自転車乗りながら、携帯見ながら…「ながら」犬の散歩の危険 考えてほしいペットの安全【杉本彩のEva通信】

ペットと散歩中の杉本彩さん

今年は早くから猛暑が続き、動物たちにとって例年にも増して厳しい夏になりそうです。アスファルト道路の表面温度は60℃近くまで上昇することがあります。地面に近く、肉球にも直接熱が伝わる犬にとって、気温だけでなく道路表面温度への注意も必要です。人にとってそれほど暑さを感じない温度でも、犬にとっては危険なことも。熱中症は命とりになるので、散歩は早朝や道路表面温度が充分に下がった夜にするなど、気をつけてください。

さて、今回は犬の散歩についてです。熱中症以外にも季節を問わず、犬の散歩に伴う危険について、皆さんと共有しておきたいと思います。

先日、こんなニュースがありました。スティック状のサツマイモのペット用おやつにまち針が差し込んであり、それが路上にまかれていたそうです。深夜、散歩中の犬がそれを誤って食べてしまい、夜間病院で切開手術をすることに。飼い主が警察に通報し、駆けつけた警察官が周辺を捜索すると、針が刺さった状態のペットフードが複数見つかったそうです。とても悪質な犯罪です。

散歩には、車や自転車や歩行中の人、道路上の危険物など、注意を払わなくてはいけないものがたくさんあります。このような散歩中の犬をわざと狙ったとしか思えない犯行の場合、たとえ飼い主が注意をしていても、ちょっと油断した隙に一瞬で食べてしまうことがあるかもしれません。このような被害があることを知ると、なおさら散歩には注意が必要だと感じます。

たとえば、こんな光景をたまに目にします。携帯電話を見ながらの散歩。犬の行動や周りへの注意がおろそかになるのでとても危険です。まず、うんちやおしっこをしたい素振りをしているのに、気づくことができないという問題があります。犬は止まりたいのに、気づいていない飼い主にリードを引っ張られ、落ち着いて排泄もできません。

また、飼い主のペースで歩かないからと、強めにリードを引っ張る人もいます。草木の匂いや風を感じながら歩く楽しいはずの散歩が、犬の自然な行動を制限してしまい、強く引っ張って、肉球や首や関節など、体にダメージを与えてしまうかもしれません。ましてやこの事件のように、危険な食べ物が置かれていたら、携帯電話に夢中では、たとえ昼間であっても防ぐことはできないと思います。

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そして、時々見かけるのが、自転車に乗ったままリードを持って愛犬を散歩させる人です。中型犬や大型犬に多いので、運動量が必要な犬にしっかり運動をさせたいという意図なのかもしれませんが、これは道路交通法違反。数万円の罰金を課せられることもあり、危険行為として摘発される可能性もあるのだとか。

リードを持って片手で運転したり、自転車のハンドルにリードをつけて運転することで、犬に引っ張られて安定を失う可能性があり、犬に大怪我を負わせるかもしれません。それ以外にも、もし歩行者に怪我を負わせる事故を起こしたら、刑事処罰の対象になることもあるのだそうです。

一歩外に出れば、さまざまな危険があります。曲がり角から自転車が飛び出して来るかもしれませんし、停車中の車が、操作ミスで急に発進するかもしれません。歩行中の人が突然進路を変えてぶつかってくるかもしれませんし、工事現場の前を通る時も、上から何か落ちて来る可能性だってあります。低い位置を歩く犬は、車のドライバーから死角になりやすいという注意も必要です。予測のできないこともあると思いますが、それでも可能なかぎり、常に危険を予測しながら安全に散歩する、そういう心がけが大切なのだと思います。危険から愛犬を守ってあげられるのは、飼い主さんだけなのですから。(Eva代表理事 杉本彩)

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 杉本彩さんと動物環境・福祉協会Evaのスタッフによるコラム。犬や猫などペットを巡る環境に加え、展示動物や産業動物などの問題に迫ります。動物福祉の視点から人と動物が幸せに共生できる社会の実現について考えます。  

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