光劇場「壊せば二度と戻らない」 笠岡・北木島 旧映画館再興策探る

北木島にある旧映画館「光劇場」の再興に向けて開かれたトークショー=北木小体育館

 “石の島”として知られる笠岡市・北木島で9日、昭和20~40年代ににぎわった旧映画館「光劇場」の再興に向けたイベントが開かれた。島民ら約70人が老朽化が進む劇場の現状や活用法などについて考えた。

 劇場再興の機運を島内で高めようと、有志が「映画の灯 北木島に再び」をテーマに企画。北木小体育館で映画上映やトークショーがあり、劇場の保存に取り組む住民や映画監督らが「石材業で栄えた当時の活気を伝える貴重な施設。次の時代にどう残していくか考えよう」と訴えた。

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 北木島の旧映画館「光劇場」再興に向け、9日開かれたトークショー。劇場を観光客に開放している島の住民グループ「光劇場友の会」の山田錠会長(59)や、劇場で自身の作品を公開する映像作家の吉川寿人さん(40)=兵庫県たつの市、この日上映された映画「ふるさとがえり」の監督、林弘樹さん(47)=さいたま市=の3人が、北木小体育館で意見を交わした。

 光劇場は昭和20年代の終わりに営業を始めたが、テレビの普及もあって同42(1967)年ごろに閉館。山田会長は「最盛期は島に四つの映画館があり、その日の上映タイトルが島内放送で流れるほど娯楽として定着していた」と紹介した。

 閉館後、長く放置されていたが、2014年に開かれたアートイベントを機に、島に当時住んでいた吉川さんらが劇場を改修。19年に島の石切り技術などが日本遺産に認定されたこともあって観光客は増えつつあり、吉川さんは「観光客の接待など地道な活動が実を結んだ」と手応えを口にした。

 一方、建築からおよそ70年がたつ劇場は土壁が崩れ、木製の座席も劣化するなど老朽化。古い構造のため安全面から長編作品の上映もできないが、「まずは古い映写機などを展示する施設としての活用を考えている」と山田会長は話した。

 イベント前に劇場を訪れた林監督は「古き良き時代のたたずまいを残しており、壊せば二度と戻ってこない。映画の上映以外にもさまざまな活用策がある」と強調。その上で「お金をかけて修理しても住民の思いが伴わないと後が続かない。一人一人の島民の思いを育むところから始めてほしい」と提案した。

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