマインドは良いとは言えない。物価高で望ましいのは賃金が上がり、消費が拡大して企業がもうかり、また賃金が上がる―という循環だが、とてもその方向には行きそうにない。政府は国内景気を『持ち直しの動き』と判断しているが、疑問だ」

 ―どのような政策が必要か。

 「今年、食料品の1万品目以上が値上げを実施または計画され、低所得者層を中心に生活が厳しくなる恐れがある。個人消費が上がらなければ企業はもうからず、賃上げも限定的となる。政府はガソリンの小売価格を抑える補助金支給などに注力するが、旅行割引『県民割』のような仕組みで生活必需品の購入割引などの消費支援策に力を入れるべきだ。例えば食料品購入にお得なポイントを付与するのも一つ」

 ―円安も物価高を押し上げている。

 「政府・日銀が大規模な金融緩和策を続けているのが要因の一つ。マイナス金利政策を導入したころとは社会経済情勢が全く違うことを考慮した方がいいし、もっと実体経済に即した政策を重視すべきだ。円安影響に対応していくにはコメをはじめ国産の自給率を上げていかないといけない。半導体不足などで思い知らされた、ものづくり産業の国内回帰も真剣に考えていくべきだろう」

 ―地域経済を好循環へつなげるにはどうすべきか。

 「物価高や賃上げの根本的な解決には、経済基盤を改善していかなければならないと思う。特に日本が最も弱くなってしまった技術革新分野の改善が必要だ。新型コロナウイルス禍を機にパラダイムシフト(価値観の転換)が起きる中、技術革新が期待できる分野に注力し、産業構造の転換にまで持っていかないと好循環につながらない」

 「福井の経済を考えると、短期と長期の2方面の支援策が必要だと思う。短期は事業構造転換に向け、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていく企業群への支援。長期的には、高付加価値の製品・商品を提供する企業など有望な100社ほどを選び、集中的に投資や支援策を講じていく。そうすれば雇用創出や地域経済の活性化につながる」

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