ユン政権との関係改善で展望が明るい「韓国渡航」【政治学者が見る世界の今】

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界の情勢を考える人気シリーズ。今回は、ユン新政権発足による日韓関係改善と海外渡航への影響を考えていきたい。※写真はすべてイメージです

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日韓の往来が活発化へ

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最近、羽田とソウル金浦空港を結ぶ直行便が約2年3カ月ぶりに再開した。韓国への渡航を待ち望んでいた人々にとっては大きな朗報になった。東京にある韓国大使館や各地の領事館前には夜明け前から大勢の日本人がビザ申請のため長い列を作ったのは記憶に新しい。

成田が東京から遠いだけでなく、仁川もソウル中心部から離れており、筆者を含め韓国に行ったことがある人なら、羽田・金浦の再開によってどれだけ時間を節約できるかよく理解できるはずだ。

昨今、日本や韓国では新型コロナウイルスの感染者が再び増加傾向にあり、それによって日韓の往来は左右される。しかし、コロナ情勢を考えなければ、今後再び海を越えて日韓を行き来する動きは活発化することだろう。

日本でもJ-POPよりK-POPを好む人も多く、女性を中心に韓国への渡航は勢いを取り戻すだろう。反対に、すでに国民平均所得で韓国は日本を上回っており、韓国でも日本旅行は比較的安いので、今後、日本を訪れる韓国人も増えることが予想される。

日韓関係の展望は明るい

一方、筆者が専門とする国際政治の視点からも、今後の日韓関係の展望は明るい。韓国では5月にユン・ソンニョル大統領が誕生した。文政権の5年間、日韓関係は戦後最悪とも言われ、徴用工や慰安婦などの歴史問題、竹島の領有権問題などで両国は対立し、双方の国民感情も悪化の一途をたどった。

しかし、ユン政権はこれまでの文政権からの脱皮を図り、日本や米国との関係を重視するため、積極的に動いている。6月末、スペイン・マドリードで開催されたNATO首脳会合の際、ユン大統領は岸田総理との日韓首脳会談はできなかったものの、岸田総理と数分間立ち話をし、日韓関係を改善させる強い意欲を示した。また、韓国に戻ったユン大統領は最近も日本の経団連会長と会談し、日韓経済を再び活発化させていく意思を見せた。

政治的な関係改善で韓国渡航もしやすく

日韓の間では文化や社会など相互の交流が盛んになっているが、日韓関係にはどうしても政治が大きく影響する。日韓関係が政治的に悪いと、韓国を渡航していても自然にそれを意識することが多い。しかし、日本政府内にユン政権の行動を見極めようとする慎重論もあるが、今後の日韓関係は高い確率で改善に向かい、韓国渡航も自然にしやすい雰囲気になるだろう。

確かに、韓国人の日本へのイメージは決して良くない。しかし、文政権の過去5年間と比べ、政治的には明るい材料が多く、韓国への渡航を考えている人は政治的にもいい雰囲気ということをぜひ知ってほしい。

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