自民「分裂騒動」一掃 山本さん組織力で圧勝 安倍氏悼み「しっかり努力」

当選確実となり、支援者とグータッチをして喜ぶ山本さん(左)=10日午後8時1分、長崎市元船町、平安閣サンプリエール

 過去最多タイの候補者6人で争った参院選長崎選挙区(改選数1)を制したのは自民新人の山本啓介さん(47)だった。堅調な内閣支持率を背景に組織力で他を寄せ付けず、2月の知事選の党の分裂騒動を一掃する形となった。非自民票が分散し、野党は苦戦。立憲民主新人の白川鮎美さん(42)は2度目の国政挑戦も実らなかった。日本維新の会新人の山田真美さん(50)、共産新人の安江綾子さん(45)、政治団体「参政党」新人の尾方綾子さん(47)、NHK党新人の大熊和人さん(52)も及ばなかった。

 投票が午後8時に締め切られるやいなや、山本さんの「当選確実」をテレビが報じた。あまりの速さに、長崎市元船町のホールに待機していた支援者がどよめいた。ただ、大きな拍手を浴びながら壇上でマイクを握った山本さんは、神妙な面持ちで「少しだけ静かな時間をつくらせていただきたい」。2日前に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の死を悼み、「政治の道を歩む者としてしっかりと努力していく」と語った。
 3月、自民現職の金子原二郎農相が突然、政界引退を表明。後継として「県政に精通した若い県議」を求める中、山本さんに白羽の矢が立った。
 だが党内には2月の知事選で分裂し、大接戦となったしこりが残っていた。当時、党県連幹事長を務めていた山本さんは、県議団や党員らを二分する混乱を招いた「張本人」とみなされた。職域・地域支部や支持団体への“おわび行脚”からのスタート。厳しい批判を浴びながらも県市町議らの協力を得て、融和に向け丁寧な説明を重ねていった。
 国会議員秘書8年、県議3期11年。豊富な政治経験が強みだ。一方で「小さな壱岐の島の出身。序盤は不安だった」というように知名度不足は否めなかった。それを払拭(ふっしょく)するため、公示前に全21市町に入って顔と名前を売り込んだ。持ち前のコミュニケーション能力を生かし、住民から地域の課題や可能性を聞いて回った。公示後も分厚い党組織網を生かし、各地をくまなく訪問。「皆さんの力で徐々に支持が広がっていった」。終盤には確かな手応えを感じていた。
 国境に近い離島出身者として、ロシアのウクライナ侵攻に対し「対岸の火事ではない」と危機感を強め、国防強化の必要性を主張。離島振興や地方創生への意欲も熱く訴え、「振興の動力に私を使ってほしい。中央から必要な支援策を持って帰ってくる」と約束した。
 当確となった山本さんは、身長187センチの大きな体を折り曲げ、支援者一人一人とグータッチをして感謝の思いを伝えた。安倍元首相の喪に服し万歳は控えたが、ガンバロー三唱で国会に乗り込む決意を新たにした。


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