与党の看板を背負った現職が、6人の乱戦で抜きんでた強さを見せた。10日に投開票された参院選栃木選挙区で、自民党現職の上野通子(うえのみちこ)氏(64)が早々に当選を決めた。自民の安倍晋三(あべしんぞう)元首相が、選挙演説中に凶弾に倒れた衝撃が冷めやらぬ中、迎えた決戦の日。勝利にも笑顔はなく「教育の再生に取り組み、国から地域を支え、子どもの未来をつくる」と3期目への決意を語った。立憲民主党、日本維新の会など野党の新人は、厚い壁にはね返される結果となり深々と頭を下げた。
白のスーツに黒の喪章。他の候補を圧倒する勝利にも、笑顔はなかった。
午後8時の投票締め切りと同時に、ニュースが自民党現職の上野通子氏(64)の当選確実を伝えた。宇都宮市陽西町の護国会館。約200人の支援者がどよめき、拍手で3期目の当選をたたえた。
壇上には2日前に銃弾に倒れた安倍晋三元首相の写真とポスターが掲げられた。所属派閥の会長で政治の師と仰ぐ大きな存在だった。
当選確実が伝えられた直後の選挙報告会。参加者は黙とうをささげ、上野氏が安倍氏の写真に献花した。万歳三唱でも表情を崩さず、深々と頭を下げた。
6年前の前回参院選では、初の野党統一候補を大差で退けた。今回は野党一本化が不調に終わり、定数削減で1人区となった2007年以降、最多の6人が立候補。うち5人が女性という構図も話題になった。
200近い推薦団体の支援を受け、これまで同様に強力な組織戦を展開した上野氏。世論調査で優勢が伝えられても陣営は引き締めを図り、圧勝につなげた。
「安倍会長の遺志を継ぐ」。選挙戦最終盤には涙ながらに支持を呼びかけた。
「天国で『これからは1人で頑張れ』と言ってくださっていると思う」。あいさつではまっすぐ前を見据え、安倍氏への思いを語った。ライフワークでもある教育施策に引き続き取り組むと宣言。「郷土を愛して誇りを持てる教育にしていきたい」と力強く訴えた。