転職活動で実践すべき、現実的に内定が出る企業の選び方3パターン

内定が出なければ転職することはできません。それでは転職先を検討する際、どんなことに気をつけるべきなのでしょうか?

そこで、作家で外資系大手IT企業の現役企画部長の安斎 響市( @AnzaiKyo1 )氏の著書『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)より、一部を抜粋・編集して転職のためのヒントを紹介します。


「入りたい会社」と「入れる会社」は、ちがう

転職活動において重要なのは、「自分のこと」ではなく、「相手のこと」です。

どんなに入社したい企業があったとしても、自分の実力的に勝率が極めて低い場合、はじめから受ける意味はありません。

相手が欲しがっていないものを、いくら押し売りしても、「欲しい」という気持ちになってはもらえないものです。

たまに、一度落ちた企業をまた受けようとする人がいますが、ほとんどの場合、時間の無駄なので、潔くあきらめた方がいいです。どんなに努力をしても、落ちる時は落ちます。

そもそもの話ですが、中途採用の求人には、「大手有名企業の出身者しか採用しない」「過去の転職回数が2回以上の人はNG」など、求人票には書かれていない「裏の条件」がある場合も多いです。一見、自分が持っているスキルを武器にすれば、現実的に狙えそうな求人だと思えたとしても、書類を出すとあっさり落ちることもあります。

私が普段、中途採用の仕事をしていると、たまに、20代なのに無謀な上級ポジションに応募してあっさり書類で落ちる人や、逆に、素晴らしい経験を持っているにもかかわらず、実力よりも格下のポジションに応募してくる人がいます。

これは、非常にもったいない機会損失です。

転職が成功するかどうかは、相手が求める条件との「マッチング」で、ほとんどが決まってしまいます。「優秀かどうか」よりも、「この求人の条件にぴったり合う人材かどうか」の方が重要なのです。

転職活動において、「直接応募」ではなく「転職エージェント」を利用するメリットの一つは、このような「ミスマッチ」を防ぐことです。

転職エージェントは、性格的な適性のミスマッチはあまり考慮してくれませんが、「実力のミスマッチ」は正確に見極めてアドバイスをくれます。

的外れな人材を紹介すると、「紹介者である自分の信用」にも関わるからです。

自分が「入りたい会社」と「入れる会社」は、ちがいます。もちろん、応募書類や面接のテクニックで、「マッチング」をできる限り高めることはできますが、根本的に、そのポジションとの「マッチング」が明らかに弱い場合、つまり、自分の実力・経験値的に「無謀な求人」である場合、何度応募しても、内定が出ることは決してありません。

自分にとって「努力次第で何とか狙えそうな求人」とは具体的にどのようなものか、それがどこにあるのかを、転職エージェントを通して理解する努力が、まずは大事です。

「現実的に内定が出る企業」の選び方

応募企業の選び方について、3つのパターンがあります。

◆ 転職でキャリアアップを目指す、3つの王道「勝ち」パターン
(1) 経験「職種」を生かした転職
(2) 経験「業種」を生かした転職
(3) 経験「職種」「業種」両方を生かした転職

ちなみに、私自身の最初の転職は(1)、2度目の転職は(2)、3度目の転職は(3)、4度目の転職は(1)でした(転職回数が多すぎることは置いておいて(笑))。

いずれの転職も、この「王道パターン」に当てはまっていました。

言い方を換えれば、「未経験職種」かつ「未経験業種」の転職は成功率が低いので基本的に避けるべき、ということです。

「第二新卒」などの「はじめからキャリアアップを狙っていない転職」を除き、中途採用で経験者として認められて内定を獲得するためには、「経験職種」もしくは「経験業種」を生かした形で応募企業を選ばないと、年収や待遇を上げにいくのは、ほとんど不可能です。

ただし、「まったく同じ職種でなければならない」というわけではありません。

例えば、B2C営業職からB2B営業職に転職して成功する人もいるでしょうし、エンジニアからPM(プロジェクトマネージャー)に転職して大幅に年収を上げる人もいるでしょう。まったく同じ職種・業種ではないとしても、近しい職種、近しい業種で転職することは可能です。

仮に、職種も業種も全然ちがったとしても、「必要とされる能力」が大部分共通していて、自分の過去の業務経験が上手く生かせる場合は、転職でキャリアアップを実現できる可能性は十分にあります。大事なのは、「過去の経験が生きるかどうか」だからです。

