<社説>参院選きょう投開票 課題解決へ貴重な1票を

 第26回参院選は10日、投開票される。先月22日の公示以降、各党は全国各地で激しい論戦を繰り広げてきた。それに審判が下る。 今回の選挙は昨年の衆院選直前に発足した岸田文雄政権への「中間評価」と位置付けられる。物価上昇や労働者の賃金低迷への対応、新型コロナウイルス対策、安全保障など日本が抱える課題は山積している。各党各候補の政策を選ぶことで課題を解決する手法を選択する重要な選挙だ。有権者はぜひ投票所に足を運んでもらい、貴重な1票を投じてほしい。

 沖縄選挙区(改選1議席)には5人が立候補した。名護市辺野古の新基地建設阻止を掲げる「オール沖縄」が支援する無所属現職の伊波洋一氏(70)と、自民党が公認し公明党が推薦する新人の古謝玄太氏(38)による事実上の一騎打ちとなった。

 選挙戦では、米軍普天間飛行場の返還に伴う辺野古新基地建設の是非や沖縄振興、経済対策などが争点となった。新基地建設について伊波氏は反対し、古謝氏は容認する立場で、違いは鮮明だ。

 沖縄振興計画について伊波氏は全国平均よりも低い県民所得や全国の2倍に上る子どもの貧困率を挙げ、当面は必要だとの考えだ。これに対し古謝氏は沖縄の特殊事情の変化を見ながら全国並みの予算や制度への移行も視野に入れる必要があるとし、主張に違いがみられた。

 有権者の選択は沖縄の未来を左右する。選挙結果は9月11日に実施される県知事選にも大きな影響を与える。「オール沖縄」か、自公か、選挙協力枠組みへの評価も問われる。両勢力にとって今回の参院選は、天王山である知事選の勝敗を占う重要な前哨戦である。

 全国では物価高対策や消費税、防衛費増額、改憲などが争点となった。

 参院選は3年ごとに定数の半数を改選する。今回は2016年当選組が改選を迎えた。定数計248のうち半数の124議席(選挙区74、比例代表50)と、非改選の神奈川選挙区の欠員1を補う「合併選挙」を合わせた計125議席を争う。与野党どちらが過半数の63議席を獲得するかが焦点だ。憲法改正に前向きな勢力が改憲発議に必要な3分の2以上の議席を維持するかどうかも注目される。

 気になるのは低迷が続く投票率である。前回2019年の参院選では過去2番目に低い48.80%で、沖縄選挙区も49.0%にとどまり補選を除けば過去最低だった。選挙は民主主義の根幹である。投票率が低いと民主主義の形骸化につながり、政治権力の暴走を許す恐れがある。その事態は避けたい。

 今回選挙戦のさなか、安倍晋三元首相が凶弾に倒れ死亡した。政治家の言論を暴力で封じることは民主主義の破壊であり許されない。民主主義を守り発展させるためにも今回の選挙で投じる1票は重い。

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