「フリースクール」「オルタナティブスクール」学校以外の学びの場提供 不登校の子らに選択肢を

問題の解説をする講師と聞く生徒=時津町、フリースクール「conpeito」

 主に不登校の子どもを対象に、学校以外で学びの場を提供する「フリースクール」「オルタナティブスクール」が今年、長崎県の西彼時津、長与両町に開校した。体調や人間関係などさまざまな問題を背景に、不登校の児童生徒数が増える中、「選択肢」の一つとして注目される。学習面に強みがあったり、自主性に主眼を置いたりと、校風や特長が異なる2校を取材した。

 「そうだね、かぐや姫は結婚したくなかったから求婚者に難題を出したんだね」-。6月上旬。時津町浦郷の学習型フリースクール「conpeito(コンペイトウ)」(牛津理美代表)では、中学3年の女子生徒(14)が古文「竹取物語」の授業を受けていた。使うのは学校の教科書に合わせた問題集。講師の解説にうなずきながら熱心に耳を傾けていた。
 生徒は病気などが原因で学校に通いづらくなり、中学1年の終わりごろから休んでいる。コンペイトウのことは交流サイト(SNS)で知り、自ら希望して長崎市から通う。
 開校は今年1月。学習塾を経営する牛津代表が、不登校の子どもを身近に知り、助けになりたいと思ったことがきっかけだった。現在は中高生3人が原則月水金の週3日通う。体調や希望に合わせ、学習指導要領に基づく支援をメインとしている。
 経験豊富な講師陣をはじめ、学習面に強みを持つコンペイトウ。牛津代表は「居心地が良いずっと留まる場所ではなく、次に進むための中継地点にしたい」と話す。3人も大学や高校進学を目指しているという。

 長与町嬉里郷に4月オープンしたオルタナティブスクール「おうち楽幸(がっこう)」(池田早希代表)は、子どもの自主性に主眼を置く。自然の中で体を動かしたり、自分たちで考えたプロジェクトに挑戦したりする時間も多い。

タケノコ掘りに挑戦する「おうち楽幸」の児童(おうち楽幸提供)

 昨年9月、当時小学校教員で育児休業中だった池田代表が、不登校となった友人の子どもの勉強を自宅でみたことをきっかけに開校した。オルタナティブスクールとは「もう一つの学校」という意味で、公教育とは異なる理念や方針で運営される学校のこと。不登校で通い始める子も多いが、それぞれの校風に共感して通所を希望する人も多い。
 同校には現在、小学生4人が在籍。午前中は「かず」「ことば」といった算数や国語の学びを、午後からはタケノコ掘りや鶏の解体などさまざまな“プロジェクト”に挑戦。7月末に開くイベントに向けて、子どもたちが主体的に出店準備に取り組んでいる。
 子どもの中には学校で問題児とされた子もいて、初めはトラブルもあった。ただ、子ども同士で話し合いを重ね、今では何でも言い合える関係になったという。池田代表は「不登校の子どもにとって『もう一つの学校』という選択肢になりたい。学習や体験を子ども自身が選択し、実際にやってみる。この選択の繰り返しが、将来の幅を広げる」と考えている。

 不登校の児童生徒は長﨑県内でも増加傾向だ。県教委の調査によると、2020年度の県内公立学校の不登校児童生徒数は2279人(前年度比116人増)。現在の調査方法となった06年度以降、最多となった。
 各自治体も、不登校の児童生徒のために居場所づくりや学習支援の場といった仕組みを整えている。ただ、さまざまな理由で民間のスクールを選択する子どもたちがいるのも現実だ。
 教育臨床心理学が専門の長崎大大学院教育学研究科、内野成美教授は「不登校の子どもや家族にとっては『通える場所がある』『居場所がある』ということが重要。成長や自立を促すという観点では学校への再登校が全てではなく、フリースクールのような選択肢が増えるのはいいこと。不登校は必ずしもマイナスの選択ではなく、本人にとって大切な時間となり得ることを知ってほしい」と話す。 


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