一方で、「職種」「業種」の両方について、過去の業務経験とほとんど関連性がない、という転職は極めてハードルが高く、年収が上がることはあまり期待できません。

入社後も確実に苦労するので、それらを受け入れる「強い覚悟」がない人は、避けておいた方が無難でしょう。

転職をきっかけに、成功したキャリアを手に入れるためには、過去の仕事と未来の仕事との「つながり」を上手く見つけて、「自分が持っている経験をどうやって次に生かすか」という、説得力あるストーリーを作り上げることが非常に重要です。

まずは「ポジティブな自分」を作る

私は、現在の仕事で、中途採用の面接官を担当することもあるのですが、たまに、恐ろしく「暗い表情」で面接を受けに来る人がいます。

退職検討理由を聞くと、「現職の仕事があまり合っていなくて、今とはちがう仕事がしたい」など、ややネガティブな答えが返ってきます。

転職を考える理由は、ポジティブなものだとは限らないでしょう。

「今の会社に大きな不満はないけれど、他にいいポジションがあれば、自分の経験の幅を広げるために転職したい」など、ポジティブで精神的に余裕のある状態の人よりも、むしろ、本音を言えば、「上司との人間関係にもう耐えられない」「あまりにも仕事が激務すぎて、これ以上は続けたくない」といった、ネガティブな理由で転職する人の方が、圧倒的に多いと思います。

ほとんどの人は、今の会社に強い不満がない場合、転職という選択肢をそれほど本気では考えないでしょうから。

それでもいいと、私は思います。

私自身、過去の転職のうちの何回かは、ネガティブな理由によるものでした。

その当時いた場所から「逃げる」ために、転職をしました。

その決断は「自分にとって必要なもの」だったと、今でも思っています。逃げたって別にいいんです。周りにどう思われたって、気にしなくていいんです。自分の人生なのだから。

ただし、そのネガティブな負の感情を、「面接の場」に持ち込んではいけません。

面接中に、「現職の会社の愚痴」を言ったり、自分の置かれた状況を「周りの環境のせい」にするような発言をしたりしてしまったら、絶対に内定は出ません。

面接に臨む前に、ポジティブな気持ちに切り替え、あらゆる質問に対する返事を、前向きな言い方で回答する。これは、あなたをこれから採用してくれる会社に対する、最低限のマナーだと思ってください。

誰もやっていない転職活動の必勝法

あらゆる勝負ごとにおいて、「実力の差」や「経験の差」を覆して、誰にも負けない結果を出す方法は、主に2つだけです。

必勝法(1) 誰も目を付けていないところに着目して、そこで一点突破する
必勝法(2) 他の人が5しか努力していない時に、500の努力をする

つまり、ひと言でいえば「誰もやらないこと」をやる、という方法です。

ZOZOTOWNは、「洋服をネットで売る」という、他の誰も本気でやらなかったことを、ただひたすらに本気でやったから成功しました。

みんな多少はやっていたかもしれないけれど、「買う前に試着ができないネット通販では、洋服を売るのは難しい」と多くの会社があきらめていたことに、自分たちだけは全力集中して取り組んだからこそ、Amazonや楽天、ユニクロといった巨大企業にさえも上手くできていなかったことを、小さな企業だったZOZOが最初に実現したのです。

「誰もやらないこと」には、誰もやらない「理由」があります。

総菜パンのメーカーの採用面接を受けるからといって、面接前に何週間もひたすら毎日3食、パンを食べる人は、恐らくいないでしょう。

だって、その会社は、何社か同時に受けているうちの1社でしかないし、もし一次面接であっさり落ちてしまったら、その労力は無駄になってしまうし。そもそも、そんな暇はないし。面倒くさいし。

誰もがそう考えて、「誰もやらない」からこそ、候補者のうち一人だけが全力でその一点突破で攻めてきたら、その点では、他の誰も勝つことができません。

誰もやらないからこそ、それが「自分にしかないプレミアムな価値」になるのです。

実は、本気でやろうと覚悟を決めてしまえば、それほど難しいことではないのにこれが、職務経歴や学歴、スキルなどの実力不足をひっくり返す、転職活動の「最終兵器」です。

この方法は、シンプルでありながら、必死で努力を注げば「必ず」成果が出る、極めて再現性の高い「転職活動の必勝法」です。

実際に、私はこの方法で数々の難関企業の面接を突破してきました。

なぜ、この方法が有効かと言えば、面接官も結局は人間だからです。

スキルやスペックでは、人間の心は動かせません。「こんなことまで調べてきたのか」と驚かされるくらいの圧倒的な情熱と誠意が、最終的には面接官の心を打つのです。

安斎 響市 著

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