グリッケンハウス、WEC富士6時間レースの欠場を正式表明「我々にとって、あまり役に立たない」

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦しているグリッケンハウス・レーシングは、9月に開催される第5戦富士6時間レースを欠場すると表明した。最終戦となる第6戦バーレーンでグリッドに復帰する可能性はあるとしている。

 チームオーナーのジム・グリッケンハウスは、今週末の第4戦モンツァ6時間レースを前に、日本に向けた集団渡航に参加しないことをSportscar365に対して明らかにした。

 先月のル・マン24時間の時点で、グリッケンハウス007 LMHは富士のエントリーリストから外れる可能性が高いとされていたが、当時グリッケンハウスは「次の数週間で計画が確定される」と述べていた。

 FIAエンデュランス・コミッティのリシャール・ミル会長は、グリッケンハウスがシーズン後半に欠場する場合、「柔軟に対応する」とル・マンで述べていた。これは、ハイパーカークラスにエントリーする各チームが、少なくとも1台の車両でフルシーズンを戦うことを義務付けた、以前の厳格なプロトコルを引き合いに出しての発言だった。

 富士戦の欠場は、グリッケンハウスがさらなる投資の選択肢を検討するため、その資金を節約することが主な理由である。グリッケンハウスは、その車両の存在をより持続的に確保するための手段を追求していることを、改めて強調している。

「富士に行くつもりはなかったんだ」とグリッケンハウスは語っている。

「ル・マンでは、リシャール・ミルが発言したような声明を、WECが出すのを待っていた」

「6週間か8週間のうちには、自分たちがどこに位置しているのか、何ができるのか、将来何が起こり得るのかについて、かなり興味深い考えを持つことになると思う。ポジティブな方向に進んでいると思う」

 グリッケンハウスによれば、さらなる投資可能性の追求は「ふたつの強力な前線で進んでいる」と語ったが、現段階ではいかなる契約も確定していない。

「(富士戦に出場しない)主な理由は、経済的なものだ」と彼は説明する。

「我々は状況がクリアになるまで、資金を節約しているだけだ。年間300台の車両を販売する我が社にとって、いくつかのレース活動を行うことには意味がある。その点は確かだ。だが、それ以上のことは株主に対して、財政的に正当化できない」

「そしてもしこの(新たな)投資資金が手に入るとしたら、主にバハ・レースのプログラムにおける水素燃料電池ピックアップ・トラックを開発するための資金となるだろう。その場合、WECの露出は理にかなっている。なぜなら、我々にはより大きな、潜在的マーケットがあるからだ」

「だが、そこにはいくつかのファクターがある。私の理解では、日本はまだ新型コロナウイルスによる制約があると考えている。そのため、ファンや潜在的なカスタマーと交流することができないのだ」

「だから、正直なところ、それ(日本への渡航)は我々にとってあまり役に立たないんだ」

 グリッケンハウスにとって、富士戦の欠場は、車両や機材を輸送用コンテナで運ぶシーズン2回目の海外渡航の物流面を節約することになる。

 イタリアのポディウム・アドバンスド・テクノロジーズやドイツのヨースト・レーシングと提携しているグリッケンハウスは、シーズン開幕戦セブリングでアメリカに1度目の遠征を行った後は、スパ、ル・マン、モンツァと、チームにとってアクセスの良いヨーロッパのサーキットでレースをしてきた。

 富士への出場は見送るものの、グリッケンハウス・レーシングは、11月に開催されるシーズン最終戦のバーレーン8時間レースに参戦する可能性を残している。このバーレーンは、ホモロゲーション前のポルシェ963 LMDhがテスト参戦を目指しているイベントだ。

 バーレーンへの出場について問われたグリッケンハウスは、「可能性はある」と答えている。

「バーレーンの皇太子は私の友人だから、彼に会い、彼をサポートしたいんだ」とグリッケンハウスは語った。

 グリッケンハウス・レーシングは、リチャード・ウェストブルック/フランク・マイルー/ライアン・ブリスコーがドライブする709号車で、第3戦ル・マン24時間レースの総合3位表彰台に立っている。

 また、通年参戦する708号車のドライバーであるオリビエ・プラとロマン・デュマは、ハイパーカーのドライバー選手権で現在3位につけている。

2022年ル・マン24時間レース 総合3位の表彰台に立つ709号車のクルーと、チームオーナーのジム・グリッケンハウス

© 株式会社三栄