正社員の投票政党、派遣社員の投票政党について観察する(データアナリスト 渡邉秀成)

第26回参議院選挙も直前に迫ってきました。各政党の選挙運動も活発化しています。
この参議院選挙の結果次第では今後の経済対策、憲法改正についての大きな方向性が決まる大切な選挙となります。

有権者が投票する際に考慮する内容として上位に来るものは経済、雇用対策です。
そして、経済雇用対策で大きな問題の一つになっているのが、正規雇用社員と、非正規雇用社員との待遇格差です。
Twitter等のSNS上でも、日本国内の派遣事業者数を諸外国と比較するグラフがたびたび流れてきます。

このような人々の話題にのぼりやすい、正規雇用社員、非正規雇用社員のかたは、選挙でどの政党に投票をしているのかについて今回は観察していきます。

まず最初に、正社員、非正規社員が置かれている環境を見てみましょう。
代表的なものとして正社員と非正規雇用社員の割合と賃金について見ていきます。

厚生労働省が発表している労働者派遣の現状について*1という資料を見ると、労働者人口に占める非正規労働者の割合が増加傾向、正規雇用社員の割合が減少傾向にあることが確認できます。

*1 [労働者派遣の現状について(全般)](https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000637254.pdf)

図1_労働者人口に占める派遣社員の割合

次に正規雇用労働者と非正規雇用労働者の話題で最も大きな話題になる、賃金差についてです。

厚生労働省 正規雇用労働者・非正規雇用労働者の賃金推移*2をもとに、それぞれの賃金の推移をグラフ化したものが下記になります。

*2 [https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-03-24.html](https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-03-24.html)

図2_正規雇用と非正規雇用労働者の賃金差

正規雇用労働者、非正規雇用労働者、それ以外の社員では時給換算で600円程度の差があることがわかります。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者では上記の賃金差があり、いつ雇用契約が終了するかわからないという不安定な状況の改善を求める非正規雇用労働者の意見が報道されたり、SNS上で書き込まれたりしています。

正規雇用労働者、非正規雇用労働者の間には上記のような待遇差があるので、選挙における投票政党については、正規雇用労働者と非正規雇用労働者では違いが出てきそうな気がします。

では、正規職員、非正規職員の投票政党はどこであったのかを次に見ていきます。
利用するデータは公益財団法人 明るい選挙推進協会 意識調査です。
この意識調査結果には正規雇用社員、派遣労働者がどの政党に投票したのかという調査結果が掲載されています。

その調査結果から直近4回の国政選挙、2021年 第49回衆院選、2019年 第25回参院選、2017年 第48回衆院選、2016年 第24回参院選で、正規雇用労働者、派遣社員のかたがどの政党に投票したかをグラフ化したものが下記になります。

図3 第49回_衆院選_投票政党
図4 第25回_参院選_投票政党
図5 第48回_衆院選_投票政党
図6 第24回_参院選_投票政党

ざっと見ると正規雇用労働者、派遣社員の投票先で最も多いのが自由民主党であることがわかります。
続いて日本維新の会、立憲民主党等が続きます。
(回答者数が正社員と派遣社員では回答者数が大きく数が異なる点は配慮する必要があります)

雇用形態、待遇等の改善を求める声が聞こえてくることが多い派遣社員等のかたであれば、待遇改善策を打ち出している政党に投票すると思われますが、調査結果を見る限り、実際の投票先は現状維持になる可能性の高い政党に投票している傾向が見えてきます。

同じような現象は、生活環境にやや不満足、大いに不満足と感じている人の投票政党にも観察されます。

図7 生活満足度と投票政党

生活満足度が低下すれば、今まで投票していた政党とは別政党に投票するものと思われますが、調査結果を見ると生活に不満を持つ人も、生活に満足している人と同じ政党に投票する傾向があるようです。

日本はこれまで戦後ほとんどの期間を自由民主党が政権運営をしており、その他の政党について、あまり知られていないことが大きな要因の一つであると思われます。

GoogleTrendsを用いて政党別ニュース検索の推移を見ても、自由民主党が上位に来ているのが観察されます。

以上のような調査結果を見てくると、円安、燃料費高騰等の生活環境が悪化している現在の状況下で執行される第26回参院選挙においても正規雇用労働者、非正規雇用労働者の投票政党は、似たような傾向になる可能性が高いと考えられますが、どのような結果になりますでしょうか。

今回は正規雇用労働者、非正規雇用労働者の投票政党について観察をしてきました。

追記:
公益財団法人 明るい選挙推進協会からは国政選挙、統一地方選挙後に意識調査結果が公表されます。
こちらの意識調査報告書はPDF形式で公表されています。
この報告書内に掲載されている表、データ等は各省庁が発表する白書と同様にCSV形式で公表することはできないものでしょうか。
そして過去の意識調査結果も電子データが残っているのであれば機械処理可能な形式での公開、電子データが残っていないものであれば紙データをPDFに変換したもので公開されることを希望します。

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