閉店した飲食店の思い出と味、未来に残す アプリ「のれんバンク」開発 西海みずき信組 西信さん

アプリを開発した西信さん=佐世保市内

 地域に親しまれながらも閉店した飲食店の情報をアプリ上に蓄積していく取り組みが佐世保市で動き出している。アプリの開発者は、飲食店を“接着剤”に人が集い、まちのつながりが生まれるとして飲食店の存在の大きさを強調。常連客の思い出の味の記憶を集約し、未来に引き継いでいく。写真や好きだったメニュー、エピソードを募集している。
 「おいっ子が医学部に入った時に家族でお祝いした思い出の味」「餃子(ぎょうざ)、何個食べる?で盛り上がった店」-。まちの飲食店には何げない日常の大切な記憶が残っている。これに目を付けたのが西海みずき信用組合地域振興室副室長の西信好真さん(41)。時間の経過とともに薄れていく心温まるエピソードとまちの味の記憶を保存したいとアプリ「のれんバンク」を開発した。
 西信さんは市民約120人にアンケートし、思い出の店やメニュー、エピソードを集約。結果を基にまずは、老舗喫茶店やお好み焼き屋、中華料理店、パン屋など特に人気が高かった10店舗をアプリに掲載。アプリ上の地図にはかつての人気店が並び、エピソードを書き込める。アプリの中ではいつでも思い出の日に戻ることができる。今後さらにアプリの改良を重ね、利用者のリクエストを聞きながら店舗を増やす。
 取り組みの原点にあるのは、まちで客の胃袋を満たし続けた店主への恩返しだ。西信さんは仕事上、後継者不足や高齢化などを理由に閉店する店を見てきた。尊敬を込め「どれだけ地域に愛されていたかを伝えたい」と話す。
 もう一つは、看板メニューの再現。引退した店主の協力が得られれば、レシピを共有して別の飲食店で振る舞う案もある。再びメニューに“光”を当て、売り上げの一部を引退した店主に還元する仕組みを思い描く。
 西信さんは「佐世保の良さを再認識するきっかけになると思う。大切なお店の記憶を皆さんと残したい」と協力を呼びかけている。アプリの開発費などに充てるため、15日までクラウドファンディングを実施している。

© 株式会社長崎新聞社