<金口木舌>悲しみの声に耳を傾ける

 「黙とうするのはもううんざりだ」。米国プロバスケットNBAのウォリアーズのスティーブ・カー監督が5月の記者会見で述べた。父親を銃撃で亡くしたカーさんは「いつになったら行動するのか」と声を震わせ、銃規制の強化を求めた

▼銃による悲劇が後を絶たない。米国の銃乱射事件で5月に児童ら21人が亡くなり、今月4日にも7人が犠牲になった。日本でも安倍晋三元首相が銃撃され死去した

▼トランプ前大統領は学校で相次ぐ乱射事件に関連して「教員に銃を持たせよ」と主張した。「力には力を」という極論だが一部の人々が支持している

▼ロシアによるウクライナ侵攻を受け、参院選で「防衛力強化」を訴える候補者も多い。国会議員からは「核共有」を唱える声も上がった。しかし隣国と緊張を高め合えば戦争に突入する危険も高まる

▼国境に近く、軍事基地が集中した沖縄は再び戦場になる。戦争でも銃撃事件でも無防備な市民がまず命を奪われる。被害者や遺族の悲しみ、戦争体験者が語る教訓に耳を傾けないわけにはいかない。

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