アメコミ映画パロディと下ネタで脱力アッセンブル!『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』おバカな笑いと超絶アクション!!

『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』© CINÉFRANCE STUDIOS - BAF PROD - STUDIOCANAL - TF1 STUDIO - TF1 FILMS PRODUCTION ©STUDIOCANAL ©Julien Panie

フランスから最低ヒーロー爆誕!

あの人気漫画「シティーハンター」をフランスで実写化し世界中で大ヒットさせてしまった猛者として知られるフィリップ・ラショーが、今度はアメコミ映画に手を出した。と言ってもスーパーヒーロー映画を撮ったわけではなく、ラショーらしい笑いと愛、そしてアメコミ・パロディ満載のアクション・コメディ、その名も『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』だ。

ラショー自ら演じる主人公セドリックは、警察署長の父親に反対されながらも役者の夢を追い続けている。あるときヒーローものの大作だという新作映画「バッドマン」への主演オファーを受け、千載一遇のチャンスを逃してはならないと体を鍛え上げ、武術を学ぶなど熱心に役作りに挑んだセドリック。しかし、撮影中に妹から「パパが倒れた」という知らせが入り、映画用の“バッドスーツ”を着たまま“バッドモービル”に乗って病院へと急ぐが、その途中で事故に遭い、自分の名前や過去の記憶を全て失ってしまう……。

笑いは小学生レベル、アクションはハリウッド級

映画が始まってから3秒くらいで「次の映画は『バッドマン』だから。アメリカのヒーロー映画に匹敵する作品にしたいのよね」と言い放つプロデューサーが登場。臆面もクソもないオープニングはもはや図々しいを通り越して清々しいが、なんやかんやドタバタしてから「結果的にバッドマンになってました、これからどうしよう?」みたいなお話ではなく、最初からバッドマンありきで始まるのだ。

そして、これはフランスのコメディ映画であり、しかも小学生なら腹を抱えて大笑いするであろうベッタベタ(かつ不謹慎)なギャグをフルスイング披露することで知られる、あのラショー監督作である。不遜な大物俳優がジョーカーを模した宿敵“ピエロ”を演じる……と聞けば察しがつくとは思うが、ホットコーヒーをすすりながら腕を組んで鑑賞するつもりだった人は、今すぐ脳のスイッチをコーラとポップコーンに切り替えてほしい。

すさまじく偏差値の低い伏線回収はラショーの持ち味であり、しょうもない奇跡が山ほど積み重なってヘラヘラしているうちに事態がどんどんややこしくなっていく……という展開は、いわゆるMr.ビーン的な王道でもある。ただ、さすがパルクールの国だけあってアクションシーンのクオリティはめちゃくちゃ高く、本家スーパーヒーロー映画にも引けを取らないアクロバティックなバトルシーンには目を奪われるだろう。

あのカメオや超大物俳優まで豪快パロディ!

ともあれ、小道具から音楽まで大小様々なマーベル映画パロディはもちろん、フランスのヒット作品などのメタな映画ギャグ、さらにエンタメ界だけでなく移民政策や温暖化対策など社会問題の皮肉まで盛り込んでいて、終始ニヤニヤが止まらない。『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2018年)では原作を敬ってか封印気味だった下ネタも全開放で、3分毎くらいにギャグを入れてくるのは純粋にすごい。

もはや思いつきレベルで雑に登場させられるX-MEN風キャラや、すさまじく激安なコスプレでアッセンブルする終盤のシーンなどは、文字通り脱力すぎて膝から崩れ落ちそうになるだろう。それにしても“あのカメオ”までパロディするなんて、芸が細かいというか怖いもの知らずというか……。

さらに、あの“インポッシブルな”超有名俳優も巻き込んで悪ノリに悪ノリを重ね、上映時間80分弱という小気味よさ! ぜひコメディ映画好きにもアメコミ映画ファンにも観てほしい、失笑・苦笑・爆笑を補充できるフランス発の快作だ。

『バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー』は2022年7月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国公開

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